「なんでそうやって色々やって、わざわざ人生をどんどん大変にするの?」

「もっとダラダラして、楽に生きればいいじゃない」

 

これは僕がよく妻から言われる言葉である。

 

最近までこの問いに対し何と答えればいいのかイマイチ上手く言語化できなかったのだけど、今ははっきりと回答できる。

それは人生の自由を拡張する為だ。

 

今日はランニングを通じて、僕が人生の自由を獲得した話をしようかと思う。

 

人生の目的は突き詰めると”自由”になることである

「人生の目的とは、結局のところ、自由を獲得することだ」

作家の森博嗣さんは40歳くらいの時にそう思い至ったと著書”自由をつくる 自在に生きる”で語っている。

<参考 自由をつくる 自在に生きる>

 

彼は自由を「自分の思ったとおりに行動できること」と定義付けている。

この本を最初に読んだ時はこの言葉の意味する事がよくわからなかった。

実際、森さんも学生にこの話をすると「はぁ?」と腑に落ちない顔をするのだそうだ。

 

現代はとても自由で、ともすると私達は自分自身の事を自由だと思いこんでいる節がある。

だが、実際は思っている以上に多くの人は不自由の中を生きている。

 

例えば食事を例にとって説明してみよう。

多くの人は健康の為に白い炭水化物を摂取しすぎないようにしようだとか、脂っこいものはやめておこうだとか、そういう風にある種の制限を自分に課している。

 

「本当だったら腹いっぱい白飯をかっこみたいが、それをやるとブクブクのデブになるからやめておこう」

 

多くの人はそういう風に”見えない制限”のようなものを自分自身に作って、その中で生きているのが普通だ。

このように不自由の自由のような形での自由を私達は好むと好まざるとにかかわらず選んでいる。

 

毎日走るようになってから、体重がほぼ増減しなくなった

僕自身も結構太りやすいタイプで、そういう風に自分の食生活を自制していた。

それがダイエットとは全く関係ない理由で毎日3キロぐらい走るようになり、ふと

 

「そういえば毎日激しい運動していた学生時代は何を食べても太らなかったな」

と思い出し、試しに欲望の赴くままに腹いっぱい炭水化物をかっこんでその日の夜に体重計にのってみた。

 

結果は驚く事に体重計はほぼ不動であった。

ランニングを始める前の僕ならそんな事をしようものなら一瞬で体重が4キロぐらい増える有様だったのだが、どうも肉体が変わったらしい。

 

これは久々に衝撃的な体験だった。と同時に、今までは健康の為とかこつけて欲望を無視して食生活を営んでいた事に改めて気が付かされ、僕は自分が自分で思っている以上に不自由の檻の中で暮らしていたことに気がついたのであった。

 

炭水化物を好き放題食べられる喜びよ

毎日走ると何を食べても太らなくなる。

 

この現象は僕だけに限ったものではないようで、京都にある某料亭Sの亭主は一時期とんでもなく丸々とした身体つきをしていたのだが、数年前に訪れた際に恐ろしくホッソリとなっていて驚いた。

その秘密を問うたとこ「毎朝10キロ走るようにしたら何をどんなに食べても太らなくなった」との事である。

 

結局、人間は健康でありたいのなら制限された不自由な食生活を選ぶか、運動して自由な食生活を選ぶのかの2つに1つである。

運動したくないから好きなものを食べないというのも一つの自由で、実際かつての自分はそれを選んでいたのだが、楽しく運動した上で好きなものを好きなだけ食べられる生活になってから、より自分の人生が”自由”になったように感じる。

 

なお、僕が毎日10キロ走っていないにも関わらずこの食生活が得られているのは薄いソールの靴を履いて走ってる事の影響もあると思う。

MERRELLのVAPOR GLOVE 5という靴を履いて走ると、3キロ程度のランニングでもかなり脚が筋肉痛になる。

短時間で高強度のランニングをやりたいのなら、このシューズが激しくオススメだ。

Amazonで廉価な薄底の靴を買ってランニングもしてみたが、全然走りやすさが違うので個人的には最初からVAPOR GLOVE 5を買う事をオススメする。

 

走るようになってから細かいことでクヨクヨしなくなった

そもそも走ろうと思ったのはメンタルが過労もろもろで疲弊しすぎて死にかけていたからだった。

色々あってこの4月から週休ほぼゼロ日でとんでもなくハードな労働人生を歩んでいるのだが、この過労生活がやばいのはメンタルがゴリッゴリに削られていく事だった。

 

