「文章を書くのが苦手。ライターなんて絶対にできない」

この仕事をするようになってから、何度かこう言われることがあった。

 

書くことが苦手な人は、どうやら結構多いらしい。

わたしは書くのが大好きな人間なので、いまいちその気持ちがわからず、なにが・なぜ・どういうふうに苦手なのか、いろいろと聞いてみた。

すると、

「なにから書けばいいかわからない」

「言いたいことをうまく文章にできない」

「とにかく時間がかかって嫌になる」

といった答えが返ってくる。

どうやらみんな、「最初から完璧に書こうとしている」ようだ。だから、「ちゃんと書けない」と投げ出してしまう。

 

正直、そういうのって、くだらないなーと思う。

文章なんて、好きなところから好きなように書けばいいのに。

 

書くのが苦手でノウハウに手を出し、さらに頭を抱える「書けない」人たち

デジタル化が進み、メールやチャットなど、文章能力が求められる場面が増えている。

昨今のリモートワークの波で、その傾向はさらに加速していくだろう。

 

アマゾンでちょっと検索してみれば、「だれでも書ける」だの「伝わる文章」だの「ロジカル文章術」だの、文章のノウハウ本はいくらでも見つかる。

文章能力を磨きたいという切実な思いから、そういった本に手を伸ばす人は多い。

これらの本では主に、「いい文章とは」「伝わる文章とは」「理論的な文章とは」という理論が書かれており、そのために「結論をハッキリさせる」「伝えたいことは明確に」「上手に比喩を使う」といったテクニックが紹介されている。

 

……そう、だから、文章が「苦手」になってしまうのだ。

 

もともと書くことが好きではない人に「理想的な文章」の話をしたって、響くワケがない。

というか、伝えたいことが明確で教えられた型どおりに書けるんだったら、最初からもう書いてるわ!って話だ。

 

ノウハウ本には、「文章を書くのが得意になりました!」的なレビューが連なっているけど、そもそも書くのが好きじゃない人は、基本的にレビューなんて書かないしね。

いや本当、「書くのが苦手」な人の「苦手具合」って、想像のはるか上だから。

書き出す前に30分ウンウンうなって結局なにも書けないとか、書いたはいいけど因果関係やら時系列やらがめちゃくちゃでなにも伝わらないとか、途中で訳が分からなくなって投げ出してしまうとか。

 

「これってどういう意味?」とこちらが聞いても、書いた本人が「よくわかりません」なんて言うこともザラ。

なんで自分がわかってないんだ。

 

で、そんな状況に危機感を覚え、「自分は書くのが苦手だからどうにかしなくては」とノウハウを求める。

縋りついたノウハウには、「理想の文章とはこういうものであって」とタラタラ書かれており、「そんなん無理だよ、書けるなら書いてるよ……」と肩を落とし、「やっぱ書くのって苦痛だわ」とより嫌悪感が強まる。

 

そう、「いい文章とはこういうもの」「こう書きなさい」と言われるから、「そんな文章は書けない」と頭を抱えてしまうのだ。

文章なんて、書きたいところから書きたいように書けばいいだけなのに。

 

ライターだけど、好きなことを好きなように書いていく

いろんな文章ノウハウを見てきたが、わたしの文章の書き方はちょっと変わっている……というか、邪道なのかもしれない。

 

それは、「書きたいように書いてあとから並び替える」方法だ。

まちがいなく王道ではないけど、書くのが苦手な人にとって、わりととっつきやすい方法なんじゃないかと思う。

 

まず、書きたいことを、箇条書きでぐわーっとメモ帳に書く

脈絡なく、思いついたことを、思いつくままに。

 

で、ひととおり箇条書きしたら、全体を見て「1」「2」と順番を振っていく。

書き出しによさそうなエピソードには「1」、そのエピソードから本論に入るつなぎとして使えそうな表現は「2」、みたいな感じで。

あとから「やっぱりこれは1のあとに入れたい」というものが出てきたら、「1.5」と書く。

 

そしてそのメモを片手に、パソコンでカタカタと打ち込んでいく。

伝えたいことはすでに箇条書きになっているし、書く順番も割り振っているから、あとはもうそのとおり書いていくだけだ。

 

とはいえこの「とりあえずの文章」には、明確な論旨や結論がない。

書きたいことを順番に書いただけ、ただの殴り書きだ。

そしてここからが本番、「並び替え作業」に入る。

 

邪道?箇条書き並び替えライティング

殴り書きを読んでみると、似たような主張が続いていたり、ちょっと脱線して浮いているエピソードがあったり、例え話が連続して読みづらかったりするポイントがある。

それを、より洗練された文章にするために、並び替えていく。

 

似たような主張は一番しっくりくる場所に集めて、流れ的に「ん?」となる内容は思い切って消して、例え話はいいやつだけ残して順番をいじって……と、文章を組み立てたり解体したり。

話の流れがきれいになるように並び替え、わかりやすくなるように削っていくと、6000字くらいの殴り書きがだいたい5000字くらいまで減る。

 

並び替え作業で文章を整理して読み直すと、その記事で自分が伝えたいこと、しっくりくるゴールが、しぜんと見えてくる。

「こういうふうにまとめたら丸く収まるな」という着地点を最後に付け足せば、「記事」ができる。

あとは「読んでもらうこと」を意識して調整しつつ、ちょちょいと文章の体裁を整えるだけ。

自分語りが多かったら「あなたはどうですか」と問いかけてみたり、「こういう反論来そうだな~」という場所には「こう思うかもしれませんが」と予防線を張ってみたり、誤解を招きそうな表現に手を入れてみたり。

 

はい、これで完成!

