公私共に、会話のうまい人を、たくさん見てきた。会話はコミュニケーションの基礎であり、また終着点でもある。上手であることに越したことはない。

ではどうすれば、会話が上手い人、あの人と話すのが楽しいね、と言われる人になり得るのだろうか。

一説によれば「聞き上手となるべき」という人がいる。ウンウン、と相手の話をよく聞き、相手に気持ちよく喋ってもらうことに注力せよ、という。

 

しかし最近、それはどうも違う、と感じることもある。聞き上手であることは特定のシーンにおいては重要なのだが、必ずしもそうではない。

例えば私は普段「聞き上手」の人をあまり求めていない。

なにか観察されているのでは、と勘ぐってしまうからなのだが、むしろ話上手、と言われる人の方が与しやすく、会話も続くのだ。

また、世の中に散らばる「会話のしかた」は、いかにもマニュアル的で個別のシーンで使い勝手が悪い。だから最近まで私は「会話に王道なし」と割り切っていた。

 

 

ところが最近、ある方とミーティングするにあたって1つ気づいたことがあった。

私が「話上手」だ、と思っていた方が、他の方と話すと「聞き上手」だったのだ。つまり彼は、使い分けていた。

 

それを尋ねると

「会話には、いくつかのパターンがあり、つかいわけは当然なのだ」

と彼は言った。

「「聞き上手」とか「話し上手」とかは、会話の一つの側面を切り取っただけで、本質はそこにはない」と言う。

「では、本質はどこにあるの?」と聴く。

 

「まず、よく言われる通り会話は「キャッチボール」だ。」

「それは知ってる。」

「では、キャッチボールが成立するための条件は?」

「うーむ……」

「例えば、野球をおぼえたての子供と、プロ野球選手の間でもキャッチボールは成立するよね。」

「まあね。」

「でもその時、プロ野球選手は手加減するだろう?」

「うん。」

「だから、会話ってどちらかが「手加減すること」が絶対に必要なんだよ。」

 

手加減……わかったような、わからないような表現だ。というが何を手加減すればよいのか。

「私の言っていることがわからない?」

「そうだね。」

「例えば、ある友達に自分の好きなゲームの話をするとしよう。自分は詳しいけど、相手はそのゲームをしたことがない。」

「よくあるね」

「なら自分は、相手がどこまでそれについて知っているのか、を確かめながら話を進めなくちゃならない。格闘ゲームなら、格闘ゲームをやったことがあるか、「コマンド」を理解しているか、格闘ゲームの面白さについて聞いたことがあるか、これらが「手加減」だ。これをしないと、相手はキョトンとしてしまうか、「よくわからない話だ」とおもいながら話を我慢して聞くだけになる。」

「なるほど。」

「だから、会話が面白いのは実は「同じ知識レベル」の人同士なんだよね。手加減しなくていいから。」

「……!」

「話していて、「つまらないな、この人の話」と感じるときは、知識レベルに隔たりがあるときだね。」

「なるほど……」

「それを理解した上で、次に「3つのモード」を使い分ける。」

「なにそれ」

「会話というのは、目的によって3つに類型化される。議論モードと、共感モード、そして提供モード。」

「初めて聞いた。」

「だろうな。自分が勝手につけただけだから。でも、意識するだけで結構役に立つ。議論モードは、自分と相手の話す割合が5:5になるようにする。これはお互いがきちんと意見を言い合って、よりよい知識を生み出すための会話の方法。」

「なるほど。」

「共感モードは自分が「聞き役」で話す割合は自分と相手が2:8くらい。この会話の目的は相手の心を癒やすこと。」

「それは知ってた。」

「まあ、よく聞くよね。そして提供モードは自分が8話して、相手が2くらい質問するイメージ。要するに情報提供。」

「おお」

「といっても、あくまでこれらは目安で、でも意識すると会話はすごい楽だよ。とはいえ……」

「とはいえ?」

「本当に会話がうまい人は、こういう分析をいちいちせずとも、会話をうまく成立させてしまうんだけどね。それが本当のコミュニケーション強者なんだよ」

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【著者プロフィール】

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