月は無慈悲な夜の女王SFの巨匠ロバート・A・ハインラインによる名作「月は無慈悲な夜の女王」という作品は、革命というテーマを扱っている。革命というと直ぐに武器を持って反乱を起こし、ドンパチやるというイメージだが、この著作で扱っている革命は少し毛色が異なり、非常に面白い。

これから本を読む方のためにネタバレはしないでおこうと思うので、核心には触れない。が、実はこの著作の前半に興味深い「組織論」が語られている。

 

革命の中心人物ととなる登場人物の1人、ベルナルド・デ・ラ・パスは、主人公に向かって組織づくりの考え方を伝える。

 

”組織とは、必要以上に大きくあってはいけないのですよ…単に参加したいというだけの理由で同士に入れては絶対にいけません。そしてまた、ほかの人に自分と同じ見解を持たせるという楽しみのために、他人を説得しようとしてはいけないのです。時期が来れば、その人も同じ意見を持つようになるでしょう。”

 

これは炯眼である。私が見てきた多くの会社は、「規模の追求」「経営理念の教育・伝達」は、半ば公理のように扱われてきた。

しかし、組織づくりで失敗する会社の多くはまさに「能力はともかく、理念に共感し参加したい人を加える」、「経営理念を社長自ら言明し、社員を説得する」ということを実行した結果、うまくいかず、苦しんでいる。

 

理念による経営を推進する経営者の悩みは、究極的に以下のようなものだ。

「なぜ、社員は理念に共感してくれないのか?」

「なぜ、私は彼らのために尽くしているのに反感を持たれるのか?」

「なぜ、このような立派な理念に共感してくれる人が少ないのか?」

 

ハインラインによれば、答えはカンタンだ。

1.組織の形は、機能に従う。すなわち、組織は規模や理念云々の前に、機能による設計がなされるべきである。

2.規模を追求してはいけない。規模は組織に必要な条件ではない。

3.社員を説得しようとしてはいけない。それは自分の楽しみのためにやっていることとみなされる。従って、反感を生む。

4.時期が来れば、社員は自然に社長と同じ考え方になる。もしそうならない場合は、社長の器に対して、組織の規模が大きすぎる。

 

私は今まで、「社長が立派なことを言っているのに、なぜ従業員が反感を持つのか」が、今ひとつわからなかったが、その疑問が氷解した。やはり、ビジネス書だけ読んでいると頭がカタくなってしまうものだ。

 

 

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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第4回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第4回テーマ 地方創生×教育

2025年ティネクトでは地方創生に関する話題提供を目的として、トークイベントを定期的に開催しています。

地方創生に関心のある企業や個人を対象に、実際の成功事例を深掘りし、地方創生の可能性や具体的なプロセスを語る番組。リスナーが自身の事業や取り組みに活かせるヒントを提供します。

【日時】 2025年6月25日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【ゲスト】
森山正明(もりやま まさあき)
東京都府中市出身、中央大学文学部国史学科卒業。大学生の娘と息子をもつ二児の父。大学卒業後バックパッカーとして世界各地を巡り、その後、北京・香港・シンガポールにて20年間にわたり教育事業に携わる。シンガポールでは約3,000人規模の教育コミュニティを運営。
帰国後は東京、京都を経て、現在は北海道の小規模自治体に在住。2024年7月より同自治体の教育委員会で地域プロジェクトマネージャーを務め、2025年4月からは主幹兼指導主事として教育行政のマネジメントを担当。小規模自治体ならではの特性を活かし、日本の未来教育を見据えた挑戦を続けている。
教育活動家として日本各地の地域コミュニティとも幅広く連携。写真家、動画クリエイター、ライター、ドローンパイロット、ラジオパーソナリティなど多彩な顔を持つ。X(旧Twitter)のフォロワーは約24,000人、Google Mapsローカルガイドレベル10(投稿写真の総ビュー数は7億回以上)。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/6/16更新)