前職では研修講師をよくやっていた。おそらく年間で通算すると70回程度はやっていたように記憶している。
しかし、私は人前で話すことは致命的に苦手であったため、セミナーの講師は憂鬱な仕事の一つだった。
一方、社内には私よりもはるかに話すのが上手い人物が数多くいて、私はなんとか苦手を克服しようと、そのような人々から「上手く話せる技術」を盗むのに必死だった。
残念ながら今でも話すのは上手くない。が、「人前で話すこと」に対して苦手意識が低くなったのは、そうした「話すのが上手い人々」の共通点を探ったからではないかと思う。
1. フルネームを名乗り、自己紹介をきちんと行う
プレゼンテーションにおいて、もっとも重要な儀式の一つです。
いわゆる「つかみ」は、プレゼンテーションが苦手な人にはハードルが高く、ネタを仕込むのも一苦労です。
ところが、「自己紹介」は、これと同じような効果を得ることができます。
あなたが有名人であればともかく、通常は聴衆はあなたのことを知りません。そして、「私の知らない人の話」というのは、あまり聞く気にはならないものです。
そこで、最初に「フルネーム」で名乗ることで、相手に自分の事を認識してもらいます。通常、フルネームで自己紹介をする人はあまりいないので、印象に残るのです。さらに、出身地や自分のプロフィールなどを簡単に話すことで、相手に親近感を持ってもらえます。笑いが取れればベストですが、そこまで行かずとも、「自分と同じような体験をしているんだ」と思ってもらえるだけでも十分効果はあります(もちろん、社内でのプレゼンテーションには不要ですが…)。
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こんにちは。今日はお忙しいところ誠にありがとうございます。わたくし、あだちと申します。それでは、まず1ページ目を…
良い例
こんにちは。今日はお忙しいところ誠にありがとうございます。わたくし、今日のスピーカーを勤めさせていただく、あだちゆうや、と申します。生まれは東京都の◯◯でして、今も実家はそこにあります。初めてついた職業はシステムエンジニアでして、いまこちらにいらっしゃる多くの方と同じ…かもしれません。JAVAを多少やっておりましたので、もし詳しい方がおられましたら、後でぜひご一緒させてください。
2. プレゼンテーション資料に書いてある文字を出来るだけ読まず、結論から話す
プレゼンテーション資料にはできるだけ文字をつめ込まない、というのは当たり前ですが、それ以上に重要なのは、「見ればわかるものを、読まない」ということです。聴衆は飽きっぽく、次の展開を望んでいます。プレゼンテーション資料にある文字を読みだした瞬間、聴衆は次のページが気になって、あなたの話を聞かずに次の資料に移ってしまいます。これでは、「つまらないプレゼンだった」と言われてしまいます。
ですから、プレゼンテーション資料に書いてあることを読んではいけません。逆に、読まなければいけないような資料は、イマイチな資料です。
では何を話すか?最初に話さなければいけないのは「このスライド(ページ)が何を訴えているか」です。結論を最初に持ってきます。
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では、次のページに行きましょう。はい。「1.今後のマーケティングの展望について」です。今回の我々の調査では、以下に記す2つのことがわかりました。まず調査方法からお知らせします…
良い例
では、次のページに行きましょう。はい。このページ、何を示しているかお分かりですか?そうです。おどろくべきことに、「顧客はこの商品が嫌い」ということと、「顧客は新しいものを拒否する」ということがわかりました。では、下のデータを…
3. 「体験」を話す
プレゼンテーション資料には一般的に「事例」や、「理論」などが詰め込まれています。もちろん伝えたいことはこれらでも十分です。でも、もっとプレゼンテーションを盛り上げたかったら、「体験」を話すことに尽きます。
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以下の事例をご覧ください。弊社の顧客のA社、B社の事例があります。まずA社の事例ですが…
良い例
以下の事例をご覧ください。ああ、こんな事例があるんだな、という程度で結構です。では、実際に私が担当させていただいた時のお話をいたしましょう…
4. 意見を述べるときには、「いろいろなお考えもありますが・・・」と、述べる前にはさむ
私がよっぽど偉い人だったなら別なのですが、そうではないので、「聴衆に嫌われないようにする」ということには非常に気を使いました。とくに、意見を述べる際には様々な反論が予想されます。もちろんそういった反論は表には出てきませんが、アンケートや商談の結果には大きな影響を与えます。
これはかつての上司からもきつく言われたのですが、「意見には常に反論が存在する」というように考えたほうがプレゼンテーションでの事故が少なかったように思います。
したがって、自分が意見を述べるときには必ず「いろいろなお考えもありますが…」、「賛否両論ですが・・・」、「もちろん一つの意見ですが・・・」と一言つけるようにしていました。
海外の資料などを見ると、「自信たっぷりに話したほうが良い」というアドバイスも有りますが、実際に日本においてはそうでないケースも多いと思います(くどいようですが、有名人なら別です)。
悪い例
実際に得られたデータを見ると、JAVAをプラットフォームとするよりも、PHPをプラットフォームとしたほうが良いです。
良い例
実際に得られたデータを見ると、いろいろなお考えもありますが、JAVAをプラットフォームとするよりもPHPをプラットフォームとしたがほうが良いかな、と思います。
5. 1つのスライドにつき、3分程度の時間を見ておく
私の部署は、1スライド3分が標準の時間というルールを採用していました。経験的にスライドが早すぎず、かつ適度に自分の話ができる時間です。
ただ、話し始めると盛り上がってしまうケースも多いので、月並みではありますが、リハーサルは行ったほうがよいでしょう。
6. 聴衆に必ず「どうでしょう?」「どう思われますか?」と語りかける時間を作る
つまらないプレゼンテーションの大きな特徴の一つは、「一方向」ということにあります。要は、聴衆が考える時間を奪ってしまい、自分がしゃべるのみになっているプレゼンテーションです。
よほど強力なメッセージがあれば別ですが、これでは、30分ほどで聴衆が眠くなってしまいます。
ですから、10分に1回程度、「皆さんはどう思われますか…(沈黙)…」という時間を作ると、聴衆からは「かなりこなれたプレゼンテーション」に見えます。
おわりに
いかがでしょうか。もちろんこれは、「人前で話すのが苦手な人」向けの話ですので、すべての人に当てはまるわけではありません。
ただ、現場で使いやすいネタなので、人前で話したり、あるいは資料の説明をしたりするとき、ぜひ使ってみてください。
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