最近いわゆるヘッドハンティングのようなものを受けてきた。
こう書くと僕が有能であるかのように聞こえるかもしれないけど、そんなことは全く無い。
単純にいろんな所で医師不足が極めてマズイ状況に突入しているから、僕のような若手にこの手の話が舞い降りてきただけである。
実際、日本の社会の労働力不足は本当にヤバイ状態にある。
ちょっと前からブラック企業問題が随分と話題になっているけど、あれは簡単にいえば人手が不足している事の前兆みたいなものだ。
今後、若い働き手はますます希少性を高めていくのは間違いなく、それにともなって有能な新入社員の争奪戦は相当に白熱していくだろう。
これはもう間違いない。今の若い人達は将来に悲観すること無く、自分を高く売りつける事ができる未来に喜びを感じて欲しい。
と、ここまで書いておいて何だけど、今回の話の主題はそこにはない。
この度、かなり条件の良い転職話を頂いたにもかかわらず、結局僕は今の職場にとどまる事に決めた。
果たして自分は何のために今の職場で働いているのだろうか
「果たして何のために自分は働くのだろうか。お金だろうか?生きがいだろうか?」
この疑問について、一度も考えた事のない人はいないだろう。労働は私達が生きるにあたって、人生のパートナーみたいなものとなっている。
「人はなぜ働くのか」
この疑問について、いわゆる最高峰レベルのプロフェッショナルが答えるのは容易い。イチローがなんで野球をストイックにやっているのかといえば、それは野球が楽しいからだろうし、その他の業界最高峰の人達も、多分似たような答えを提示するだろう。
この手の人達は仕事がそのまま自己実現につながっているタイプの人達で、ある意味では幸運に恵まれた人ともいえる。
でも、ほとんどの人は天職なんて見つけられる事無く人生を終えていく。
だから人生の何処の段階であれ、自分の天職を見つけ出す事ができた人は、本当の意味で働くことを自分の人生の伴侶にする事ができた存在といえるだろう。
ただ言うまでもなく、この手の人達はかなり特殊な存在だ。多くの場合において、世の中の多くの人達は天職なんかに恵まれる事は絶対にない。
僕もご多分に漏れず、医者という職種にそこまでの適性はない。
はっきりいって医者は自分の自己実現には絶対に結びつかない。これはもう間違いなくそうである。
では繰り返しになるが、果たして自分は何のために今の職場で働いているのだろうか。
より詳細にいうと”今の仕事では絶対に自己実現ができそうにもないにもかかわらず、果たして何のために自分は働いているのだろうか?”
このことを考えるにあたって、絶対に避けられないのが幸せについてだ。
幸せという単語は、簡単なようで突き詰めると実は結構難しい。今回はまずここからキチンと掘り下げてみよう。
人の幸せの源は大きくわけて3つ
私達は果たして何のために産まれてきたのか。
大きな使命を成し遂げるためだろうか?まあそういう偉大な人もいるだろうけど、そういう人はこの世に精々いたとしても数百人程度だろう。
残念ながら人類はたくさんいる。もっと詳細にいうと、現時点で地球上には人間は70億人ぐらいいる。
当然と言うか、70億人全員が偉大な存在であるはずもないし、かりに70億回も偉大な事が成し遂げられたとしたら、地球はたぶん3秒で崩壊する。
残念ながら僕もあなたも凡人だ。もっと詳細にいうと、残り大勢の69.999…億人に位置する平凡な存在だ。
平凡な存在である私達は、残念ながら偉大な事なんて成し遂げられない。とはいえ成すべき使命がないという事は決して悪いことではない。
私達凡人は、偉人と違って運命に全く縛り付けられておらず、それゆえに自由である。
その自由を使って最大の幸福を手にいれるのが、私達凡人に残された人生の課題だろう。
私達凡人は凡人ではあるけれど、いくらでも幸福になれるし、いくらでも不幸になれる。
それならば自分の人生を最大限幸福にするのが私達のミッションだろう。幸福になる事こそが、私達凡人の唯一の使命と言っても過言ではない。
では幸福とは一体何により担保されるのだろうか?
