ちょっと考えないといけないなーと思いまして。
しんざきは学生の頃から、ケーナという縦笛を趣味で演奏しています。もう20年くらいやってます。
ケーナというのは南米の民族楽器でして、日本の楽器で言うと尺八に似ています。
日本で有名な曲というと「コンドルは飛んでいく」なんかがありますが、非常に澄んだ音がしまして、元々が屋外の楽器なので、風が強くない日だととても遠くまで聴こえます。数百メートルくらいだったら普通に音が届きます。
同じく趣味でゲームの曲を吹いたりもしていて、この記事で幾つか吹いた曲を挙げてみたりしました。ケーナの音を聴いてみたい人はご参照ください。
http://mubou.seesaa.net/article/451006400.html
で。
お蔭様で、演奏の機会を頂くことはそこそこありまして、例えば小学校とか、老人ホームとか、あるいは公民館のお祭りとかに呼んで頂いて、何人かで演奏をお聴かせすることもそれなりの頻度であります。
企業のイベントで演奏したことも、結婚式で演奏したこともあります。
「コンドルは飛んでいく」辺りの定番ナンバーの他、勿論南米のフォルクローレの曲も演奏するんですが、例えば小学校なら童謡やアニメの曲を混ぜたり、老人ホームならちょっと昔の有名邦楽を混ぜたり、色々工夫しながら演奏します。
コーヒールンバとか、「上を向いて歩こう」とかウケます。あと赤とんぼとか。
大体の場合皆さん喜んで頂けますし、ありがたいことにお褒めの言葉を頂くことも多いんですが。
ここでちょっと、「演奏の報酬」という話が出てきます。演奏することで金銭的な謝礼を頂くかどうか、という話です。
私は純然たるアマチュア奏者であって、正直自分ではお金を頂くクオリティで演奏出来ているつもりはないので、どちらかというと無報酬で演奏することの方が多いですし、無報酬で演奏することに特に抵抗はないんですね。
交通費を出して頂けることは多いですし、謝礼を頂くこともちょこちょこあるんですが、こちらから報酬の相談をすることはほぼありません。
ただ、先日ちょっと、とある老人ホームで演奏した時、そこで聴いてくださったお爺さんと会話をしまして。
演奏自体は大変喜んでくださったんですが、こんなことを言われていたんです。
「あなたたち、これボランティアでやってるの?」
「ええ、交通費は出してもらってますけど、謝礼は頂いてないです」
「ダメだよー、こんなことタダでやってちゃ、プロの演奏家に迷惑かかっちゃうよ」
正直、うーーん、と思いまして。
いや、そのお爺さんは、単に我々に対する褒め言葉としてそういう言葉を使ってくださったんだと思うんです。
そこについては大変ありがたい話であって、それ以上のことではないんですが。
ただ、実のところ、それ結構私にとっての「悩み処」だったんです。
実は以前、同じようなことを考えたことはあったんですね。2年ちょっと前の記事ですが、こんな記事を拝読しまして。
私の周りは仕事で弾いている方ばかりですから無料でなんてお願いはできません。
ピアノを弾くことを仕事にしていなくても、ピアノを弾ける方はごまんといるでしょう。でも一緒に演奏できるのか、それは先に書いた通りです。お仕事でやってる方に無料にしろって、平気で言える神経が怖いです。
八百屋や魚屋で無料で野菜や魚をくれって言ってるのですか?
無銭飲食、無銭宿泊、平気でしてるの?やっちゃったら犯罪だよね?
