最近長女次女の宿題を見るようになって、ちょくちょく昔のことを思い出しています。
何度か書いてるんですが、学生の頃、補習塾で塾講師のアルバイトをしていたことがあります。
補習塾というのは、基本的には「学校の勉強についていけない子」がその解決のためにくるところです。
当然、生徒さんは勉強への苦手意識を持っている子が殆どですし、自己評価や自己肯定感にも大きなキズをつけてしまっているケースがかなりの割合を占めていました。
学校の勉強のことを原因として、家庭内の雰囲気が悪くなってしまっている子も少なくありませんでした。
補習塾に来る子って、塾に通わせる程度に親御さんの意識が高いので、親御さんの意識と子どもの学力に大きなギャップがあるケースが多かったんですよね。
自分のせいで家の中がギスギスしてしまっている、と無意識にも感じているのか、お子さんの委縮具合が見ていて辛かったです。
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「分からない」の話をします。
これは断言していいと思うんですが、「分からない」子にとって一番堪えるのは、教える側の「なんでこんなことが分からないんだ」という言葉、ないし態度です。
分からない側って、何が分からないって大抵「どこが分からないのかが分からない」んですよ。
どこが分からないのか分かったら、大筋自分で解決出来るんです。分からない原因が分からないんだから、「なんで」と聞かれても答えようがない。ただただ自分を責めるしかない訳です。
ある程度実力があって、既に自己評価の基盤が出来ている子ならともかくとして、自己評価メタメタな子にそんな言葉を投げかけても、勉強嫌いにより一層拍車をかけるだけであって何もいいことはありません。
その塾では、「なんでこんなことが分からないんだ」というのは禁句になっていました。
まず、「分からない」を肯定してあげないといけない。
「分からないよね、難しいよね」と言ってあげないといけない。
言ってみれば、「分からない」に寄り添うことがとても大事なんじゃないかなあ、と、当時から今に至るまでそう思っています。
悪条件が二つあります。
一つは、「分かる側」にとって、「分からない」を理解するのは非常に困難である、ということ。
これどんなことでもそうだと思うんですが、自分はもう「分かってしまっている」ので、「分からない」時の自分を思い出すことってとても難しいんですよ。
だから、「何故分からないのか」って「分かる側」からすると本当に不思議なんです。
例えば皆さん、「 15 – 8 」って計算、一瞬で出来ちゃいますよね?この計算を前に固まっちゃってる子の気分って分かりますか?「なんでこんなことが分からないんだ」って思いませんか?
これ、大抵は「繰り下がりの部分の計算が頭の中で出来ない」のが分からない原因なんですけど、そういうの慣れないと分析出来ないんですよ、案外。
理解出来ないから、共感出来ない。これが一つ、「分からないことに寄り添う」際の難しさの要因です。
もう一つは、「口にしないにしても、「なんでこんなことが分からないんだ」という気持ちはとても態度に出やすい」ということ。
子どもって敏感でして、たとえ直接口に出さなくっても、態度の端々に「なんで分からないんだ」っていうイライラが見えちゃうと途端に委縮しちゃうんですよ。
委縮しちゃうと、大抵の子は頭に何も入っていかなくなります。
実際、「相手が何故分からないのか理解出来ない」って状態、教える側にとっても大きなストレスになるものでして、教える側も人間である以上、そのストレスによるイライラを完全に抑制するのは難しいんです。
イライラしてしまった時点で相手に伝わってしまう。難易度高いですよね、これ。
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当時色々考えたんですが、一つの結論として「分からない原因が分からなくてイライラしてしまうなら、それを明確にしてあげれば良い」ということにたどり着きました。
試行錯誤の末、最終的に「これがいいんじゃないかなー」と思った方法は以下のような感じです。
1.相手が何故分からないのか、ということをパターン分析に落とし込む
2.原因が分かったら、相手にその原因を明示してあげる
まず1について。
これは単なる経験則なんですが、「この問題が分からない」と言われた時は、ざっくり以下4つのパターンのどれかに落とし込めることが多いです。
・問題文が読めていない、問題の意味が頭に入っていないから「分からない」
・前提となる知識、前提となる技術が単純に足りていないから「分からない」
・解法を既知のパターンに落とし込めないから「分からない」
・解法の構造が複雑で、解釈出来ないから「分からない」
