さる週末、僕はたまたま予定が何もなかった。

 

何をしようか考えた時、止せばいいのに脳裏に

「たまには激辛料理を食べて、人生の辛酸を舐めてみるのも悪くはないな」

と思ってしまったのが運の尽きであった。

 

激辛麻婆豆腐・・・食べたのかって?食べたさω;`)ツラカッタヨ

 

というわけで今回は超ウルトラハイパー激辛麻婆豆腐を食べて、散々苦しんだしょうもない話をお伝えさせて頂く。

 

第一部・舌の上を駆け抜ける刺激

その超激辛料理を出すお店は新橋にある。昔、何かの媒体で「今まで12人しか完食したことがない麻婆豆腐があるらしい」というのを読んで、いつか行ってみたいと思っていた店であった。

椅子に座るなり、僕は店員にメニューも見ずにこう伝えた。

 

「麻婆豆腐。辛さは激辛で」

 

すると物凄く嫌そうな顔をした店員がこう伝えてきた。

「激辛、スゴクスゴク辛い。ダイジョウブ?」

 

僕はその心配を振り切って、満面の笑みで大丈夫ですと伝えた。店員はまた馬鹿があらわれたな、という顔を浮かべ、厨房にこう告げた。

「麻婆豆腐、激辛イッチョウ!」 

 

待っている間、ドキドキと心臓が高鳴る。この料理が出てくるまでの緊張感がたまらない。

果たしてこの麻婆豆腐は僕の歴代激辛レコードをどれだけ更新してくれるのだろうか。というか僕は生きて帰れるのだろうか。この張り詰めた緊張感、この非日常的なスリルを味わえるのが、激辛フードファイトのいいところだ。

 

「おまたせしました~」

 

そうして激辛麻婆豆腐が運ばれてきた。それは厚く熱された石鍋に入っており、見るからに溶岩の如くボコボコという不吉な音を立てて鎮座していた。

「やべえ。予想の斜め上でキツそうだω;`)こりゃ無傷じゃ済みそうにないな」

 

覚悟を決めた僕はレンゲを燃えさかる溶岩に突き入れ、それを一口頬張った。

「ガリッ」

「!?」

予想外の食感が僕の口の中を駆け巡った。その正体は中華山椒の実である。途端、僕の口を刺すような刺激が駆け抜けた。

 

「なるほど。ここは単純な辛味だけでなく、山椒による刺激もかなりぶち込んできてるのか。やれやれ、今回の相手はちょっとは手こずりそうだな・・・」

正直言って、この時点ではまだ余裕があった。むしろ全然大したことないなと思っていた。

 

しかしその思惑は中盤戦を越えてから徐々に崩壊していくこととなる。

 

第二部・限界への挑戦

こうして何度か食べ進めるうちに、だんだんと腹を満腹感が襲うようになってきた。

実は激辛フードファイトのつらさは辛さ以外にももう1つある。それはだ。辛いものを一口食べても誰も賞賛してくれない。やるからには完食あるのみである。

 

辛いものを食べきるにあたって、意外と量は馬鹿にできない。良きサポーターであるが意外とこの満腹感を加速させるのがまた問題を二重にややこしくしている。

当然だけど、辛い料理を食べるにあたって水は不可欠だ。水の冷たさは激辛で燃えさかる口の中をクールダウンさせてくれるという大切なメリットがある。

 

しかしそんな癒やしの女神である水にも1つの弱点がある。腹にたまるのだ。

飲みすぎると腹が水でたぷんたぷんになり、強烈な満腹感によりファイトが途中で継続不能になってしまう。

 

激辛フードファイトはある意味マラソンとよく似ている。マラソンは、残り何キロメートルあるかを常に頭の中で計算しつつ、体力ゲージを頭の中で想像しつつ、走るペースを決めていく。

 

激辛料理における体力ゲージは満腹感に相当する。残された皿の料理の量から、自分の満腹感を逆算し、そしてあと何回水を飲んでも大丈夫かを逆算する。

この計算ができないと、激辛料理を完食する事はできない。

 

こうして満腹感と口の中の辛さに耐えられる限界度合いを常に意識し、最後まで食べきることができるのかを逆算ながら激辛マラソンの完走を目指すのは、意外と競技性に富んでおり非常に面白い。

