以前に聞いて妙に感心した言葉の一つに

「夫婦関係はどっちかが勝ちすぎてはいけない。強いほうが適宜負けてあげる事が大切なんだ」

というものがあった。

 

この言葉の意図する事を解説すると、口のうまいヘタというのは筋力みたいなもので、フラットに勝負をし続ければ、いつまでたっても強いほうだけが延々と勝ち続けるに決まってるだろうという事だ。

筋骨隆々の人と、ヒョロガリの人が腕相撲を100回やったとして、ヒョロガリの人が1度も勝てない事を考えてもらえばわかりやすいだろうか。

 

夫婦喧嘩もこれと全く同じで、強い方が適宜手心を加えなかったら、弱い方はいつまでたっても負け続ける。

そんな一方的なゲームをやらされ続けて、弱いサイドが楽しいはずがないのは言うまでもない。

 

上に書いた言葉を聞いてから「これは確かに良くない」と思いなおし、僕はかなり意図的に妻との口喧嘩で折れるようになった。

 

最初の頃はこの自分から”負け”をわざわざ選ぶことに強い違和感があったのは事実だが、最近「ああ、これは外交と全く同じで、清濁併せ呑むようなものなのだな」と”わざわざ自分から負ける”という一見すると非合理にもみえる行いにも整合性が見いだせるようになってきた。。

 

勝ち続けるよりも大切な事が、確かにそこにはある。

もっといえば、夫婦関係は継続して続くこと自体に意味があるのだ。

 

 

日韓をみてると、まるで夫婦だなと思う

最近の日韓をみてても実に思うのだけど、夫婦関係は外交と本当によく似ている。

 

私達ヒトは「お互い人間なんだし、話し合えばわかるはず」と思いがちだけど、はっきり言ってこれはかなり傲慢な考えである。

だいたいの場合において、多くの人がいう「話し合えばわかる」は「相手が自分の都合のいいような思考回路になってくれる」という概念に非常に近い。

 

例えば、僕はかなりのロジカル原理主義なのだけど、一方で妻は徹底した共感第一主義だ。

なんでも理詰めで徹底してモノを考える僕とコミュニケーション自体に価値を見出す妻は、同じ日本語を話しているにも関わらず、尊重ポイントが全く異なるので、かなりの頻度で意見が衝突する。

 

こういう時、いくらお互いが話し合ったところで、どちらかが相手の思想に隷属するだなんて事はありえない。

僕は共感第一主義者には絶対になれないし、妻もロジカル原理主義なんて絶対に採択しない。

せいぜいいいとこ「私達はわかりあえない事がわかりましたね」ぐらいが関の山だ。

 

日韓の歴史観もこれに近い。

詳しいことは”日本人が知るべき東アジアの地政学(ものすごく面白いのでオススメ)”あたりを読んでほしいのだが、なんでこんなにも話が噛み合わないのかといえば、日本は西洋文化ベースのファクトを元にした国際協定という思考で対話を持ちかけてるのに対して、韓国の歴史観は中華思想ベースの朱子学を基盤にしたイデア的なものなので対話を返している。

 

だから日本の考えで韓国にモノを要求しても、韓国側からすれば原理原則自体がそもそも違うので、会話自体が成り立たないのである。

島国である日本と半島国家である韓韓の思想は男脳と女脳ぐらい違う。

 

わかりあおうだなんていう「相手が自分の都合のいいような思考回路になってくれる」事を期待するのがどれだけ馬鹿げているか、よくわかるだろう。

 

交易は続ければ豊かになる

「なんでわかりあえないような相手と交流しなくちゃいけないんだ?国交なんて断絶すればいいじゃないか!」

こう息巻く人もいるかもしれない。けど、それでも交易は続けるべきなのだ。この歴史や経済の原理原則からも明らかである。

 

私達が生きる社会は、高度にグローバル化した資本主義社会である。

このグローバル資本主義だけど、現代レベルでつながりが成立すると恐ろしいレベルで経済が発達して人は豊かになる。

 

