疫病の蔓延で、ゲームをする人が増えているという調査結果が報じられている。

(参照:国内ゲーム市場、10年連続成長で過去最高額に コロナ禍で消費時間増/ファミ通ゲーム白書2020調査

 

外食を控えなさい、旅行もダメ、イベントもなし、ではゲームやYouTubeを視聴するよりほかはない。

ということで、私も多数の方々と同じように、ぼちぼちゲームをやっている。

 

以前にも書いたが、最近のお気に入りはフォートナイト。

傑作ゲームだと思う。

凄まじいことに、プロゲーマーが出場する世界大会「Fortnite World Cup」は、賞金総額が1億ドル(110億円)。

世界で最も影響力のあるゲームの一つで、3億5千万以上のアカウント数を記録している。

 

フォートナイトがクッソ難しいのだが

このように数字だけを見ると、老若男女問わず楽しめそうなゲームに見える。

実際、ルールは至極単純だ。

 

1.孤島に100人が同時に飛び降りる。

2.落ちている武器を拾って、最後の一人になるまで撃ち合って生き残る。

 

いわゆる、バトルロイヤル。それだけのゲームだ。

だが、始めて見るとわかるのだが、正直このゲーム、中年の私にはクッソ難しい

 

正確に言うと、最初はプログラムが操作するbotとマッチングするので、そこそこ勝てる。

だが、ちょっと勝ちだすと、今度は人との対戦になる。

すると突如として、まったく勝てなくなる。

 

ひどいときにはゲーム開始2分もたたずにゲームオーバー。

まったくもって、しんせつ……心折設計である。

 

このゲームの難しさの理由はいくつかあるが、私が思う難しさの理由の一つが、「素早く扱わないといけないボタンがめちゃくちゃ多い」点だ。

初心者のうちはせいぜい、やっとこさキャラを動かしてひたすら撃つくらいで、ゲームの醍醐味である「建築」などの余裕は全くない。

 

マルチプラットフォーム、かつ無料でやれるゲームなので、ぜひ皆様も試していただきたいが、あまりにも緊張するゲームなので、プレイ時間数分で、すでに手汗が滝のような状態になり、プレイ後は脱力して放心状態になるくらいだ。

 

YouTubeを見る⇒練習の繰り返し

しかもフォートナイトは、チュートリアル的なものがほとんどない。

「見て学べ」「習うより慣れよ」「死んで覚える」という性質のゲームなのだ。

 

いったいなんで、こんな難しいゲームが流行ったのか、まったく訳が分からない。

……と思ったのだが、これが大変うまくできていた。

 

YouTubeを見ればいいのだ。

 

調査によると、YouTubeのゲームプレイ動画の人気上位は、1位は「あつまれ どうぶつの森」、 2位「マインクラフト(Minecraft)」、 3位「 フォートナイト(Fortnite)」だそうだが、うなずける。(出典:ゲームエイジ総研調査

実際、フォートナイトは上級プレーヤーによる初心者向けの動画が充実しており、知りたいことのほとんどはYouTubeで解決する。

 

とはいえ、初心者向けに丁寧に説明してくれても、実戦でそれを使うのは、地味な練習が結構な量必要で、一緒にプレイしている、ガチプレーヤーの友人と「これは部活……!」と言い合っている。

 

この、YouTubeを見る⇒練習 の繰り返し によって、少しずつ初心者を脱していくのだが、私にはセンスがないのか、プレイ時間が約200時間を超えても、いまだに対人戦ではアタフタしてしまう。下手の横好き、というやつだ。

まあ、楽しめているからいいのだが。

 

「知識」と「スキル」は全く違う

さて、ここからが本題なのだが、こうしてフォートナイトを繰り返しやっていると、改めて「知ってる」と「できる」は全く違うのだな、といまさらながら、痛感する。

 

念のため、定義をしておくと

「知ってる」は単なる「知識」の状態。

「できる」は「スキルとして身についている」状態のことだ。

 

世の中には、「やりかたを知っているが、そのとおり実行できない」ことがめちゃくちゃたくさんある。

 

例えば、フォートナイトでは「壁の右から出て撃つ」のが鉄則である。

これは自キャラクターがほんの僅か、中心から左によっているためで、壁の右から撃つことで、身を隠しながら攻撃することができるためだ。

 

ところが実戦になった瞬間、これをきれいさっぱり忘れてしまう。

開始2分であっさりゲームオーバーになって、改めて振り返ってみたときに気づくのだ。

「あ、今、壁の左から出てたわ。そりゃ撃ち負けるよ」と。

 

「高スキル保持者」の本質

ところが多くの上級者の動画を見ていて思うのだが、彼らは本当に基本に忠実だ。

早く、そして正確に「知識通りにできるスキル」を持っているのである。

 

そうして、しみじみ思う。

「高スキル保持者」の本質とはまさに、知識の活用を、練習によって、意図せずできるようにできる人なのだ、と。

 

