電話で相手が何を言っているのか聞き取れないという経験を一度はしたことがあると思う。
知らない用語がたくさん使われていたり、周囲の音がうるさかったり、電波が悪かったりしない限りは、大抵の場合相手の滑舌が悪く、しかも早口だったケースではないだろうか。
そういう人は、あなたへの電話のときだけ滑舌が悪く早口になっているわけではなく、普段からそのような話し方をしている。
その人にとって、そのような発音の仕方も話すスピードも、“普通”なのだ。
私は自分が比較的早口で話すほうだからか、早口だと言われている人の話を聞くときは心地良く感じる。
一方でゆっくりとした話を聞くと、時間の流れがそこで変わってしまったような不思議な感覚になる。ゆっくりと話しているように感じた相手は、たぶん“普通に”話している。
でも、なんだか“わざと”ゆっくり話しているように感じてしまうときがある(ごめんなさい、もちろんそうではないことは理解しています)。とにかくそのスピード感が不思議なのだ。
しかしいくら違和感を抱いたとしても、相手の話すスピードをコントロールできるわけではない。
その人にはその人のペースがある。自分に合わせてもらおうという発想はおこがましい。それに、話すスピードについては多少不思議な感覚になったとしても大きな問題ではない。
ただ、仕事でもプライベートでも、どうしても理解できない他人の言動って結構たくさんあると思う。
その「理解しがたい他人の言動」を見たとき、どう対応しているだろうか。
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これはずっと忘れていた子どもの頃の妄想だ。(妄想なので馬鹿げた話に聞こえたとしても広い心で受け止めていただけると嬉しい。)
ある時、自分が生きている世界は他の人が生きている世界と同じなのだろうか、と考えたことがあった。
たとえば私は1分を1分の時間として捉えているけれど、私の世界での1秒と同じ時間で1分を捉えている人もいるのではないか、といった妄想をした。
それでも「カップラーメンがお湯を入れてから3分でできるなんて早いね」というように時間の感覚を共有できるのは、その人の世界は全てが60倍の速さで進んでいるからだ。
だから、私から見たら60倍の速さ、つまりカップラーメンが3秒でできるような世界だったとしても、その人はその3秒の間に(私の世界での)3分の歌を歌えるわけで、結局は同じ世界を生きているように見えてしまうのである。
あなたと私は違う世界を生きている。そんなことがあるかもしれない。
ただ、仮にそうだとしても、どう頑張っても証明することはできない。それがもどかしい。
もちろん、あくまで妄想だ。馬鹿げていると言えば馬鹿げている。だがそんな子どもの妄想に対して「そういう世界があってもおかしくないよね」と言ってくれた人がいる(私が都合良くそう捉えているだけだが、という補足はしておきたい)。
その人はかつて父親から借りた本に出てきた。
「この世界が5分前に始まったものだったとしても、それを反証することはできない。5分前の記憶も、植えつけられた偽の記憶なのだ」
こんな内容が書かれていた本で、興味深かったのでずっと心に残っていた。(といってもしばらく思い出すことはなく忘れていたのだが。)
随分前の記憶なのでどんな本だったのか全然思い出せず、Googleで調べてみたら「世界五分前仮説」というバートランド・ラッセルによって提唱された思考実験のひとつだということがわかった。
世界が5分前に始まったなんて「そんなことはありえない」と言いたいけれど、確かに反証はできない。
自分の妄想に偉大な人の考えを強引に当てはめるのは若干卑怯な感じもする。それでも「世界五分前仮説」と同様に、自分が生きている(捉えている)世界と他人が生きている(捉えている)世界が違ったとしても、それを否定することはできないと思うのだ。と、妄想を支えるために都合良く考えてみる。
私たちは普段気軽に「あの人はずれている」だとか「あの人のことは理解できない」などと言うけれど、みんなそれぞれの世界を生きているだけのことであって、その人だけが別世界を生きているわけではないのかもしれない。
相手のことを知ろう、理解しようとする姿勢は大切だが、一方でそもそも違う人間なのだ、というあたりまえのことを忘れないためにも、少し馬鹿げた話かもしれないけれど、こういう妄想をしてみるのも悪くない。
理解できないあの人の世界ではカップラーメンがお湯を注いでから3秒でできるのかもしれないし、別の誰かから見たあなたはカップラーメンを食べるまでに1時間もかかる世界にいるのかもしれないのだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
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(Photo:James McLintock)