傍から見るとただの馬鹿げた行為にしかみえないかもしれないけど、はっきりいってこんなにもリアルにマジになれるイベントはそうそうない。まさに命がけのフルマラソンである。

 

そうして満腹感と口の中の限界度合いがある一定以上を超え始めると、驚くべきことに脳内で走馬灯が流れ出すようになるからまた現実は興味深い。

よく事故で死にそうになる前に走馬灯が流れ出すという話を聞くけど、おそらくあれは一種の現実逃避なのだ。激辛フルマラソンを走るとそれが実によくわかる。

 

「あー、なんで俺わざわざこんな辛いことやってるんだろ」

「考えてみると、小さかった頃はそこいらを走ってただけで楽しかったな・・・あの喜びも、大人になるにつれてどんどん薄くなっちゃって・・・」

( д)ハッ!。いかんいかん。意識が飛んでた。現実に立ち返られば」

 

激辛フルマラソンの中盤~終盤はこれの連続だ。そしてギリギリ完走できそうな最後の2~3口がまた苦しい。

 

よくテレビの大食い選手権とかで、途中でスプーンを口に運ぶ手が止まっているのを目にすることがあるけど、あの心境が実によくわかる。なんていうかもう、胃も口もギリのギリなのだ。

「あと3口・・・」

けどこの3口が実にしんどい。こればかりはもう、一度体験しないとわからないと思う。

 

「もう逃げたい。こんなバカげた事を達成しても誰も褒めてくれない」

「でもあと3口で目標達成だ。頑張れ」

こうして頭の中で天使と悪魔がバトルを始めたら、いよいよ競技も終盤戦だ。

 

ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。辛い時はラマーズ法の呼吸と相場が決まっている。

古来より数多くの妊婦を痛みから救ったこの呼吸法は、我々を苦しみからほんの少しだけ開放してくれる。

 

そうして胃と口と脳の限界が来るかこないかのギリギリで、僕はようやく激辛麻婆豆腐を食べきる事に成功した。

 

目の前にはもう僕を苦しめるものは何もない。ついに激辛麻婆豆腐を完食したのだ!

身体の中から妙な達成感がほとばしり、自分は偉業を成し遂げたのだという充足感で身も心もいっぱいになった。完全勝利である。

 

「辛いのに、オニイサンよく食べたねー」

僕は満面の笑みで

「辛かったけど美味しかったです」

と受け答えし、そしてお会計を済ませ店をでた。

 

そこには清々しい達成感に包まれた、一人の男の顔があった。

 

この世は広大な遊び場。楽しまないと損じゃないか

この体験記を読んで、ある人は「ばっかじゃなーい」と思うだろう。またある人は「何が一体楽しいの?」と思うかもしれない。

そう言いたくなる気持ちもわかる。けど冷静に考えてほしいのだけど、人生における無駄とか無意味って一体なんなのだろう?

 

子供の頃を思い出して欲しい。小学校の昼休みに友達と校庭を駆け回るだけで妙に楽しかったりしなかっただろうか?

「はやく授業が終わらないかなー」

そうソワソワとしながらチャイムがなった瞬間、教室を飛び出した時に感じたような喜びを、なぜ私達大人は忘れてしまったのだろう?

 

子供の頃、私達は「意味がある」とか「役に立つ」とかそんなことは全く考えずに素のままに世界を楽しんでいたはずだ。

それが大人になったらどうか。朝起きて会社に向かうのが辛いだとか、お金が無いだとか、将来が不安だとか、そういう苦しい要素ばかりを気にするようになったりしてしまってはいないだろうか?

 

本来、人生というのは広大な遊び場のようなものなのだ。

目の前には遊びきれないほどに素晴らしいコンテンツが沢山転がっている。

 

私達はいつからそれらを無視して辛いこととか意味とか役に立つみたいな事ばかり考えてしまうようになったのだろう?

最後にあなたが子供の頃のように腹の底から笑ったのはどれぐらい前の話になるだろうか?何で今は昔のように笑えなくなってしまったのだろうか?そこにあなたが人生を辛いと思ってしまう原因がきっとある。

 

とりあえず手始めに、もの凄く馬鹿馬鹿しい事を全力で真剣にやってみませんか?

 

<参考>

味覚(中国料理)http://mikaku-shinbashi.com/

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

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(Photo:Hideya HAMANO)