夏休みを利用して富士山に登ってきた。

「せっかく日本人に生まれてきたんだし、一生に一回ぐらいは富士山に登ってみたいなぁ」

こう思っている人は多いだろう。

 

だが、なんとなく富士登山には宿泊が必須なんじゃないかとか、そもそもムチャクチャにハードなんじゃないかと思いこんでて「自分には無理だろう」と思っている人も多いのではないだろうか。

 

僕も「富士山なんてキツそうだし時間もないしで自分には無理ぽ」と思い込んでいたうちの一人だったのだが、色々と調べてみるうちに

「これひょっとして日帰りでいけんじゃね?」

という事に気が付き、自分で実践してみた。そして結果的にはイケた。

僕が知る限り、日帰り富士登山に関してわかりやすく整備された情報源があまりないので、今回はそれについて書き、実際に登る価値があるかどうかに関しても記載する。

 

富士山は新宿から直行でいける

富士山は登るにあたって複数のルートがあるのだけど、最も初心者向けとされている五合目の吉田ルートへは新宿より直行便がでている(web予約で片道2650円。安い)

バスの始発は6:45発(五合目9:20着)で、最終便は17:00発(新宿19:35着)である。

 

つまり理論上は到着してから7時間30分以内に登って帰ってこれれば、日帰りが可能な場所なのである。

 

「あれ、ひょっとして日帰りイケんじゃね?」

 

そう思いGoogle先生に尋ねてみたところ、Google先生も「理論上は可」との回答である。

先生いわく…理論上は登りは3時間10分で

 

下りは2時間半程度との事である。

 

合計で5時間40分。

これなら道中に休憩をいれても”理屈の上では”達成可能だ。なら…やるしかねぇ。

 

お鉢めぐりをやらなければ、達成難易度はそう高くない…と思う

実際のタイムはどうだったかというと、登りは休憩を入れて4時間20程度で、下りは1時間30分程度であった。

これにお鉢巡りといって山頂をぐるりと一周する行為が1時間20分程度加わり、合計タイムは上図の通り7時間10分である。

 

参考までに僕の肉体スペックを書いておくと、登山趣味は無く、いわゆる山登りの経験はほぼ無い。

毎日3.3キロのランニングを約3ヶ月やっていたので、一般人と比較すれば体力はある方だろう。

 

「えっ、それじゃあ毎日走らないと富士登山ムリなんじゃね?」と思われる方もいるかもだが、体感的にはお鉢めぐりという山頂を一周する行程を省略すれば普通の人でも制限時間内での登り下りは可能だと感じた。

吉田ルートの登山コースはとても整備されており、いわゆる難所はほぼ無い(まあ楽ではないが)

 

せっかく山頂まで登ったんだからお鉢めぐりもやりたいという人は走り込み等を行ってそれなりに準備すべきだろうが、単に山頂まで行って来いをやりたいというだけならばそこまでムチャクチャに達成難易度は高くはない。

 

だから興味がある人はぜひともチャレンジしてみて欲しい。

後でまた書くが、富士登山は非常に良い思い出となるし、人生観が変わる。マジで。

 

最重要アイテムは靴。そして雨の日は登らないこと

さて、続いて装備について書こう。

最も重要なのは靴だ。

他の何を省略してでも、靴だけはちゃんとしたものを履いたほうがいい。

 

ぶっちゃけ最悪それさえあれば他にはお金だけでも何とかなる。

「スニーカーでもいけるやろ」みたいな甘い考えは開始10分で絶対に後悔するからマジでよした方がいい。

 

僕は今後トレイルランをやろうと思ったのでMERRELL社のTRAIL GLOVE 6という靴を履いたが、普通の人は長靴状の登山靴を選んだ方が無難だと思う。

 

富士山は火山で砂が細かく、踵が低い靴を履くと砂や小石がムチャクチャに入り込む。

後半になって脚が棒になると、砂や小石を取り除こうとする動作ですら超苦痛になるので、極力最初から砂の入り込みは避けておいた方が無難だ。

 

