競馬程「得意分野で勝負する」というのが大事なものもなかなかないな-、と思いました。

 

すいません、いきなりゲームの話から始めちゃうんですけど、最近Cygamesさんの「ウマ娘」っていうゲームを遊んでます。

競走馬を擬人化した女の子たちがレースで速さを競う育成シミュレーションゲームです。

 

一見ただのギャルゲーか?と思わせておいて、実はウマ娘って競馬パートと育成パートがすごーくよく出来ていて、本当の競馬さながらの熱いレースが楽しめるんですよ。

気が向いたら触ってみてください。面白いです。

 

で、競馬お好きな方はよくご存じだろうと思うんですが、馬はそれぞれ「得意分野」というものをもっていまして、例えば長距離レースが得意な馬もいれば、短距離レースが得意な馬もいる。

レースでの戦い方にしても、走るフィールドにしても、得意・不得意による能力差が物凄く大きくって、「自分の得意なフィールドで戦えるかどうか」ってことが勝敗に大きくかかわってくるんですよ。

 

自分の得意分野で戦えると思いもよらないジャイアントキリングを成し遂げることも出来るんですが、苦手な分野ではけちょんけちょんに負けてしまったりする。

具体的に言うと「キングヘイローはなんで短距離得意なのに中距離レースばっか走らされるんだよ」っていうただの私怨なんですけど、まあ「自分の得意で勝負する」ってのは大事だよなあ、と。

 

ということで、ウマ娘を遊んでいる内に、ふと「得意分野」をテーマにしたくなりまして、もうすぐ新社会人になる方もいらっしゃる時期かと思うので、かるーく現役社会人からのアドバイスっぽいことを書かせて頂ければと思った次第です。

 

***

 

皆さん、「得意なことを伸ばせ」「苦手な分野で勝負するな」って言葉、多分聞いたことありますよね?

 

自分が得意なことのレベルを上げて、何か抜きん出た武器を得ること。

そして、自分の苦手な分野では勝負をしないこと。

なるほど確かに、苦手分野をフォローするより得意分野を磨く方が効率的だし、有効だし、なにより楽しい。

「得意を伸ばすのが大事」というのは大変もっともなことです。

 

けど、肝心の「得意なことで勝負して、苦手なことでは勝負しない具体的な方法論」となるとあんまり聞かないなあ、と思いませんか?

「得意を伸ばせ」って口で言うのは簡単ですけど、「じゃあ、実際その得意分野を活かした仕事をしてお金をもらうにはどうすればいいの?」という質問に答えるのは容易ではありませんし、そういう情報がゴロゴロその辺に転がっているわけでもありません。

 

私だってまだ人生試行回数はたった1回、それもせいぜい40年くらいしか生きていないひよっこ人類なわけでして、オールマイティな回答が出せるわけではありません。

ただ、比較的「ステータスを特化させる」「その得意分野で勝負する」ということについては成功してきた部類かなーとは思っていまして、また一応管理者として働いている間に結構な数のサンプルも見てはきましたので、「生存者バイアスじゃん」と言わず、「こういう方法もあるっぽいよ」というひとつのサンプルだと思って聞いて頂ければと思うんですが。

 

会社組織の中の話で言うと、私が考える限り、「得意な分野で勝負する」為の方法は、下記三点くらいでまとめられます。

・実績のあるなしに関わらず、自分の「得意分野」を一つ設定してしまうこと

・「得意分野」を遠慮なく、かつなるべく具体的にアピールすること

・仕事は可能な限り選り好みすること

 

以下は補足です。

 

***

 

まず最初に、「言ったもん勝ち」という話があります。

 

仕事における得意分野って、例えば「専門分野」だとか「スペシャリスト」だとかいう言葉とはちょっと意味が違っていて、必ずしもそこに「専門性」がある必要はないんですよ。

例えばそれは課題発見・課題整理能力かも知れませんし、利害調整能力かも知れませんし、相手の懐に飛び込んで自分に興味を持たせる能力かも知れません。

ロジカルに思考を組み立てることが出来る論理構成力、大きなタスクを小さなタスクに分解する段取り能力だって素晴らしいです。

 

自分に、何か「これは人よりも上手く出来る/出来そう」というものがあれば、それは一本の「軸」になります。

当たり前ですが、仕事って出来る人のもとに集まるもんでして、人より得意なことがあればそれに関連する仕事を担当する機会も必然、増えます。

仕事をこなしていればもちろんスキルもあがりますし、一方仕事をこなして自分の価値を上げていって、上司や発注者にその価値を認めてもらえれば、多少は仕事の選り好みも出来るようになります。

 