例えば、村に私とあなただけがいたとしよう。

この段階では、仕事なんてせいぜい狩猟か農作物を育てる事ぐらいが関の山である。

けどこれが村単位に人の数が増えれば、分業をより推進できるようになり、私達はもっともっと豊かになれる。

 

ある人は医者の役割に特化できるようになるし、ある人は農作物を育てる事により特化できる。

またある人は料理屋をひらいて、美味しい料理を作る事により専念できるようになる。

 

このように、人の数が増えて、交流する人の数が増えれば増えるだけ、人間の生活はより徹底して分業化を加速できるようになる。

結果、人は圧倒的に豊かになるのだ。

現代社会が農耕社会と比較して尋常じゃなく豊かなのは、グローバル化の恩恵なのである。

 

実は日本と韓国も、普通の人が考えている以上に密に仕事が複雑に絡み合っており、国交をやめると、ものすごく色んな人が困る事になる。

国交断絶をわかりやすく言い換えれば、村で豊かな文化を享受している人に対して「今から村は解散だ。皆で野生に戻るぞ」というようなニュアンスに近い。

 

国交というのは、豊かな社会の基盤なのである。

それを拒絶するのは豊かな社会から貧しい社会へと逆戻りするようなもので、思想が少し違うからといって国交を分断するのは、選択的貧乏へと私達を加速させるだけなのである。

 

完璧にわかりあえなくても、一緒には居られる

僕と妻は確かに相手の宗教には絶対に隷属しないけど、それでもお互い暮らしていると様々な楽しい思い出が蓄積していく。

例えばこれまでフランスやスペインなど、様々な場所に旅行を楽しんできたのだけど、これは一人では絶対に作ることができないモノの一つだ。

 

人間、墓場に持ち込めるのは記憶だけである。

僕はこの豊かな思い出こそが、夫婦関係で得られる最高の成果物だと思っている。

「人は一人では生きられない」というのは現代では嘘だが、「人は一人では心豊かに生きられない」というのは誰もが同意する事実だろう。

 

実は人生で最も長い間、同じ時間を過ごすのは親兄弟ましてや子供ではなく、配偶者というもともとは血のつながっていない他人だった人である。

親兄弟子供とはせいぜい30年ぐらいしか一緒に生活しないけど、配偶者は下手すると60年超は共同で生活する。

文字通り、思い出を生み出す量が”桁違い”の相手といえよう。

 

そんな”桁違い”のポテンシャルを秘めた配偶者、けど残念ながらやっぱり他人だからなのか、これまた思想が完全に一致する事は自分の周りを観測していても、まずないなと思う。

 

ここで相手を自分と同じ思想に染めようと思うか、それとも徹底して対話して「私達はわかりあえない事がわかりましたね」ともってくかが、良好な夫婦関係を続けられるか否かのポイントだろう。

そして適宜、どちらかが”助け合い”の心で折れ合って、持ちつ持たれつの関係を続けていければ最良である。

 

国も夫婦も、完全にお互いをわかりあう事は非常に難しい。

けど、そんな事をせずとも、お互いを尊重さえできれば、一緒に清濁併せ呑んで上手にやっていける。

 

男女関係も国交も、シンプルに考えてしまうと「意見が合わない奴となんて一緒になる理由がない」と性嫌悪や反日、反韓のようなポピュリズムの罠に陥りがちだ。

 

けど、豊かさの源泉は確かにそこにあるのだ。

私やあなたがここにいるのも有性生殖が今まで続いたからこそだし、豊かな文化を享受できているのも様々な国と国交が行われているからこそである。

 

「白河の 清きに魚も住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」

 

日本にもかつてこのように述べた歌人がいたけれど、男女も日韓も、善悪二元論のような勧善懲悪の物語に落とし込むのではなく、清濁併せ呑むような感じでカオスである事を受け入れて、複雑な世の中を豊かに生きてゆきたいものですね。

 

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高須賀

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(Photo:Fort George G. Meade Public Affairs Office