ちょっと前に、「何ものにもなれなかった」と人生を評価する中高年の人に、「真剣に何かになろうとしたのですか?」と質問すると重い沈黙が訪れる、という言葉がバズっていた。
「何ものにもなれなかった」と嘆く中高年に「真剣に何かになろうとしたか」「なにもせず何かになるのは図々しくないか」とオーバーキルする方法の勧めに賛否 – Togetter
「何ものにもなれなかった」と人生を評価する中高年の人に、「真剣に何かになろうとしたのですか?」と質問すると重い沈黙が訪れるのでオススメいたします。「なにもせずに何かになろうとするのは少々図々しくはありませんか」と続けると、さらに効果的。
— フミコ・フミオ (@Delete_All) 2019年2月19日
僕も高校生~大学生の自分に若さしかなかった頃、この「何ものにもなれない自分」というのが怖くて怖くてしかたがなかった。
この感覚の恐怖感は、世間から自分が全く必要とされていないと感じるのに近い。
「お前なんて居ても居なくても変わらん。どうでもいい奴だ」と世界から言われているような感覚は、人の心を著しく蝕む。
当時の僕は心底あの感覚が怖かった。
このまま自分は、何にもなれずに埋没してしまうのだろうか?その恐怖感と、認められたいという自分の中から湧き上がる承認欲求の渇きに身震いしなかった日など無かったといっても過言ではない。
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あの頃から10年近くもの歳月がたった。
僕は医者となり、妻と結婚して家庭を持ち、時々バズが飛ばせるライターとなり、会員が100名を超えるワイン会を運営するようになっていた。
気がつくと、僕の中にあった「何ものにもなれない」という恐怖は消失しており、「承認欲求の渇き」も忽然と姿を消していた。
たぶん、僕は歳を重ねるにつれ「何者かになった」と自分の中で思えるようになったのだろう。
この手の文脈で「何者かになった」人が、いったいどうやって何者になったのかについて語っている文章を読んだ事が僕はほとんどない。
というわけで、今回は、僕がどうやって「何者かになれた」と自覚できるようになったのかについてを書いていこうかと思う。
凡人だからこそ、粘り強く諦めてはいけない
まずひとつ言えるのは、凡人が何者かになるためにはとても長い時間が必要で、おまけに強い継続力が必要だという事だ。
時々、彗星のごとく現れ、一気に世間の話題をかっさらっていくような天才もいるにはいるが、そういうタイプの「何者」には凡人はなれるとはあまり思わないほうがいい。
具体的な話をしよう。
僕は今現在32歳だが、まず医者になるために学生時代を含めれば合計10年近い時間を費やした。
そして医者になった後も、7年近くもの期間、病院に勤務して時間を使った。おかげで最近ようやく専門家として看板が持てるようになった。
僕は男子校にいる間に女子への免疫が完全に消失していた事もあり、まあ端的にいうと全然モテなかった。
だから今の妻と付き合うまでに都合で10人近いの女の子にフラれた。
何人もの女の子にこっぴどく振られるという、みっともない姿を晒しはしたけれど、結局最終的には何とか今の妻と付き合う事に成功し、結婚もできて家庭も持てた。
ライターになるまでには、合計で10年近い時間を費やした。
高校生の頃から、コツコツと無料でブログを書き続け、原稿料をもらえるようになったのはここ3年ぐらいの話である。
原稿をもらえるようになっても、毎週欠かさず記事を書き続け、つい先日、Googleについて書いた記事がめちゃくちゃバズって、タイにまで記事が拡散するぐらいには成長した。
ワイン会も、企画や店の予約、人数集めなどの面倒な部分を全部自分が請け負い、かつ今にいたるまで儲けをほぼ出さず、5年もの間これを継続している。
今ではありがたいことに会員数も100人を超え、ツイッター上で会を告知すれば2~3日で定員が埋まるようになった(誰でも参加可能なので、興味ある方がいれば是非ともTwitter経由で来てください。お待ちしております)
これが僕が今の所築き上げてきた業績のようなものだ。
こうかくと「なんだよ、自慢話かよ」という風にみえるかもしれないけどトンデモナイ。
結果だけみればそう見えるかもしれないけど、過程は本当に散々だった。
思い返せばここにはとても書けないレベルの酷い目にもたくさん遭ったし、恥もたくさんかいた。誹謗中傷も本当にたくさん喰らった。