どうしたもんかなぁと随分思い悩んでいたのだが、ふと運動が鬱に効くという話を思い出して藁を掴むような気分でやってみたら、これが本当に効いた。

<参考 脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方>

 

ランニングは心を強くする。

走っている最中に”無”になる事でメンタルが回復するのも随分と助かるのだけど、これに加えて僕は走り始めてから細かいことでほとんどクヨクヨしなくなった。

 

これもまた新鮮な驚きがあった。

たまに「この人、本当に図太い神経しているなぁ。羨ましい」と思うような人をみる事があったけど、まさか走る事で自分がそういうタイプの人間になれるとは思わなかった。

 

あなたがもし図太くなりたいのならランニングは一つのいい選択肢かもしれない。

確かにランニングは心を分厚くする作用があるように思う。

世のハードワーカーが熱心にランニングマシンでもって走りこむ秘密はたぶんこれである。

 

怠惰な自由か、過活動な自由か

こうして、僕は太りにくい肉体とタフなメンタルという2つのものをランニングを通じて獲得するに至った。

そして己がどういう行動をとるか次第で、人生は自由にも不自由にもなるのだなぁという事を心の底から理解した。

 

かつてアップルのティム・クックを始めとする世の有名CEOがとんでもなく早起きしてジムで走ってから働いているという話を聞き、この人達はなんでこんなに過活動的なんだろうと思った事があった。

 

しかし自分が似たようなルートを歩みつつある今になって、彼らがなぜそんな事をするようになるに至ったのかを理解できるようになった。

あれは”自由”を行動でもって拡張させているのである。

そしてそれがムチャクチャ楽しいのだ。

だからあんなにも過活動なのである。

 

何もせずに家でダラダラしているのは一見すると自由にみえるが、実のところ何も出来るようになっていないという意味では不自由なままだともいえる。

それと比較すると色々と激しく活動している人は「あれもできるようになったし、これもできるようになった」と人生のできる事リストを常に更新し続けて、より自由を拡張させているともいえるのではないだろうか。

 

どちらを本当の意味で自由と感じるのかは人それぞれだろうし、年齢でもって色々と感じ方も変わると思う。

僕は以前はどちらかというと怠惰である事に自由を感じていたけれど、最近は活動でもって行動の自由を拡張させる事の方により自由を感じる。

 

結局、走るのが楽しくなるのに3ヶ月ぐらいはかかった

この記事を読んで「よしランニングをはじめてみるか」と思った人に一つだけ言っておきたい事がある。

それは走るのが楽しくなるまでに少なくとも3ヶ月程度はかかるという事である。

 

僕に限っていえば、正直最初の2ヶ月ぐらいは走るのが全く楽しくなかった。

1ヶ月ぐらいたっても全然楽にならないし、2ヶ月目になっても全然楽にならなかった。

 

よく走りなれた人は「毎日走らないと気持ち悪くなる」というが、その境地に達するのは決して楽な事ではない。

だが、そこに至ると確かな自由が自分の中に手に入った事を実感する事だけは約束しよう。

 

シンドいことでも、自由が拡張する事はそのうち楽しくなる

振り返ってみると、読書や勉強を習慣化するのにも似たような苦しみはあった。

今ではどちらも「むしろやらないと気持ち悪い」ぐらいにはルーティンとして日常生活に取り入れられたこれらの習慣も、最初はとんでもなく苦痛で苦痛でしかたがなかった。

 

改めて考えてみると読書や勉強もシンドいはシンドいのだが、最終的にやらないと気持ち悪いぐらいに生活習慣として組み込まれるようになったのは、それらが僕の人生の自由を拡張するのに大きく寄与してくれているからだ。

 

知識社会である現代において、知は力である。

有益な知識を身につければ身につけるほど、僕の人生は僕が望ましいと思う方向に自分の意思でもって推し進める事ができるようになっていた。

 

やればやるほど”自由”になれるから、僕は他人からみればわざわざ人生をどんどん大変にしているようにみえる事にも喜々として取り組んでいるのだろう。

 

せっかく体力がついたという事もあるので、とりあえず今年の夏は富士山にでも登ってこようかなと思っている。

以前の自分なら、山登りなんて疲れるだけの行いだとして選択肢にもあげなかっただろう。

これもまた一つの自分がより”自由”になった事の証明かと思うと、なかなか感慨深い。

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

 

【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

Photo by Fitsum Admasu on Unsplash