万引きって、犯罪よ。知ってました?無料で商品を持ち帰ることだものね。
同じよ。無料で知的財産を持ち去る行為ですから。
今回は未遂で終わりましたけど、要するに
犯罪予告されたようなものよね。(ソプラノ川上真澄のオペラな生活)
ちょっと記事掲載時から内容が変わってるみたいなんですが、乱暴に要約すると「プロのソプラノ歌手の方に、経費も価値も理解しないで無料での演奏を依頼する人がいて、歌手の方が怒っている」という話ではあると思います。
これ、プロの方の思いが切実であることは、私よくわかるんですよ。
特に演奏とかパフォーマンスとか、「形として残らないもの」「定量的に評価しにくいもの」って、その価値が理解されにくいところってあると思うんですよね。
そのパフォーマンスが、どれだけの価値をもつものなのか、素人からは判断しにくい。
その技術を身に着けるのにどれだけの時間とお金がかかっているのか、やっていない人からは判断しにくい。
だから、「幾らお礼を出せばいいのか」というのがとても分かりにくいし、図々しい人だと「ちょっと来て演奏するだけでしょ?それくらいタダでやってよ」などと言ってしまう。
これ、色んなところで同じことが起きている話だと思うんですよ。場合によっては、イラストやプログラミングみたいな、ちゃんと形が残るものですらそうかも知れない。
「ちょっと絵を描いてもらいたいだけなのにお金とるなんてひどい」とか、本気で言っちゃう人たまに観測出来ますよね。
けれど、本来プロの技術って、そんなに軽いものじゃないんですよね。それを身に着ける為に、それこそ人生をかけている。何千時間、何万時間という時間やら、演奏なら楽器代、メンテナンス費用、練習の為のスタジオ代、メンバーへの謝礼、その他諸々。そして勿論、プロとして生きていく為には報酬の出る仕事をしないといけない訳で、その為の時間を「こっち」に使ってもらうわけです。
であれば、たとえそれがほんの30分だったとしても、その時間がもっている「価値」というのは決して軽いものではない。
けど、その価値は、知らない人にとってはとても「分かりにくい」ものなんです。
厄介なことに、「アーティストがお金の話をすると不純だと感じる人」というのが、何故か世の中には少なくないんですよね
何故か、「お金に関わらない活動をしている人」を、「お金を受け取って活動している人」よりも偉いように感じてしまう。
れっきとしたプロのアーティストに対して、「お金目当てなのか」とか言ってしまうことがいかに理不尽な話なのか、冷静に考えると分かりそうなものなんですが、何故か「お金を得る為の活動」をそうでない活動よりも不純であると考えてしまう。
その意識が邪魔をして、場合によってはプロの側でも「お金の話がしにくい」なんて意識が出てしまう。
結果として、それに乗じた「図々しい人」が、「ただでやってください」なんて言ってしまう訳です。
これ、結構一般的な問題だと思うんですよ。
少なくとも、「プロの人に依頼者側からボランティアを要求するのは侮辱以外の何者でもない」という程度の認識は常識になって欲しい、と私は思うんですが、けど「お前は無料で演奏して、「無料でもいいんだ」と思う人の発生を助長してんじゃん」と言われてしまうと、「うーーーーん」と頭を抱えてしまう、という話なんです。
アマチュアが、アマチュアとして、無報酬での活動をするというのは別に構わないことだと思うんです。
ただ、それを見た人に、「ああ、こういう活動って無報酬でしてもらえるものなのか」というのを当たり前だと思って欲しくはない。
まして、まったく次元も重みも違う活動をしているプロの人に対して、「あの人も無報酬でやってたんだからタダでやってよ」などと考えられてしまっては、「ちょちょちょちょっと勘弁してください」以外の言葉がない。
端的に言うのであれば、
・私はアマチュアであって、プロが持っている技術の重みと、私の技術の重みは全く違う
・プロの演奏はこんなもんじゃない
・プロの技術にはきちんとお金を払うだけの価値も重みもあるし、アーティストがお金の話をするのは悪いことでもなんでもない
という3点について、私はもっと広めていかないといけないんだろうなーと思いますし、今後もそうしていこうと思った次第なのです。
皆さまにおかれましても、プロの技術には敬意を払うべきであるということ、アーティストがお金の話をするのは当たり前のことであって、もっとお金の話をしやすくなってもいいんだということ、ご認識頂けるのであれば幸いなことこの上ありません。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城