ジョフ・コルヴァンのベストセラー「究極の鍛錬」には、人がスキルを獲得する段階があるが、最終段階は、知識を意識せずに使いこなせる「自動化」とある。

たとえば自動車の運転など、何か新しいことができるようになるには、人間は三つの段階を経るものだ。

第一段階では、いろいろなことに注意を払うことが求められる。車の制御方法、交通規制などいろいろなことを学ばなければならない。

第二段階になると、知識を連携するようになる。車、状況、交通規制の知識といろいろな自分の体の動きを関連づけ、スムーズに組み合わせることができるようになる。

第三段階になると、考えることなくひとりでに車を運転するようになる。これを自動化(automatic)という。

つまり、やり方を知っても、高スキルの保持者になるには、「自動化」への遠い道のりが待っている。

 

これは、聞けば「当り前じゃないか」と思う方もいるだろう。

だが、「やり方がわかる」だけで、スキルを獲得したように錯覚してしまうことが本当に多いのだ。

 

実際、コンサルティング会社に在籍していたころ、研修を社員がどのように利用しているかを調べたことがあるのだが、教わったことを、実際に試している人はかなり希少だった。

 

また、意外なことにアンケートで「役に立った、知ることができてよかった」というコメントをした人ですら、得た知識をほとんど実践していなかった。

 

「なぜ自分はできないのか」はGoogleも教えてくれない

だから、実はスキルの獲得のために重要なのは、本を読む、セミナーに出る、あるいはGoogleで調べる、YouTubeを見るといった、知識の獲得ではない。

 

逆に、必ずやらなければならないのは、「なぜ自分はできないのか」を、練習によって分析することだ。

それらは、自分に固有のものなので、Googleにも本にも出てこない。

 

したがって、語学、会話術、文章術、生活習慣、対人関係……そうした「スキル」を獲得するための細かい道筋は、一人ひとり違う。

「知ってる」と「できる」がまったくの別物なのは、そのためだ。

 

「絵を描くスキルを得たければ、まず絵をかけ」

「起業スキルを身に着けたいなら、まず起業せよ」

「コミュニケーション能力を身に着けたいなら、コミュニケーションせよ」

というアドバイスは、本質を突いている。

それはつまり、試行錯誤せよ、ということに等しい。

 

米国の心理学者、アンジェラ・ダックワースは、著書「GRIT やりぬく力」で、もっと具体的な試行錯誤の方法について述べている。

それは「意図的な練習」と呼ばれる。

それによると、エキスパートたちは普通の人々と違い、「ただ練習している」わけではない。

彼らの練習は次のような特徴がある。

 

具体的な弱点を抽出し、それを集中的に練習する

・「うまくできなかった点」について、徹底的にフィードバックをもらう

できるまで、それに特化して反復練習する

 

つまり、「理想」と「現状」の差分を明らかにし、その差分を練習によって少しずつ埋めていく地味な作業。

これが試行錯誤の本質であり、スキル獲得に不可欠な活動だ。

 

特徴的なのは「練習時間の長さ」ではない点だ。

上のように弱点に集中したトレーニングは、ひどく消耗するため、どれほど頑張っても1日当たり3時間から5時間が限界だという。

しかもそれは、「できないこと」ばかりに集中するためあまり楽しくない。

 

要は、スキルの獲得ができるかどうかは、「頭を使って、辛抱強く弱点の克服のために練習したか」に掛かっている。

 

スキル獲得は、仲間づくりを組み込まねばならない

結局、「頭を使って、辛抱強く試行錯誤したか」が問われるとなると、すぐに結果も出ないので、「やってられないよ」という人もいるだろう。私だってそうだ。

練習は地味でつまらないし、自分に特にセンスがあるとは思えないし、プロを目指しているわけでもない。

多くの人が、高スキル保持者になれないのは、そのためだ。

 

では、「練習を続ける」秘訣はあるのか。

 

個人的な感覚では、それは極めて単純だ。

それは絶対に独力でやろうとしないことだ。

 

ゲームも、一緒にやる仲間がいると、練習を続ける意欲は段違いに上がる。

スポーツやトレーニングなら、見てもらうコーチがいるだけで、上達のスピードは圧倒的に違う。

YouTubeやブログも、視聴者、読者からのフィードバックがあればこそ、続けられる。

 

つまり、スキル獲得は、仲間づくりを、その過程に組み込まねばならない。

「知識を仕入れる」よりも、一緒にやってくれる人、あるいはコーチ的な人を探すことのほうが、はるかに優先度が高い事項だ。

 

「何事も続けられない」

「継続して取り組めない」

という方は、ぜひ「やり方」を調べるのではなく、「仲間」あるいは「コーチ・師匠」を探してみてほしい。

しかも、素直な気持ちでその人たちのいうことを受け入れられるコミュニティに属すことだ。

 

きっと、劇的な進展があるだろう。

 

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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