なお登山靴を買うのが嫌だという人は事前申し込みでレンタルも可能らしいので、そっちもありだろう。

 

あと服装も肝心だ。

具体的にはツバの長い帽子と薄手の長袖・長トレパンあたりを用意しよう。

なお綿パンやジーンズでのチャレンジは汗で張り付いて大変らしいので、避けたほうが無難だそうだ(僕はユニクロ ウルトラアクティブ ジョガーパンツを使った。これは良かったと思う)

 

なお、夏だからといって半袖半ズボンはやめておいた方が無難である。

真夏でもだいたい八合目を堺に富士山は随分と寒い。

気温は昼でも8~13℃で、障害物が皆無な事から風がビュービュー吹いてて、これがまたエグい。それと日焼けがエグい。

 

なので日に当たる箇所は極力少なくし、それでも当たる場所は日焼け止めクリームを塗っておくのが無難だ。

雲という遮蔽物のない環境下における直射日光の暴力は凄い。

日焼け対策を怠ると、後でむっちゃ痛い。

僕は半袖で通したが、今になって大変に後悔している。

 

そもそもの大前提として晴れの日に登るのが何より重要だが、山の天気は変わりやすいので念の為にもレインスーツを用意しておいた方がいい。

買うならミズノのベルグテックEXストームセイバーVI レインスーツがいいと思う。

軽いしウインドブレイカーとしても使える(なお、折りたたみ傘は山では強風で壊れるのでNG)

 

水と食料はそんなに必要ない

飲食物についても書こう。

水は1000mlもあれば十分。

 

食料は僕は登る前におにぎりを2つ食べたのと持ち込んだチョコを少量食べたのに加え、道中で富士山限定販売のクリームパンとアンパン食べたぐらいで、そこまで腹は減らなかった(なおパンはとても美味しいのでオススメ)

僕は特に欲しくならなかったが人によってはカルパスのような塩っぱい食べ物を美味しく感じるらしいので、持っていってもいいかもしれない。

 

吉田ルートは山小屋が道中結構あって色々と物品の購入が可能なので、荷物を少なくしたい人はほぼ何も持ち込まないのもありだと思う。

参考までに水は一本500円程度である。

下界と比較すれば高いが、リュックの総重量を減らせると思えば安い。

 

なおリュックは肩だけではなく腰で固定できるのを使うのがいい。

圧倒的に動きが楽になる。

僕はsalomon社の20Lのものを使った。日帰りなら容量的にはこれぐらいあれは十分である。

 

ちなみに売店では酸素とかカップラーメン、お菓子や食事類・酸素も売ってる。

だからあれもこれもとそんなにアイテムを持ち込む必要はマジでない。

それよりも道中のトイレの使用に100円玉が必要となるので、10枚程度くずしておく方が大切である(参考までに僕は登り下りで1回づつトイレを利用した)

 

富士山は観る山であって、登る山ではない?

「富士山は外から眺める山であって、登ってて楽しい山ではない」

「日本には他にもっと美しい山が沢山ある。これを機に登山に興味を持ったら他の山の美しさもぜひ知って欲しい」

 

富士山について色々と調べる中で、このような意見がある事を知った。

<参考 山と食欲と私 9巻>

 

実際、富士吉田ルートの山道は単なる岩景色である。

富士山はあまりにも標高が高いので森林限界といって草や木がほぼ育たない。

景観自体も最初から最後までほぼ同一で、山頂以外で圧巻されるような景色を目にする事は無い。

 

新幹線や飛行機で外から眺めているとあんなにも美しいのに、実際に登るとかなりの殺風景続き。

それが富士山だといえば、確かにそうとも言えよう。

 

じゃあ登っててつまらなかったかというと、そんな事はない。

むしろかなり楽しかったし、心の底からやってよかったなと思う。

 