……とまぁ、わたしはこうやって、「箇条書き並べ替えライティング」という方法で記事を書いている。

 

ほかの人に言うと、「結論を明確にしないまま書き始めてよく迷子にならないね」と驚かれるけども。

でもわたしからしたらすると、書く前から結論を明確にして、伝わるように書き方を意識して……なんて考えながら書くほうが、よっぽどむずかしいと思う。

 

書きながら頭の中を整理すれば、いつのまにか文章ができている

この「箇条書き並べ替えライティング」の最大のメリットは、「書きたいところから書くから、最初の第一歩のハードルが低い」ことだ。

そもそも書くのが苦手な人は、「なにから書けばいいかわからない」と言う。

そういう人に、「まず結論から書けばいいんだよ」と言っても、「結論……? え、なんだろう」とピンとこない。

 

書くのが苦手なのは、自分の頭の中を整理できておらず、取っ散らかった考えを文字にするのがむずかしいからなのであって、「結論から順番に書いて」と言われても、「できたらやってるわ」って話である。

だからまず、箇条書きで書きたいことをバーっと書いて、いい感じに順番を振って、書きやすそうなところから書けばいい。

書きながら、頭の中を整理整頓していくのだ。

 

……とまぁ精神論ばかり語っていてもアレなので、殴り書きした文章の「並び替え」のコツを、5つほど紹介しておきたい。

 

1.同じような主張をかためる

一番主張したい内容は、何度も何度も書いていることが多いので、ひとつの場所にかためる。

そしてできれば、文章を統廃合してできるだけ短くする。

 

2.グループ化する

似たような主張をまとめてカタマリが明確になったら、「見出し」をつけてひとつの段落にする。

見出しや段落で区切ると、「ここはこの話をするグループ」と整理しやすくなり、その後は「グループ単位の整理整頓」ができるようになる。

 

3.あまりものは保留

並び替えていると、「言い回しは気に入っているけどどこのグループにも入らない」「ちょっと趣旨から脱線する」といったカタマリが見つかることがある。

そういうとき、「うーん、うーん……」と悩むと進まないので、とりあえずカットして、文章の最後の最後にペーストして保留にしておく。

そのカタマリなしで全体がうまくまとまった場合、そのカタマリはいらないということで削除。最終的に「ここに割り込ませられそう」という部分が見つかればそこにペースト、文章を調整して馴染ませる。

 

4.細かい「文章の体裁」にはこだわらない

書くのが苦手な人あるあるだと思うんだけど、苦手な人ほど「文章の体裁」にこだわってつまづいちゃうんだよね。

「語尾に『です』が続いてしまう」とか、「『ですが』『しかし』と逆説の接続詞が続く」とか。

そういうのは、最後の最後に調整すれば大丈夫。

いくらきれいに書いても、いろいろと手を加えたらどうせぐちゃぐちゃになるからね。いいんだよ、好きなように、思うように書けば!

 

5.最後に音読して調整する

これはどういう文章の書き方でもおすすめなんだけど、音読はいい。マジでいい。

音読してみると、「語呂が悪くて気持ち悪い」「ここの流れがしっくりこない」という気づきが生まれる。

音読しながら微調整すれば、なんだかいい感じの文章が完成するから、ぜひやってみてほしい。

 

完璧な文章を目指すより、まずは好きなことを好きなように書く

ピアノが弾けない人に「感動させる音楽とは」と語っても、ピアノが弾けるようにはならない。

まずは音を出してみること。ドでもレでもミでも、なんでもいい。

好きなように鍵盤を叩いて、「音を出す」第一歩を踏み出し、そこから「楽譜の読み方」や「強弱のつけかた」を学べばいい。

 

文章でも同じだ。

最初から完璧に書こうとするから、書けなくなってしまう。

 

友だちにLINEするとき、「書き出しがわからない」とか「どうやったら相手に伝わるか」なんて考えないだろう。ケンカ中でもないかぎり。

好きなように書き、補足情報があればまたそれを送り……と、思ってることを気軽にどんどん送信するはずだ。

 

文章なんて、そのくらい自由に、気楽に書けばいいんだよ。

あとで帳尻を合わせれば、意外とそれっぽくなるから。

 

相手にどう伝えるかとか、共感されるように書くコツとか、そういうのは最後の最後、余裕ができてきたら考えればいい。

まずは、書くことへのネガティブイメージをなくさないと、一文字目が書けないから。

 

もちろん、これはあくまでわたしのやり方であって、「これこそが正しい」というわけではないけど。

少なくとも、文章を書くのが苦手、好きじゃない、苦痛だ、と思っている人たちが、「なーんだ、好きなところから書いていいのね」と、気持ちが楽になって、書くことが楽しくなってくれればうれしいなぁ、と思う。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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