医大に入って驚いた事の一つに、入学者のほとんどが有名中高一貫校出身者だったという事がある。

話を聞けば、誰も彼もが中学受験経験者。

その圧倒的現実をみて、僕は心の底からこう思った。

 

「自分に子供ができたら、絶対に中学受験をさせよう」

 

そうすれば、自分のように受験で苦労をする事はなかろうと思ったのである。

 

気がついたら小学校の同級生と仕事をしていた

身の周りにいる人間のほとんどが有名中高一貫校出身…

これは何も医大に限った話ではないようで、上場企業でも似たような話が結構あるのだという。

 

ある有名な商社に入った友人の話だ。

彼は都内の有名塾出身なのだが、会社に入ってしばらくした後、小学校の頃に塾でみた事がある人間がそこかしこにいる事に気がつき、本当に驚いたのだという。

人は自分と共通の経歴を持つ人間に何らかの愛着を覚える。

彼らは懐かしさもあってか再び緩い繋がりを持ち始め、気がつくと仕事におけるゆるやかなネットワークが形成されていたのだという。

 

「やー、さすがに塾の同級生と10年、20年後に同じ業界で仕事をやりあうとは思わなかったわー」

 

僕はこれを聞いて呆然としてしまった。

いくらなんでも世間が狭すぎだ。

小学校の時点から色々な人脈が形成されて、それが後に仕事で役立っているだなんて、できすぎにも程がある。

 

「そりゃ中学受験も白熱するわ…だって受験生自体が、社会に出た後でこんなにもメリットを再実感してるのだもの…」

 

動物性だけではお金は稼げない

世間一般の受験勉強に対する風当たりは強い。

つい先日も我が国で、夜間出身の苦学生をやった人間が首相に上りつめたというサクセスストーリーが好意的な文脈で流れたが、大衆の勉強に対する嫌悪感はかなりある。

 

「小さい頃からガリガリ勉強なんてやったら人間が曲がる。子供は外で泥まみれになって遊ぶべきだ」

「中・高で異性と付き合ってない奴はロクなやつにならない」

 

これらの意見は、動物として人間を評価すれば、確かにそうだろう。

だが現代社会は動物として順応するだけでは上手に生き残れない。

 

動物性は悲しい事に、お金稼ぎにはあまり役に立たない。

現代社会でお金を稼ぐためには、どうしても知的な振る舞いが必須となる。

そして残念な事に…受験勉強はお金を稼ぐのにとても役に立つ。

 

中学受験は役に立ってしまうのが問題

先に述べた通り、現代社会でいい暮らしを送りたいのなら、知的社会を上手に乗りこなすのは既に必須条件になっている。

そしてその知的仕草を一番学べるのは、実は有名中高一貫校だ。

 

例えば下のブログによると、日本の大手法律事務所に所属する弁護士の出身中高のほとんどが有名中高一貫校出身者だという。

嘘だと思うのであれば、日本の大手法律事務所に所属している弁護士の出身中高を聞いてみてください。

 

日本の最大手の弁護士事務所である西村あさひ法律事務所に所属している弁護士の出身大学シェア一位は東大です。

で、東大に入学しているのは中高一貫校出身者のシェアが非常に高い。

そして、中高一貫校に入学しているのは大手塾出身者のシェアがもはや5割を超えている状況です。

開成中学はサピックスのシェアが7割で、灘中学は浜学園系のシェアが6割です。

 

中学受験の勉強はあくまで点取りゲームであって、それは人生で得られるものがないと言う人がいるのは知っているのですが、私はそれが大きな勘違いだと、彼ら、彼女らを見ていて思います。

 

鉄緑会出身者は非常に要領がいいのです。そして、お金を稼ごうとしたときには要領の良さというのは非常に重要です。

<参考 中学受験は役に立たないのが問題ではなく、役に立っちゃうのが問題 – 斗比主閲子の姑日記

大手法律事務所の仕事量は一般人では想像もつかないレベルでボリュームがある。

それこそ現代でも24時間働けますかを地でやってるのがあの界隈だ。

 

そんな業務量、普通の人間はまずこなせない。が、有名中高一貫校出身者なら話は別だ。

彼らは中学・高校時代と、膨大な学習範囲の中から最善・最効率を抽出するという、それこそ大人の社会の先取り学習を既にやっており、修羅場は既にもう経験済みなのである。

 

彼らは仕事におけるネットワークを事前に形成しているのみならず、大人になってからの効率のよい仕事術も中学・高校で既に履修済みと、文字通り、資本主義のサラブレットなのだ。

 

とはいえ、サラブレットになる前に足を挫く奴らもそれなりにはいる

と、まあこういう上手くいった事例をあまりにも見すぎたという事もあって、最近まで僕は中学受験にかなり肯定的だった。

それなりの金銭的な負担や親の負担はあるだろうが、それを補って余りあるほどにメリットがあるとしか思えなかったのだ。

 

しかし、最近になってその考えにも変化が出てきた。

いわゆるサラブレットの苦悩のようなものも、いくつか耳にするようになったのだ。

 

この世には、東大に入らないと同窓会に楽しく行けない社会がある

森林原人さんという筑波大学附属駒場高校出身でAV男優をされている方がいる。

彼が己の人生を振り返って語るインタビューがあるのだけど、この文章を読むと進学校の呪いのようなものを感じざるをえない。

 