そして、タマゴニワトリじゃないですが、「たくさん実績があるから得意と言える」のか、「俺はこれが得意だ!と思い込んでそれをやっている内に実際に得意になる」のか、という問題は非常に微妙でして、後者の率が実際にはかなり高いです。

少なくとも私はそうです。

 

勝手に決めた軸足は、やっている内に「本当の軸足」になる。

そういう意味で、何か一つ「自分の軸を定めておく」ことって、仕事を進めていく上ですごーーく重要なんですよ。

 

で、ですね。ここからちょっとみもふたもない話になるんですけど。

これはもちろん会社組織によっても、人事制度によっても違ってくることではあるんですが、一般的に、若手というものは実績や能力で評価されません。

会社のベテラン社員にとって、若手というのはまだまだ「育てる」対象であって、仕事の上で何かを積み上げるのは随分先だと考えます。

 

これはつまり、実績があろうがなかろうが「得意って言ってるんだからまあやらせてみよう」という流れになりやすいし、その上での失敗も許容されやすい、ということを意味しています。

 

管理職として若い方々とお話していると、皆さん凄く真面目かつ控え目だなーと思うことが多くって、特に「実績や根拠がない得意アピール」をしないんですね。

例えば人事面談なんかで「どんな仕事がしたいですか?」という質問に対して、「特には……」と返ってくる頻度はかなり高いです。

やる気アピールなのか「なんでもやります!」と言ってしまう人もいますし、なにかしら希望を出すにしても「〇〇には興味があるんですが…」といった感じで大変控え目なんです。

 

要は、「得意分野」に対するアピールが非常に弱い。

「得意って言っておいて、言う程出来なかったらどう思われるか…」とか思っちゃう様子なんですね。

 

「ハードルを上げる」ことに対する恐怖感はもちろん分かるんですが、一管理職として言ってしまうと、若手の皆さんに「スペシャリストとしての活躍」なんて期待しません。

失敗なんてばんばんしてもらって構いませんし、「若手のビッグマウス」というものに寛容な大人は案外多いものです。

かつ、若手の能力なんてみんな似たり寄ったりなので、「あいつにやらせてみろ」というタスク振りに、大した理由など必要ないという事情もあります。

 

となれば、「俺、これが得意です!」と言っている人に、取り敢えずその仕事、振りますよね。

これが、「得意分野は主張したもん勝ち」である理由です。

 

「若い内は仕事を選り好みするな」って言葉、あるじゃないですか。あれ、嘘です。

仕事は選り好み出来れば出来る程得します

若い内こそ、可能な限り仕事を選り好みするべきです。

 

何故かというと、さっき書いた通り、「自分で決めた得意分野は後天的にパワーアップするから」なんですね。

当たり前ですが、ある仕事に関わるスキルは、その仕事をすればする程高まります。

その仕事に関わっている人たちからスキルを盗むことも出来ますし、その仕事に必要な情報もどんどん自分の中に蓄積されます。

 

そしてもちろん、実際にその仕事に関われば関わる程実績も出来ていって、ますますその仕事に関われる可能性は高まります。

で、その仕事をやっている内は、当然他の仕事を振られる可能性も低くなります。

つまり、得意な仕事に集中することで、苦手な仕事から逃げることも出来る。

 

もちろん職場によって、制度によって色々と事情は変わってくることも間違いないんですが、「出来る限り仕事を選り好みすること」こそが、「得意を伸ばして、苦手から逃げる」ための最速ルートであることは言ってしまっていいと思います。

で、仕事を選り好みする為に一番必要なことこそ、「根拠なく得意分野を設定」して、「遠慮なくその得意さをアピールする」こと。

 

しんざきの場合、生来「細かい作業・事務作業・定型作業」というものが極めて苦手です。

今でも定型作業ものすごーく苦手です。

 

一方で、「論理構成力が必要な作業・分析力が必要な作業」については得意だという自負、ないし思い込みは新入社員当時からありましたので、そういったタスクが発生しそうな時には「私こういうの得意です!私に振ってください!」ということを徹底的にアピールすることに努め、結果的にはDB構築だとか、テーブル設計だとか、SQL作成だとか、データ分析だとか、今の私の「軸」の基盤になるようなタスクにありつきつつ、苦手なタスクからは逃げることにかなりの度合い成功していました。

 

もちろんその会社がどれだけ若手のアピールを許容してくれる会社なのか、どれだけタスク振りの裁量がある会社なのか、というのは環境次第です。

そういう意味で、これがあらゆる場面で使える一般的な手法だと主張する気は毛頭ありません。

 

とはいえ、「得意分野を決めて、それを主張する」ということ自体に損はないだろうとも思っていまして。

「苦手から逃げるため」という消極的な理由だろうと、とにかく得意分野についてはアピールしてしまった方がいい、という話だったわけです。よろしくお願いします。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

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