世界有数の大富豪でありながら、資産の大部分を寄付することを表明し、富裕層への課税増を主張するなど、「オマハの賢人」として尊敬を集めている投資家・ウォーレン・バフェットさん。
その言葉を集めた本、『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(桑原晃弥著/PHPビジネス新書)を読んでいたのですが、その中で、印象に残った2つを御紹介します。
・成功は、飛び越えられるであろう30センチのハードルを探すことに精を傾けたからであり、2メートルのハードルをクリアできる能力があったということではないのです。
・自分の能力の輪の中にめぼしいものがないからといって、むやみに輪を広げることはしません。じっと待ちます。
僕がまだ医者になりたてだった頃、朝の採血当番というのは、とても憂鬱な仕事でした。
未熟な研修医たちに何度も針を刺される患者さんたちほどではないでしょうけど、「まだ採血できないの?」というプレッシャーにさらされるのは、とてもつらかったのです。
ほとんどの患者さんは「しっかり練習して早く上手になってね」と仰ってくれたのですが、「もっと上手い人を連れてきて!」なんて言われることもあって。
こういうのって、自分で下手だとわかっていても、けっこうきついこともある。
どうしてもできないときには、出勤してきた先輩に頼むことになるのですが、多くの場合、先輩たちはけっこうあっさり採血をしてしまうのです。
あるとき、こう言われたのを覚えています。
「採血の手技の上手い下手よりも、採血しやすい血管を探すほうが大事なんだよ」
初心者というのは、「難しいことをうまくやってみせる」のが技術だと思い込みがちなのだけれど、それよりも「少し時間をかけてでも、やりやすいところを見つける」ほうが、負担が少なく、成功率が高いことが多いのです。
もちろん、最低限の技術は、どうしても必要になるのだけれど。
僕は長年乗り物酔いしやすい体質みたいで、ゲームで「3D 酔い」して、気分が悪くなってしまって、面白いはずの作品を楽しめないことが多々ありました。
具体的に言うと、『ドラゴンクエスト11』のPS4版で、慣れればなんとか耐えられる、というくらいです。
そんな自分の体質を知っていながら、僕は長年、評判の3Dゲームを買い続け、リタイアし続けてきたのです。
今度は大丈夫なんじゃないか、と試してみるのだけれど、やっぱりダメ、なんですよね。
『ラストオブアス』とかも、「面白いはずなんだけど、これ……」と思いつつも無理でした。
もう、こういうタイプのゲームは自分には向いていないから、どんなに評判が良くても、避けるようにしよう、という覚悟ができたのは、最近のことです。
子どもの頃から、「苦手なものがあるのは良くない」「努力して苦手を克服するようにしなさい」って言われますよね。
僕も自分の子どもには「苦手だからといって、避けてばかりじゃダメだよ」って言うんですよ。
でも、今の僕自身に関していえば、どうしても生活上問題があるような苦手は、最低限のレベルで克服するか誤魔化せるようにするべきだけれど、それ以外は、もうあきらめる、で良いのではないか、と思っています。
スポーツ一般は苦手なのだけれど、どんなに頑張っても、いまさら「スポーツで飯が食える」ようになれるわけないし。
そういう「悟り」というか、「切り替え」の時期が僕は遅すぎたのではないか、と後悔しているのです。
そして、「苦手を克服する」という美談にとらわれるあまり、自分が得意とすることを伸ばして活かすタイミングを逸してしまったのではないか、とも。
『いつやるか?今でしょ!』(林修著/宝島社)のなかで、林修先生が、こんな話をされています。
50年近く生きてきて思うのは、本当に得意な分野はそんなに多くはないということです。
逆に言えば、これは勝てるという場所を1つ見つけてしまえば、人生は大きく開けます。
今うまくいっている人とは、「僕はこれしかできません、でもこれだけは誰にも負けません」と、胸を張って言える人のことではないでしょうか?
勉強もダメ、運動もダメ、でも誰よりもすごい寿司を握る自信があって、実際に店がお客さんでいっぱいなら、それでいいのです。
また、僕が水商売でうまくいっている女性を尊敬するのも同じ理由です。みんな自分の走るべきレースを見定めて、そこで勝負をしているのです。そこにどうして貴賤があるのでしょうか? 罪を犯しているわけでもなく、他人がとやかく言う話ではありません。
僕自身の大学入試の現代文の解き方を教えるという仕事もまた、世の中に無限といっていいほど存在する仕事の種類のなかのたった1つにすぎません。
そもそも大学受験をしない人にはまったく無価値であり、その世界自体も実に狭いものです。そのことを自分でちゃんと認識しています。
しかし、大学入試がなくならない限り、この世界は存在し続けるのです。それもまた事実です。
競馬では1200mなら絶対に強いという馬がいます。
もっと範囲を狭めて、京都競馬場ではまるっきり走らないのに、中山競馬場1200mになると別馬のように強い、という馬もいます。
それでいいのです。なぜなら、中山競馬場の1200mのレースは、今後も確実に施行されるのですから。
ウォーレン・バフェットさんと林修さんは、若いころ競馬にハマっていて、予想で稼ごうとしていた、という共通点があるのです。
そして二人とも、「競馬で食べていくのは難しい」と見切りをつけて成功した人でもあります。
世の中で、うまくいっている(ようにみえる)人に対して、「でも、あいつはアレができないじゃないか」って言う人は、少なからずいますよね。
でも、なんでも満点がとれる人なんて、どこにもいない。
すべての苦手を克服するには、人の命は短すぎる。
だからこそ、本当に大事なのは、「自分にできることを知り、それを活かせる場所を選ぶこと」なのだと思います。
「向上心」や「苦手を克服する姿勢」というのは、たしかに素晴らしいものだけれど、大人になって、ずっとできなかった鉄棒の逆上がりができるようになったって、一円にもならないのだから。
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【著者プロフィール】
著者:fujipon
読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。
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