こんにちは。「コンサルポータル」主宰、AscentBusinessConsulting代表の北村です。
そろそろ、人事評価の時期になる会社も多いのではないでしょうか。
私は独立前、某外資系企業に在籍していました。
なかなか居心地が良い会社でしたが、その居心地の良さの一つの理由は「人事評価のやり方」でした。
日系企業とかなり異なる部分があり、面白いネタだと思いますので、今回はそれについて少し書いてみたいと思います。
「ほしければ自分で取りなよ」というカルチャー
まず、人事評価に限らず、外資系企業の基本的な文化は、「ほしければ自分で取りなよ」と言うものです。
例えば、私が勤務していた外資系企業は1万人を超える大きな会社でしたが、普通に
・自分の席はない
・自分のロッカーもない
という状態でした。
顧客先で仕事をすることも多いため、もともと全員分の席が会社にない、という事情もあります。
ですが、社内で働く場合でも席が自動的にもらえるわけではありません。
どうするかというと、席が欲しい人は、自分で人事に申請するんです。「席をください」と。ロッカーも同じです。
外資系では、主張しないと、何もありません。
要するに、欲しいものは自分で取りに来い。受け身の人は死あるのみ。
これがルールです。
ですから、社員は基本的に放置です。
もちろん、仕事だって同じです。
黙っていてもプロジェクトマネジャーは仕事を割り当ててくれません。
自分のスキル表や経歴を書くシステムがあって、そこにきちんと記入し、プロジェクトマネジャーの目にとまるようにしなければ、「社内失業」だって普通にあるのです。
しかし、これらは逆にメリットでもあります。
「縛り」が全くないのです。
例えば、
・いつ会社に行っても、行かなくても良い。
・どのようなスタイルで仕事をしても良い。
・上司は誰が会社に来ているか知らない
といった具合です。
つまり「自由」と「自己責任」から構成される企業。
それが外資系企業です。
人事評価も「ほしければ自分で取りなよ」
そのカルチャーの極みが、人事評価です。
例えば普通、日系企業では人事評価を受けることは社員の「義務」ですよね。
「評価なんて嫌だなぁー」、とこぼす人も、少なからずいると思います。
でも、私が在籍していた会社では、「義務」などとは誰も言いません。義務は成果を出すことだけです。
では、人事評価を受けることは何なのか。
それは「権利」です。人事評価は、年二回、受ける権利があると私は教わりました。
そこでは「嫌だなぁー」などと言ってはいられません。
簡単に人事評価の仕組みを説明しますと、評価は十個の「クライテリア」という、業種と専門性から作成された、厳密な評価の基準によって決まります。
なお、クライテリアには勤怠も、身だしなみも、やる気も、含まれていません。
評価の対象となるのは、「どれくらい顧客の役に立っているか」という基準のみです。
また、このクライテリアは、社内では非常に重要とみなされ、毎年、アップデートされます。
また、「どのくらい出世したいか」も自分で決めます。
「自分はこのくらいの成果を出した」と、クライテリアをもとに主張し、
クライテリアをクリアすれば、大きな昇進昇格、昇給もありえます。
ただ、ここまでは日系企業でもやっているところはあるかもしれません。
さらに大きく違うのはここからです。
まず、人事評価は、「評価委員会」という第三者の評価組織によって行われます。直属の上司やプロジェクトマネジャーではありません。
この制度、個人的には、「評価の客観性」を担保するためには非常に重要な事だと思います。
直属の上司やプロジェクトマネジャーではどうしても評価バイアスを避けられないからです。
しかし「一緒に仕事をしたことがないのにどうやって評価できるのか」という疑問が浮かびます。
それを解決するのが「作文」です。この作文ですが、上述した十個のクライテリアにたいして、自分がどういったプロジェクトをやってきて、どのような役割を担ったかを詳細に記述します。
これが驚くほど大変で、合計でA4の用紙に50枚くらいは書く必要があるので、だいたい期日の1週間前くらいからは徹夜する人もいるくらいです。
最後に、作文に対して、直属の上司と、関係のあるプロジェクトマネジャーから「承認」をもらいます。
事実に反することがあれば、「ここ直して」と言われますし、好意的な評価の場合は「もっとやってくれたよね」と、業績を付け足してくれます。
ここでようやく「評価を受ける権利」を行使するチャンスが巡ってきます。
なお、提出は厳密に締め切りを守らなくてはなりません。
提出の受付がシステムで行われているので、そこには情状酌量の余地はなく、期日をすぎると自動的にシステムが受付を停止し、ジ・エンドです。
1秒でも遅れれば「権利」を放棄したとみなされ、昇給、昇進昇格のチャンスを失います。
「ちょっとくらい遅れても上司の温情で……」というものは一切、ありません。
まあ、要するに「締切が守れないような自己管理できないやつ」は、評価に値しない、ということなのでしょう。
その後、評価委員会の作文への評価、評価委員会へのプレゼンテーションを経て、正式に評価が確定します。
つまり「人事評価も、評価がほしければ自分で取りに行く」のが外資系です。
でも実は、世の中も「ほしければ自分で取りなよ」です。
ここまでお読み頂き、
「外資系はなんて公平で客観的なんだ。自分にあっている」
と思う方と、
「外資系はなんてドライなんだ、とても自分ではやっていけない」
と思う方に別れるかもしれません。
それはご自身で判断なされば良いでしょう。
ただ、上述した外資系のカルチャーですが、世の中もだいたい似たようなものです。
つまり、受け身の人生であれば、欲しいものを得られるチャンスは殆どありません。せいぜい運次第、といったところでしょう。
しかし、「自分はこれがほしい」と決めて、実績を出し、しっかりとアピールすれば、欲しいものが得られる可能性はぐっと上がる。
これが、実は普通の世の中の仕組みではないでしょうか。
そう思えば、若いうちから外資系企業で揉まれる、というのもそう悪い選択肢ではないと思いますし、それなりの経験を積んだ後は、「フリーランス」や「起業」という選択肢も入ってくると思います。
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(Photo:fungusakafungus)