何がよかったかというと、日常生活では絶対に無理な強度で己に向き合えたという事と登らなかったら絶対に得られなかった観点を持てた事である。

ハウトゥーはこの辺で終え、以下では僕が富士登山を通じてどう考えに変化が生じたのかを書く。

 

登山は山を征服するようで、山に征服されていく喜びがある

若い頃は登山に対して

 

「山登りなんて、脚が痛くなるだけじゃん」

「それこそ他にすべき事は山ほどある」

「わざわざ自分から疲れにいくとか、ばっかじゃないの!?」

 

と思っていたが、この年齢で始めた登山は全然違う風景を僕にもたらした。

山登りの面白さは己と必然的に向き合い続ける部分にあるように思う。

 

己の行く道をしっかりと見つめ、どういったルートを選べば自分の肉体が効率よく動くか。

 

このように自分の体や脚が限界を迎えていないかなどを常に客観視し続ける作業には、心理学でいうところの内観的な行いがある。

己の内側を覗き続けるのはとても楽しく、この内観的な作業を通して山を征服してゆく作業には強い達成感が伴う。

 

それに加え、山を征服しつつもまた自分の一部が山に征服されていくという感覚には不思議な歓びがある。

富士登山を通じて、僕は自分の中に今までは無かった大きな何かが宿った感覚を手にした。

 

傍からみれば単なる肉体疲労しただけとも言えるのかもしれないし、そういうモノの見方も僕は否定しないけど、個人的にはこんな面白いモノを単なる肉体疲労と切って捨てるにはあまりにももったいないと思う。

 

富士山に登ると、人生観が一変する

これに加えて富士山に登る事で何が得られるかといえば、やった人生とやらない人生の可視化である。

これは内在感覚としても間違いなく己の内に宿る。

 

例えば今後、僕が新幹線や飛行機でもって眺める富士山の景色は、富士山に登る前にみた景色とは完全に異なったものとなる。

外からみた富士山は銭湯の絵みたいだけど、あれを見ながら殺風景な岩景色や山頂の青さと白さを想起できるのは、登った事がある人間だけだ。

 

外側の美しさと内面の殺風景さ。

この二面性は実際に登った人だけが得られる心の目である。

文字や映像では絶対に得ることができない。

 

単に美しい景色や知識といったものなら誰でも得ることができるけど、この真理だけは富士山に登った事がある人間しか手に入れる事ができない。

 

ここにある種の人生の本質がある。

世の中にはこういった類のモノが実にたくさんある。

 

傍観する人生と、やる人生。あなたはどちらがお好きですか?

経験はとても尊く、人生をとても色鮮やかにしてくれる。

 

例え話を一つしよう。学園の美しいマドンナをみて

「あんな美しい人と付き合えたら死んでもいい」

というだけの傍観する人生と

 

実際に勇気を出して告白し、付き合って結婚し、子供を産み育て

「いや、まあ実際に腰を据えて付き合うとなると、結構大変だったよ」

と言う人生。

 

富士山を登ったか登らないかは、この2つの人生と同じぐらいの格差がある。

この理論を頭で理解するのは誰にでもできるかもしれないが、心の底から理解できるのは”やった側”の人間だけだ。

 

「富士山は外から眺める山であって、登ってて楽しい山ではない」

実際に、登った人がそういう感想を持つのはいい。

それはその人にとっての真理だからだ。

 

ただ、やってもいないくせに「富士山に登る意味なんてない。単なる殺風景な山でしか無いんだし」と斜に構え、したり顔でもって”やらない”人生を堂々と主張し始めるのは、とても損だ。

そういう態度は人生を物凄く毀損する。

 

富士山に登れば、あなたは今すぐにでも”やった側”に立つ事ができる。

そう考えると、なんだか登らない事が物凄く損に思えてこないだろうか?

 

さあ、あなたも富士山に登ってみよう。大丈夫、絶対に損はしないから。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

Photo by Leon He