脳科学者で、慶応大学教授の茂木健一郎氏が過激なツイートをしたと話題になっている。
中々激しい感情のほとばしりを感じるツイートだが、賛否両論である。
「偏差値偏重の教育はよくないので、賛成」と言った意見から、「自分の位置を確認する良いツールだ」という反対意見まで様々である。
概ね、茂木健一郎氏に賛成して「偏差値反対」の立場を取る方の主張は、「ペーパーテストではその人の能力は測れず、ペーパーテストによって格付けされ、社会的に不利益を被ることは不当である」と主張するものだ。
それに対して、茂木健一郎氏を批判する人々は、「偏差値は有用なツールであり、努力した結果、高偏差値=高評価を得られるのは当然だ」というものである。
さて、この議論は本当に昔から有るものなので今更という感もあるが、もう一度「偏差値」と言うものの正体についてはっきりさせておく。
偏差値は統計学の概念の一つであり、ある数が、全体の中でどの程度の位置にあるかを表したものである。母集団の分布が正規分布に近い場合には
- 偏差値60以上(あるいは40以下)は、全体の15.866%。
- 偏差値70以上(あるいは30以下)は、全体の2.275%。
- 偏差値80以上(あるいは20以下)は、全体の0.13499%。
- 偏差値90以上(あるいは10以下)は、全体の0.00315%。
- 偏差値100以上(あるいは0以下)は、全体の0.00002%。
(出典:Wikipedia)
ということを示している。例えば「テストで偏差値70を取った」という人は、そのテストを受けた人の内、全体の中の上位2.2%以内に入っている、ということだ。優秀である。偏差値60の時は上位15%程度、
なお、偏差値が50ということは上位50%、ちょうど全体の半分の位置ということだ。
そこで一つ疑問なのは、あくまでも「ある集団の中で全体のうちのどの位置か」を示しているはずの偏差値が、いつの間にか学校と紐付けられているということだ。
慶応大は偏差値70
明治大は偏差値60
日大は偏差値50
これは、「母集団を何と捉えて、偏差値を出しているのか?」がわからない。テストの点の偏差値ならばわかる。
そこで、予備校の関係者に聞いてみたところ、簡単な理屈だった。
「年2回、6月と10月(予備校によって異なる)の、全国模試を受けた時の点数を出し、その人がどこの大学へ行ったかの追跡調査の結果を元に算出している」とのこと。
つまり、偏差値は「大学の格付け」ではないということだ。その偏差値の人がどこの大学に入学したか、という話でしかない。
だから、偏差値に過剰に反応するのは「偏差値」についてよく知らないか、もしくは「ペーパーテストによるランク付け」を忌避するものであろう。
まあその気持もわかる。人はランキングが大好きだが、ランク付けされるのは「上位の人を除いて」嫌いだからだ。
ただ考えても見て欲しい、遅かれ早かれ社会の中で容赦なく人はランク付けされるのである。それも自分の意思とは無関係に。
それに慣れておくには大学受験はいい契機なのかもしれない。
そういう意味では、「偏差値嫌い」の人々が本当に問題を解決したいなら、偏差値ではなく人が格付けされるという行為そのものであるが、それはあまりにも頭のなかがユートピアというべきだろう。
そんなことに目くじらを立てる前に、やることがあるはずだ。
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)