ここに1つの参考になる意見がある。
作家の橘玲さんは幸福について、著書の中で人の幸せは「金融資本」「人的資本」「社会資本」の3つにより構成されると答えている。
一つづつ説明すると、金融資本というのは簡単にいうと銀行にある預金みたいなものだ。
これは一般的には2億円ぐらいまでは増えれば増えるほど、幸福度が伸び続けると言われている。
簡単に言うと、それにつけても金の欲しさよというやつである。
次の人的資本は、簡単にいうと人間関係だ。残念ながら我々は1人では寂しくなってしまう生き物であり、人から認めて欲しいという欲求に飢える存在でもある。
特定の組織に所属したり、家庭を持ったり、多くの友達を持つ事で初めてその寂しさからの脱却が可能となる。
簡単にいうと、いわゆるリア充という奴が人的資本に恵まれた存在だ。
最後の社会資本というのは、いわゆる労働によって生み出されるものだ。
働くことでえられる給与もそうだし、仕事を通じて得られる充足感もそれに相当する。
一部のプロフェッショナルは究極的には労働を通じて自己実現を達成し、そこから人生の満足度を飛躍的に高める事に成功している。
労働を通じて社会に参画する事で、私達はお給料以外にも様々なものを手に入れる事ができる。これが仕事が私達の生活に無くてはならないものである理由の1つだ。
自分の生活基準を知るという事
この3つの資本を担保にしつつ、私達凡人は幸福度を高めるために行動する必要がある。
そこで重要となるのが自分の生活コストである。生活コストとは、生きるにあたって私達が毎月使わなくてはいけないお金の総額と考えてもらえばわかりやすい。
生活コストは人によってかなり異なる。例えばブランド物の服を着て、恒久な時計を身につけ、外車に乗って、広い家に住めば、当然の事ながら生活コストは物凄く高くつく。
けど一方でボロボロのアパートに住んでユニクロの服を着て毎日自炊をすれば、生活コストはかなり低くする事もできる。
このように生活コストは人によって随分違う。
その高い低いは何によって決定されるかというと、どれだけお金を使えば自分が幸せになれるのか、である。
だからどこの分野に、どれだけ課金すると自分は幸せになるのかについては、一度しっかり考えた方がいい。
場合によっては、全く幸福につながらなそうな事に多額のお金を費やしていたりする事は我が身を振り返ってみれば結構ある。
なんで生活コストをしっかりと認識する必要があるかというと、お金は何に使うかでその人の人生を幸福にも不幸にもする要素があるからだ。
いくら預金残高が人生の幸福度を高めてくれるからといっても、残念ながら銀行にせっせせっせとお金を預けるだけでは私達は幸せにはなれない。
例えば僕は美味しい食事を食べるのが生き甲斐だけど、その為には当然そこそこのお金が必要だ。
僕は銀行の預金残高が増えることよりも、美味しい食事を食べる事のほうが人生において圧倒的に重要だ。
これはある意味では僕は、食事に関しては生活コストが普通の人よりも高くないと幸せになれないという意味でもあり、それだけ切り取ってみれば、僕は凄く幸せになるためのコストがかさむ人間でもある。
けどその一方で、僕は服とか家のようなものには全くこだわりがない。
車も持ってないし、その他の活動に関して言えば全くといっていいほどお金を使っていない。
だから実のところ、僕の生活コストは総額に換算すると物凄く低い。
つまるところキチンと傾斜をかければ、特定の分野に限って贅沢をするのは、そう難しいことではないのである。
結局、私達人間は体験を通じて得られるものを通してでしか生の実感を得ることができない。
僕の友達に毎週末日本各地の海に飛び回ってイルカと戯れている、かなり特殊な人がいる。
その人はその体験が自分の幸福度を高めてくれているという確証があるからそれをしているのだろう。
当然というか随分とそれに対して高いお金を使っているのだろうけど、その行動が自分の真心から出ているのだとしたら、それはその人の幸福の実現のために必要な”生活コスト”なのだ。
さきほどあげた3つの資本はどれも凄く大切だけど、人生はそれだけでは何も色めき立たない。
お金や時間を使う事で、私達は自由な行動をとる事ができる。
いったい何が自分の魂を喜ばせるのかについて、しっかりと自分で検証を行おう。
自分が幸せになるためには、一体何に時間とお金を使うべきで、それについていくら必要なのかを真摯に考える事は凄く凄く大切だ。
僕なら家や車といったものは自分の金融資本を物凄く引き下げるので全く必要がないという結論に至ったし、洋服などについても全くこだわりがない。
家も狭くて全然構わないし、色恋沙汰も情緒が不安定になるので全く好まないので早々に結婚する事に決めた。
これらは全て”自分の幸福度を高める為には何が必要なのか”を検証した結果、僕の中では切り捨てても全然問題ないものと判断されたものであり、当然と言うか僕が切り捨てたものの中に人生の幸福が詰まっている人もいるだろう。それらの人達は、そこに人生のエネルギーを投入すればよいのである。
僕の人生は旅行と美味しいご飯を食べる事、文章を書いて評価してもらう事、家族や友人と笑いながら会話する事によって輝きを増すという事が様々な体験を通じて判明しており、それ意外の事については正直全くといっていいほど魂に響かない。
僕という人間はそういう奴なのである。
だからこそ、ヘッドハンティングで高い給与を提示されても全く心に正直響かなかった。
いや、正直な事をいうと額面を見てビビったのは事実だけど、よくよく考えれば考えるほど、それは幸福には直結しないな、と思ったのである。
仕事は自分の人生に何を与えているか
さてやっとこさ本題だ。働くっていったいなんなんだろう?
