ザ・ゲームという本がある。
これは当時、アメリカのニューヨーク・タイムズの音楽部門の担当記者であったニール・ストラウスが書いた本だ。
2005年に出版されたこの本は物語としての面白さも当然だが、ナンパコミュニティという、少しアングラな集団の秘密が初めてこの世に公開されたという事もあり、爆発的な勢いでベストセラーになった。少し前に日本でも大ヒットした藤沢数希さんが生み出した恋愛工学も、この本が元ネタである。
この本では結局、主人公であるニール・ストラウスは最終的には一人の女性とステキな恋をして、ナンパ師を卒業する。
とまあハッピーエンドのような形で物語は終わるのだけど、なんとつい最近、ザ・ゲームのその後が書かれた本が和訳で出版された。これがもう滅法面白い。
最初に出されたザ・ゲームでニール・ストラウスは1人の女声との恋愛に立ち戻る事を最終的に選んだわけだけど、それを見た読者は必ずこう思ったはずだ。
「本当にこの人、こんな破天荒な体験しちゃった後で、普通の恋愛に戻れるの?」
その読者の誰もが思う疑問だけど、さすがというか元凄腕ナンパ師のニール・ストラウスはやっぱり1人の女性との恋愛だけで満足がいくはずもなく(笑)、続編では冒頭から恋人の友達と関係を持ってしまい早々に修羅場へ突入する。
面白いのが次からの展開で、自分をセックス依存症ではないかと疑ったニール・ストラウスは、なんと閉鎖された依存症患者の集まるセラピー施設へと入所し、そこでセラピストから処置を受ける事となる。詳細は省くが、このセラピー施設での展開も実に面白い。
結局、セラピー施設での処置を受けても一人の女性を愛するという生活に息苦しさを感じたニール・ストラウスは、その後、自由な男女関係を求めて、ポリアモリー(複数愛)、スワッピング、ハーレムなど、新しい恋愛スタイルを試してゆく。
大変に面白いので、是非その後の展開については本を読んでぜひ確かめて欲しい。
この本が凄いのは極めて詳細な事実関係に基づく記述がなされている事と、ニール・ストラウスの卓越した取材力が組み合わさっている部分にある。
ザ・ゲームの頃も、その当時は全くといっていいほど秘密主義的であったナンパコミュニティに単身で潜入してゆき、様々な技術を全て手に入れた後に惜しげもなく披露するという、ある意味では行動派の社会学者も真っ青になるような業績をあげたわけだけど、次の本となるザ・ゲーム 4イヤーズでやりのけた事もまた凄い。
なにしろ潜入先が閉鎖されたセックス依存症患者の治療施設だったり、神の名のもとにフリーセックスを行う新興宗教だったり、アメリカの上流階級でのスワッピングコミュニティの実態だったりするのだ。
ちょっと普通の考えでは、とてもそんな所に乗り込もうだなんて思わない。
その勢いは最後まで衰える事無く、なんと最後には女性3:男性1のハーレムを作り共同生活をし始めるのだから驚きだ。ある意味では、男の理想を全て体現した後に、主人公のニール・ストラウスが何を思ったのかを知ると、一見羨ましそうに見える関係も、現実は甘くないという事がわかり、大変に神妙な気持ちとなる。
今回、僕がこの本をオススメするのはゲスな心からではない。この本を読むことを通じて、正しい知識を得る事の大切さを学んで欲しいと思ったが故に、こうして筆をとっている。
僕は本を読む最大のメリットは、活字を通して知識を誤りの少ない形で追体験できるという事にあると思っている。
僕自身、上で書かれたような破天荒なライフスタイルには特段憧れがあるわけではない。けど、文字を通じてこれらの体験をニール・ストラウスになりきって体験することで、僕ははじめてナンパ師やハーレムの中で生活する男の人の実態を、キチンと正確な形で知る事ができる。
こういう行為はみんなが思っている以上に大切な事だ。正しい知識を得て、正しく他者の事をしる事を通じてでしか、私達には世界をキチンと見通す事ができない。
当たり前の話だけど、人は知らないことについてはあまり正確な評価が下せない。何を当たり前の事を言うんだと思われるかもしれないけど、実のところ意外とみんなこれがわかっていない。
具体的な例をあげて説明しよう。
例えば週末の居酒屋にいくと、テレビで得た印象を元に政治家の悪口を言っている人を山のようにみかけたりする。やれ政策が悪いやら、あいつは駄目だとか。
果たして、これらの事をいっている人は、何を根拠にそういう発現をしているのだろうか?少なくとも僕の経験上では、その手の事を言っている人達に
「政策のどこが悪いのか?」
「あの人はどこが駄目なのか?」
という事を具体的に聞いて、僕は一度としてキチンとした回答が返ってきた試しがない。
つまり彼等のような居酒屋でぐだを巻いている人は、マスコミや新聞により作られた印象でしか物事を判断していない。
これは実のところ非常に深刻な事で、つまるところ”正しく”相手の事を知らないと、私達は簡単に印象操作されてしまい、他人に都合のよい形で利用されてしまいがちなのだ。
「ナンパ師って、なんかチャラそう」
「ハーレムって、毎日綺麗な女の人に囲まれて幸せそう」
これが僕が本書を読む前に抱いていたそれらに対するイメージだった。けど今ではそれらについて持っている印象は全く異なるものとなっている。
こうして、自分の知らない外側の世界についての知識を得ることで、自分の思い込みで判断を行う事がどれだけ馬鹿げているかや、キチンと知らない事について知ったかぶりで言及することがいかに愚かな事であるかという事が初めて理解できる。
こういう体験を、意識的にするかしないかは、人としての知的な振る舞いに非常に強く影響する。
弱い犬ほどよく吠えるというけれど、実のところ知と真面目に向き合っている人ほど、ぐだを巻かない。知らないことについて印象で物事を語る事がどんなに馬鹿げている事かをキチンとわかっているからだ。
自分の知らない、語り得ぬものについては、勇気を持って沈黙するという事も時には必要な事なのだ。沈黙は金というのは、そういう事である。
なお話を本に戻すと、最終的に著者であるニール・ストラウスは「快楽は一瞬、愛は永遠である」という事を、破天荒な恋愛スタイルを体験する事で心の底から痛感したようだ。
是非、実際に本を読んでこの言葉がどういう体験を通じて得られたのかについて確認してみて欲しい。きっと、あなたの心の中に、新しい価値観が産まれる。
これだから本を読むのはやめられない。
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