「東大に行かないで、同窓会に楽しく来るやつは少ない。」

<参考 「全員が東大に行くって雰囲気でした」偏差値78のAV男優・森林原人が振り返る“僕が筑駒生だった頃” | 文春オンライン>

 

これはインタビュー中にポッと出てくる一言だが、なんていうか物凄い圧がある。

あまりにサラリと出てくるので多くの人は気にもとめないかもしれないけど、これはもはや呪いに近い概念である。

 

日本一の高校に入学するという権利を手に入れるという事が、東大に行かないと同窓会に楽しく行けない呪いをセットで手に入れるという事になるだなんて、世の中というのは本当に難しい。

 

人間関係もいろいろ大変らしい

呪いは学歴だけにとどまらず、人間関係にもあるという。

以下の文章では、筆者は学内の濃密すぎる人間関係に色々と苦労したと語っている。

実在の異性がいなくとも、先輩をめぐって、友人をめぐって、そして、相手が持っているように思えるものをめぐって、諍いと妬みと嫉みが発生した。

 

それはフィクションと違って、みじんも美化できるものではなく、中には、心身が傷つききって学校を去ることを選ぶ人もいた。

わたしも、ストレートには進学せず、公立高校を受験しようかと真剣に考えていたくらいだ。

<参考 わたしが女子校を礼賛したくない理由 #それでも女をやっていく | WANI BOOKOUT|ワニブックスのWEBマガジン|ワニブックアウト

彼女は同学年230人程度の比較的人間関係が密な女子校出身との事だが、確かにその規模だと最初に人間関係につまづいてしまったら、6年間いろいろと大変な思いはするだろう。

僕も大学6年間、1学年100人の割と小規模な社会で過ごしたのだが、最初の最初に色々とやらかしてしまい残りの学生生活でかなり苦労した。

 

負のレッテルが貼られた状況下でのムラ社会生活は本当に地獄である。

プライドが強い連中に囲まれるとなると、なおさらだ。

 

気の合う人間と日々を過ごすのは最高だ。が、その逆…気の合わない人間と毎日顔を合わせるというのは本当に苦痛である。

それが中~高の多感な時代の6年間で続いたとしたら…僕にはちょっと耐えきる自信は無い。

うまくいった例をみれば中学受験を褒めたくもなるけれど、目に見えない大変さはやっぱりあるんだなぁと、これらの文章を読んで本当に思わされた。

 

リセットボタンがあったから、やってこれたのかもしれない

人間関係というのは本当に悩みのタネが尽きない。

特に若い頃は自意識過剰で老獪さが足りてないから、なおさらである。

 

そう考えると、学校システムは色々な工夫がみえてくる。

気が合わない友人やクラスの中に置かれ、居心地が悪い思いをする事は多々あったが、席替えやクラス替えといったイベントがあったから、ある程度のゴールは見据えてなんとかやってこれた。

 

「あともうちょっと耐えきれば…この居心地の悪い空間から抜けだせる…」

 

振り返ってみれば、こんな事を考えて日々を生きていた事は確かにあった。

子供は無力で、己の力ではどうすることもできない。

だけどそんな理不尽極まりない状況でも、タイム・リミットがやってきたら、リセットボタンが押される…

 

こんな希望があったから、あの苦しい学校生活もギリギリなんとか耐えられた。

こうして振り返ってみると、あの息苦しさを通じて僕の中では忍耐というものが形成されていったのかもしれない。

 

ヒトの海を泳ぎ切る為の知恵

話が長くなってきたのでまとめよう。

結局、僕が中学受験に関して思ったのは、学歴コンプレックスが必要以上につくといった呪いの付与があったり、人間関係ガチャに関してはそこそこハイリスクで、かつリセットボタンが押しにくいといったデメリットがあるのだなという事である。

 

冒頭で書いたような小学校の同級生と仕事をグルグル回しているような彼は、たぶん小学校の席替えで最高の席を引いた状態がずっと続いたといえよう。

その状態が持続するのなら…間違いなく人生は最高だ。

 

いい人間関係、素晴らしい学習環境。

それらが揃いも揃って地続きでいったのが…僕がかつて見ていた、中学受験のサラブレットが足を折らずに走り抜けた時の姿だったのだ。

 

けど、世の中そう上手に事が運ぶわけではない。

入学後に勉学で失敗して学歴コンプレックスの呪いにとらわれたり、入学後に最悪の席替えのような環境にぶち当たり、かつ人間関係のリセットが6年間望めないという最悪の相を経験する人間だって、当然いるわけである。

 

もちろん若い頃に失敗を経験したからといって、それで即・人生が駄目になるというわけではない。

だが、それで色々と潰れてしまう人も、それなりにはいるだろう。

 

人脈は…確かに大切だ。

効率のよい仕事術も…間違いなく大切だ。

けど、生き抜く事は…もっと大切だ。

 

頑張って、当たりを引けばサラブレットになれるかもだけど、ハズレを引くかもしれんわけだしなぁ……。

子供が生まれたら中学入試を経験させようと思っていたけれど、やっぱりもう一度考え直した方がいいのかもしれないなぁと、最近また考え直すようになってきてしまった。

 

人生は難しい。

 

 

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(2020/10/7更新)

 

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

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noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

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