仕事はお金のためだと考えている人も多いようだけど、実のところお金は労働から得られる一側面でしか無い。仕事はそれ以外にもかなり多くの事を私達にもたらしてくれる。
さっきも書いたとおり、一部のプロフェッショナルは仕事を通じて自己実現を達成させている。
この手の人達はある意味ではラッキーな人達であり、残念ながら僕達凡人は仕事を通じて偉大な事を成し遂げるのはちょっとむずかしい。
じゃあ自分が仕事からお金しか得てないかというと、そんな事はない。
では一体何を得ているのかという事を突き詰めていくと、それは職場の人達との間に産まれる”縁”のようなものにその根源を見出すことができると僕は思い至った。
”縁”とは非常に不思議な概念だ。それは実は原始仏教において、この世の全てを構成する元となるものだといわれている。
どういう理論なのかを簡単にいうと、物事を全て並べていって、それらの間に残るものが一体何なのかを徹底的に突き詰めていくと、そこに残るものはモノとモノとの間に存在する関連性のみに行き着くのである。
だから原始仏教ではモノとモノの間にある”縁”こそがこの世を構成する原子のようなものだと考えられていて、それを中心にこの世の心理を読み解いていくのが、その理論骨子となっているのである。
詳しい事を知りたい人は、空とか唯識論とかについて書かれた本を読むと面白いかもしれない。
さて給与については十分満足している自分が、今の職場とヘッドハンティング先とを比較した時、この”縁”についてを考えてみたのだけど、そう考えてみると実のところ自分の幸福の殆どがそれに起因しているという結論に僕は至ったのである。
今の職場の同僚や上司、その他の勤務スタッフと、同じ空間を共にすることで紡ぎされる”縁”は、ちょっとそんじょそこらの職場で得られるようなものだとはとても僕には思えなかった。
だから新しい職場を、お金だけで移ろうという気がどうしても起きなかったのだ。
シロクマ先生が新著「認められたい」で所属欲求について色々と書かれていたけど、突き詰めていくと所属する事で産まれる”縁”が人にとっては信じられないぐらい大切なものだと僕は認識していて、これが”悪縁”だと相当私達は心を病むし、”良縁”だと物凄く心が穏やかになる。
まあ背に腹は変えられないというのは事実で、低すぎる給与でやりがい搾取されるのは結構キツい。
けど、そこそこの給与と動労時間が担保されるのだとしたら、自分は仕事で自己実現できない人はこの”縁”を主体に仕事を選べば、結構いい感じに人生をうまく運べるんじゃないかなぁと思うのだ。
実は”縁”は仕事以外にも様々な場所にある。
僕がレストランを選ぶのは、美味しいという事ももちろん非常に重視するけれど、シェフやサービススタップとの関係性も非常に重視しているし、実際に数年間通って仲良くなったりすると、対価以上のものをお互いやりとりしているようにも感じられる。
妻との関係も”縁”から読み解くと相当に味わい深い。
世の中には恋愛工学のような火遊び的な刹那的な異性との”縁”に全てを追い求めている人達もいるけれど、僕はやっぱり信頼できる人と落ちついて紡ぎ出す”縁”により価値を感じてしまう。友人関係も、そういうものがやっぱり好きだ。
と、いうわけで何でもかんでも自己実現に突っ走っても凡人には実現不可能ですし、”縁”を主眼にして職場とかパートナーとか趣味空間のポートフォリオを組み立ててみてはいかがでしょうか?
良縁を身の回りに配置する事ができるようになると、人生の幸福度が飛躍的に高まるのはそりゃもう間違いありません。
私達凡人は、自己実現という宿命を課せられていないからこそ、幸せにならなくてはいけないんですから。
その為に”良縁”を身の回りに紡ぎ出す事を主眼にしてみると、また今とは違った幸風景がみえたりします。
そこに私達凡人が生きる意味である、幸せの元があるんですよね。
AUTOMAGICは、webブラウザ上で商品情報を入力するだけで、
・ターゲット分析
・キャッチコピー
・ネーミング
・キャンペーン企画案
・商品紹介LPの文章
を自動で出力します。
登録すると月間40,000トークン(約2記事程度)までは無料でご利用できます。
↓
無料登録は
こちら(AUTOMAGICサイト)へ
詳しい説明や資料が欲しい方は下記フォームからお問合わせください。
↓
AUTOMAGIC お問合せ・資料ダウンロードフォーム
【プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように
noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki
(Photo:Clint)