前回、学校内でイジメが起きる原因について書いた。
簡単に内容を要約すると、イジメは個人のマインドによるものではなく、閉鎖された空間に密集させられ高ストレス状況下に置かれれば、誰だって行ってしまう可能性があるというのが記事のテーマだった。
閉鎖された空間に人間を密集させると、人は人をいじめるようになる | Books&Apps
実はこれに限らず、人は意外と環境に影響をうけやすい。私達は自由意志を持っていると誰しもが思っているけれど、実は人と人との距離感で心のあり様は相当に左右される。
というわけで今回は心と身体の距離感が人の心に与える影響について書いていこうかと思う。
とある学園都市の自殺率が劇的に減少した理由
筑波研究学園都市という場所がある。ここは国家プロジェクトにて、高水準の研究と教育を行うための拠点として、茨城に建設された街だ。
アメリカのアイビーリーグのような大学を中心とした知識人が集う良き学園都市を目標として作られたのだと思うのだけど、一つの大きな問題があった。どうも研究者の自殺率が全国平均より高いというのだ。
これはつくばシンドロームの名で一部の人には有名な話だったようで、当時の学園関係者はこの問題の解決に深く頭を悩ませたのだという。
<参考 http://www.tsukuba.ac.jp/students/campus/174/2.html#s2-B>
しかし今現在、このつくばシンドロームは現状では相当改善したようで、現在では筑波大学の自殺者数は全国平均とそう変わらない数値であるという。
この問題が解決した経緯について、研究学園都市とメンタルヘルスの関係について論文を発表している笹原信一朗氏は先の記事でこう述べられている。
「研究学園都市が作られた当初、周囲は畑ばかりだった。また合理性を追求した都市設計により、大学・研究所とショッピングセンターが引き離され、ストレスを解消する場がなかった。」
「陸の孤島と称されるほどの交通の不便さも拍車をかけた。だが85年のつくば科学万博をきっかけに開発が進み、町の発展とともにつくばシンドロームは影を潜めていった。」
「つくばエクスプレスも開通し、町が明るくなって住み心地が良くなった。陸の孤島を背景とした『つくばシンドローム』は過去の話になってきているのでは」
僕も複数の筑波大学出身の医者とつくばシンドロームについて話した事があるのだけど、彼等が口をそろえていうのがつくばエクスプレスの開通で心の余裕が相当変わったという事だった。
「筑波大生の多くは大学に張り付いて生活しているので、交友関係で行き詰ると逃げ場所がなかった」
「良い意味で逃げることが難しく、追いつめられてしまった時に逃げる場所がなかった。けどつくばエクスプレスが開通してからは、割と気軽に外の街へと出ることができるようになったおかげか、相当心のあり様が楽になった」
「逃げ場所があるって、凄く大切な事だったんだなっていうことがよくわかったよ」
家族やパートナーとも適切な距離感が大切
無縁社会といわれて久しい現代だけど、つくばシンドロームの話は縁が強すぎる社会もそれはそれでキッツーという事を私達に実にわかりやすく教えてくれる。
やはり、どんなに仲の良い間柄であっても、365日24時間ずーーーーっと近接して過ごすというのは厳しいという事だろう。
このつくばシンドロームの例は他の問題にも相当応用が可能だ。最も身近な事例でいえば、家族関係や子育てにもつくばシンドロームとの類似性を簡単に見出すことができる。
例えば昨今問題となっている保育問題はとてもわかりやすい良い例だろう。
「子供は親と一緒に過ごすべき、他人に預けるだなんて親としての責任を放棄している」という人もいるけれど、実際問題ずーーーと一緒に居続けるのは我が子といえども辛い。
もちろん苦にならない人もたくさんいるとは思うし、そういう人はそれでも全然構わない。けど時々親と子も外に出て、適切に距離と時間を置いた方が楽だと感じる人がいるのも、また事実だろう。
共働きか専業主婦かという問題も、この外の世界との距離感で理解すると結構参考になるかもしれない。
僕はかつて学生時代、実験的に夏休み一ヶ月半を家から一歩も出ずに過ごした事があったのだけど、あれは相当疲弊した。
初めの頃はそれこそ毎日好きなゲームとか漫画を読んで、好きな時に寝て好きな時に食事をする生活が楽しくて楽しくて仕方がなかったのだけど、そんな生活が楽しかったのは初めの一週間だけだった。
その後はずーっとなんとも言えない息苦しさに襲われ続けてたのだけど、今考えてみるとあの苦しさは外の世界との断絶感が原因だったんじゃないかと思う。
この学生時代の辛く苦しい経験から僕は自分の財力の有無に関わらずパートナーも働いた方がお互いの精神衛生が良くなるだろうと思い、結婚後もちゃんと働いてくれる人を妻に選んだ。
今現在も結婚生活が持続している事を考えると、僕にとってはその選択は割と合理的だったのだろう。
というわけであなたも一度、自分の心地よい心と身体の距離感について考えてみてはいかがだろうか。
個人的にはこれを学ぶのに最適な教材として、手塚治虫の奇子を推奨したい。
少々古い漫画ではあるけれど、唯一無二といってもいい実に独特の雰囲気を持つ作品である。御賞味いただければ幸いだ。
(2025/5/8更新)
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松原 亮 氏(株式会社TOKIUM 取締役)
東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。
安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。
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【プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように
noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki
(Photo:syonbori)