一つ目は、「そもそもそれが何をする問題なのか、何を問われているかが分かっていない」というパターン。
問題が読めてない、ってヤツですね。
文章題で多いですが、単純な計算問題なんかでも時々発生して、その場合は2番目に繋がることが多いです。
これは、「生徒と一緒に、まず何を聞かれている問題なのかを確認する」ことによって大体発見出来ます。問題を図示することで解決することが多いです。
二つ目は、「もっと前の学習段階の前提知識や技術を取りこぼしているから、途中で詰まってしまっている」というパターン。補習塾では一番多いヤツです。
これについては、以前以下の記事でも書きましたが、「解き方をステップ化して、最初の方から順番にやっていく」ということで発見出来ることが多いです。以前の分野に戻っておさらいすることで解決します。
参考:塾講師時代、子どもの「勉強わからない」に対処するうちに学んだこと
三つ目は、「自分が知っている解き方のどれに落とし込めばいいか、ということが自分の中で繋がらない」というパターン。
教科を問わず、問題を解く時には、「習ったやり方に落とし込む」ということが重要です。
既存の守備範囲に引き込んでしまえば、戦い方も分かるというもの、「既存の知識のどれを使えば解けるか」という判断ってキモになります。
複雑な問題でも、中身をバラしてみれば、大体は過去にやったことの組み合わせなんです。
で、見慣れない問題では、「どれを使えば解けるのか」ということが判断出来ない、ということがあります。それが「分からない」になってしまう。
これについては、「この問題は何を使って解くかな?」ということを確認することで発見出来ることが多いです。
問題のパターンと解き方のパターンを細かく紐づけることで大体解決します。
四つ目は、「解き方のステップ数が多くってキャパシティを越えてしまっている」というパターン。
これも算数の文章題で多いんですが、解き方自体が複雑だと、「一つ一つのステップは理解出来ても、全部合わさると許容量を超えてしまう」ということが割と頻繁に起きます。
これについては、上の三つをクリアした上で、解き方を1ステップ1ステップ追っていくことで発見出来るケースが多いです。解き方を小分けにして一つ一つ区切ることで解決します。
教科によっても変わってきますし、細かく分類するともうちょっと色々細分化出来るんですが、この4つのどれかに当てはめることで、大体の「なんで分からないのか」はカテゴライズ出来ることが多いです。
「なんで分からないのか」を自己分析する時にも使えたりします。
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もう一つ重要だと思っていたのが、「分からない原因の明示」です。
上でも書いたんですが、生徒さんにとって「自分が分からない理由」って謎なんです。
なんで分からないのか、が一番分からない。原因が不明なら、「自分が出来ない」ことしか責める先がない。
だから、「分からない」が単純に「自分を責める言葉」になってしまうんです。
だから、
「君が分からないのはこれが原因なんだよ」
「だから、君自身が悪いわけじゃないんだよ、ちゃんと原因があるんだよ」ということを明示してあげる。
これによって、生徒自身も自分を責めないで済むようになる。
これは多分、私のやり方の中での一つのキモだったと思います。
「何故分からないのかを理解して説明してくれる」人って案外少ないんですよね。
「分からない原因の明示」を繰り返すことで自信を回復してくれた子、結構いました。
子どもにとって、「分からない」って正体不明の強敵なんです。だから、その正体を分かるようにしてあげる。
これ、今でもとても重要なことだと思っています。
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長女次女は、まさに今小1でして、ちょうど繰り下がりのある引き算の計算に入っているところです。
そこそこ躓きやすい分野でして、実際「分からない」に悩むこともぼちぼち増えてきているようです。
幸いなことに、長女次女はまだ勉強に対する苦手意識が出来ていませんので、「分からない」を掘り下げて解決することは割と容易です。
苦手意識がまだ出来てないと教えるのすげえ楽やなーとか思っているところです。早い段階でフォローするの大事。
この先も、出来るだけ勉強への苦手意識を作らないようにフォローしてあげたいなーと思っているのと同時に、「分からない」に悩んでいるたくさんの子どもたちが、悩みから抜け出すきっかけを掴めればいいなあ、と思っている次第なのです。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Caroline)