とにかく全部どうにかなるまで決して辞めなかったというだけである。結果だけ見ればキレイだけど、中身はまあ、それはそれは酷いもんである。
ガチャは当たるまで引けば、実質タダ
かつてソシャゲーのガチャを称して
「ガチャは当たるまで引き続ければ、実質無料」
というのを聞いて大笑いした事があったのだけど、これはこと「何者かになる」という事についてだけ言えば、まさにこの通りである。
何者かになるためには、とにかく当たるまで徹底的にガチャを回し続けるしかない。
当たらなければ永遠の0だ。けど、逆に言えば当たれば永遠の1である。
1/2なんてこの世には存在しない。0か1しかないのが、この世界なのである。
冒頭ののリンクで紹介したフミコフミオさんは「何ものにもなれなかった」と人生を評価する中高年の人に
「真剣に何かになろうとしたのですか?」
「なにもせずに何かになろうとするのは少々図々しくはありませんか」
と聞いて相手を絶句させたというけれど、僕個人の経験からいっても、身も蓋もないけどこれは事実だ。
英語が喋れるようになりたかったら、勉強本を読むのではなく、恥を捨てて外人と毎日英会話をするしかない。
痩せたいと思ったら、ダイエット本をジプシーするのではなく、断食か運動するしかない。
恋人が欲しいのなら、恋愛本を読み耽るのではなく、フラレるのも覚悟して成功するまでカミカゼ特攻隊をやるしかない。
残念ながら、考えてるだけでは思考は現実化しない。
凡人は、いや凡人だからこそ、傷つく道をあえて選び、やるしかないのである。
偉大な業績をあげる必要はない。複数分野でコツコツとヒットを飛ばせば十分
何者かになるというと、なんだか凄いことをしなくてはいけないようにもみえるかもしれない。
けど、僕自身についていえば、そんな大それた事は自分の自意識の安定には必要なかった。
僕は傍から見れば並レベルぐらいには能力はある方かもしれないけど、偉人になれるような突出した才能なんて1つも持っていない。
運良く医者の世界には入り込めたけど、残念ながら医者の中では能力は並レベルだ。
世界的に有名な医師と比べると、まさに石ころみたいなもんである。
ライターとしても、まあ活動はできてるけど、トップクラスにいるわけでもない。
ワイン会だって、僕よりも運営規模が大きい人なんて山のようにいるだろう。
現代では、どれか1つの分野で大成功して何者かになろうとするのは、物凄くコスパが悪い。
野球で殿堂入りする為にはイチローレベルにならないといけないし、漫画家で伝説になるためにはドラゴンボールとかワンピースクラスの業績を出さねばならない。
けど、そんなのは凡人には無理だ。
じゃあ凡人はどうすればいいかといえば、分散投資しかない。
ホームランが打てないのなら、ヒットを複数分野で打てばいいだけの話である。
凡人だからこそ、小さなヒットで十分なのだ。そんなもんで結構、人は満足できるものである。
最初は誰だって惨めなもんである
とまあ、どこにでもいるような人間である僕が「何者かになれた」と自認できるようになった過程は以上である。
何者かになりたかったら、情報教材を買ったり、ネットのサロンになんて入る必要はない。上に書いた事が全てである。
徹底して傷つくことを覚悟して続ける。それだけである。「当たるまで回せば実質タダ」を合言葉に、各自頑張っていくしかない。
思い返すと、ガチャを回し始めた当初はとにかく酷かった。
受験勉強は偏差値は35からのスタート。
女の子には何度もこっぴどくふられ、ブログのアクセス数も数ヶ月やってて1日5人とかである。
凡人なんて、そんなもんである。みっともなく生き恥をさらして、それでも血を流しながらもがくのをやめず、ずっとガチャを回し続ける。
この作業はぶっちゃけチョー辛い。けど、これをやらないと「何者にもなれなかった」という自責の念だけが延々と残り続ける、何者でもない歳をとった中年になるだけである。
やるも地獄、やらぬも地獄。それならやった方が、まだましじゃ、ないですかね?
さあ、あなたも何者ガチャを回そう。
大丈夫、当たるまでやれば、実質無料だから。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように
noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki
(Photo:Dick Thomas Johnson)