身も蓋もない話をします。

先日、fujiponさんが書かれた、こちらの記事を拝読しました。

結局「とにかく面倒くさいことを進んでやる」人が、組織で評価される。

「そんなに働きたくはないけれど、肩身が狭い思いをするのは嫌だなあ」というのが僕の本音なのですが、そんな「いいとこどり」は難しいのです。

「権利」が整備されたとはいうけれど、まともに仕事もせずに自分の権利ばかり主張する人がうまくやっていけるはずもありません。

『働かない技術』という本の紹介を主軸にした内容で、大変分かりやすかったですし、面白そうだったので私もポチってみました。

まだ届いてませんが。(漫画以外の本は電子書籍ではなく実物で欲しい派)

 

fujiponさんの所感についても全体的に首肯するところなのですが、一点だけ、ちょっと違う感想をもった点がありました。

全体の流れの中では傍流の部分なので申し訳ないんですが、「面倒くさいことを進んで対応して部長に抜擢された」という人の話についての部分です。

みんなが効率的な働き方を追い求める時代だからこそ、こういう「誰かがやらなければならないのに、みんなが『自分にはメリットがないから』とやりたがらないことを進んでやってくれる人」が評価されることもあるわけです。

これなんですけどね。

 

身も蓋もない話ですが、「誰もがやりたがらない仕事を進んでやって評価される」には、ある程度のテクニック、ないし戦略が必要です。

ただ「誰もやりたがらない」仕事をひたすら拾って真面目にこなしているだけでは、残念ながら評価につながらない可能性が高いです。

 

何故かというと、評価されるためには、当然ながら評価する立場の人に認知される必要があるから。

それも、「あいつは誰もやりたがらないが、実は重要な仕事をこなしている」という認識つきで。

 

いや、道徳論としては、「みんながやりたがらない仕事を進んでやって、いつか誰かが評価してくれる」って完璧に正しいんですよ。

日の当たらない場所で必死に頑張る、縁の下の力持ち。

 

誰からも評価されていなかったその人を、ある時会社の偉い人が見かけて、「実はこの仕事はあいつがやっていたのか!」と認識される。

今まで報われなかった努力が、ある時の評価で突如大幅なプラスポイントになる。

美しいですよね。

とても良い話ですし、世界そうなって欲しいとも思います。

 

例えばここが教育現場であれば、上のロジックでなんの問題もないんです。

ただ、現実問題としては、「みんながやりたがらない」仕事にはそれぞれ皆がやりたがらないだけの理由があるものでして、代表的なものとしては以下のような例があります。

・仕事自体の重要性が認識されておらず、アピールポイントにならない

・ただひたすら面倒くさく、される評価の割に合わない

・難易度が非常に高く、高い能力的コスト・時間的コストを必要とする

・本当に誰も注目していないフィールドの仕事である

こういった仕事を積極的に拾うのであれば、やはりそれなりの戦略は持っておいた方が、結果的に「美しいエピソード」を再現できる可能性は高まるんじゃないかなあ、と、少なくとも私なんかは思うんですよ。

 

例えばの話、fujiponさんの文章では、こんなエピソードが引用されています。

とにかく面倒くさいことを進んで、腹を括ってやった。たとえば全体集会の時に、マイクの調子が悪かったとする。

その時、自分は直しにかかった。もちろん、後ろでふんぞり返っている同僚もいた。

これ、全体集会という場面の話な訳ですよ。

つまり、社長役員始め、社員が皆その場に集まっている。「調子が悪いマイクを直す」ということがどの程度の「面倒くさい仕事」なのかは置いておくとして、少なくとも「全社員の目がある場所」での話な訳です。

 

「あいつは皆がすぐに動かない時でもぱっと動くことが出来る、使えるヤツだ」という評価を、それも経営層の目の前でアピール出来る場面だった、ということなんですよね。

それは、一般的に言うところの「誰もやりたがらない面倒くさい仕事を進んでする」ということのイメージとは、もしかするとちょっと違うかもな、と私は思ったんです。

 

***

 

大変嫌らしい話で誠に申し訳ないんですが、「誰もやりたがらないような面倒くさい仕事を進んでやって評価される」為には、恐らく下記の諸要素の内のどれか、出来れば複数を満たす当てを作っておいた方がよろしいのではないかなあ、と思うんです。

・その仕事が「実は必要不可欠な重要なものである」ということが何らかのタイミングで評価者に認知される

・自分がその仕事をこなしているということが、何らかのタイミングで評価者の耳に入る

・自分の仕事ぶりを目にした人が、評価者にそれをエスカレーションしてくれる

・その仕事が為されないことによって生じるリスク、コストがどこかのタイミングで可視化される

これらは勿論、職場環境によっても変わってきますし、その仕事内容によっても、人間関係によっても変わってきます。

一概に「どんな風にやろう」ということをノウハウ化することは難しいです。

 

ただ、ある程度一般的な話をするならば、「当事者以外からのエスカレーション」というのは重要な要素の一つではありまして。

あの人があんな仕事してましたよ、あの仕事がないとホントは回りませんよ、という話が、複数のルートから上に上がった場合、評価者にはかなり重大な圧がかかることになります。

 

その点、「評価者だけではなく、その周囲にも自分の働きを認知してもらう」ということは、一面意識しておいた方がいいかも知れないです。

 

私の同僚には非常にその辺要領がいい人がいまして、彼が言うには

「会社には必ず、色んな噂話を色んな人と話すという形で、情報のハブになっている人がいる」

「自分からアピールしにくい場合には、まず情報のハブになっている人を探して、その人と仲良くなる」

「で、お互いに仕事の大変さを話し合う(愚痴ではなく)という形で、自分が何をしているか知ってもらう」

「そうすると大抵評価者に届く」

ということでして、これには私もなるほどなあと思ったんですが。

 

まあ、仕事なんだから、別に日の当たらない場所でわざわざ仕事をする必要はなく、直接「ここに日を当てろ!」と会社にアピールしてもいいんじゃないかとは思うんですけどね。

自分がコツコツやっている仕事の重要性をアピールするのは、ビジネスパーソンとしての重要な要件でもあることですし。

それを拾えるかどうかはマネージャーの器でして、どうしても評価してくれないならエスカレーションのルートを再検討した方がいいです。

 

***

 

ただ、更にこれは上記の「いやらしい話」以前のちゃぶ台返し的な放言なんですが、「誰もやりたがらない面倒くさい、けど重要な仕事」を進んでやって、かつ評価されていない人がいたとしたら、それは実はマネジメント層の問題なんですよね。

部下の働きやこなしているタスクを正しく認識して、その重要性に応じて適切に評価するのがマネージャーの一番重要な仕事なのに、それほっといて何やってんだよ、という。

 

会社の偉い人がたまたま見かけて評価する前に、ちゃんと直属のマネージャーが評価しとけよって話ですよね。

「ただ面倒くさいだけで重要でない仕事」だとしたら、その仕事はそもそもカットするべき対象ですし、それもまたマネージャーの仕事です。どっちにいっても「マネージャー仕事しろ」という話になりかねないんですよ、これ。

 

結局のところ、「誰も注目しない面倒くさい仕事をひたすらこなして、けど評価されない」という人がある時評価されるという、そういう美談が存在する裏には、実はマネージャーの怠慢がありますよと。

どちらかというとマネジメント層に属する人間としては、そもそもそういう「美談」自体発生する必要がない環境を整えていかなくてはなー、と、そんな風に思った次第なんです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

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(2024/1/22更新)

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Heather Kennedy