2023年の幕開けは暗かった。

元旦から暗い本を読んでしまったせいだ。その本とは、ノンフィクションライターの中村敦彦さんが、歌舞伎町に集う女性たちを取材したルポ「歌舞伎町と貧困女子」である。

 

「これは新春1発目に読むようなもんじゃないな」と一瞬躊躇したけれど、新宿という街で今、何が起こっているのかを無性に知りたくなってしまい、新年が明けて早々にKindle版を購入した。

 

なぜそんなことに興味を持ったのかというと、若年女性の支援活動をしている一般社団法人のColaboが、年をまたいでもまだ炎上を続けていた為だ。

私はネットの火事場を眺めるのが大好きという趣味の悪い人間だが、今回ばかりは一向に鎮火する気配のない炎の勢いに、少々たじろいでいる。

 

大炎上することになった問題の争点は置いておくとして、私が今回の騒動に関連した様々な意見の中で気になったのは、Colaboが取り組んでいるバスカフェ事業についてだ。

Colaboは新宿区と渋谷区と連携し、繁華街に夜間巡回バスを走らせて、夜の街を彷徨っている女子中高生たちに食事、飲み物、衣類、化粧品等を提供している。

そうすることで居場所のない少女たちと繋がり、彼女たちが性売買に取り込まれるのを未然に防いで、必要な支援に繋げるためだ。

 

けれど、新宿で生活困窮者の支援活動をしている男性が、「Colaboの活動報告レポートの内容と実態はかけ離れており、歌舞伎町での少女売春や補導件数は減るどころか、むしろ増える一方だ」と、Colaboのバスカフェ事業に疑問を呈しているのが目に入った。

 

なぜ支援者たちが熱心に活動しているにも関わらず、歌舞伎町で少女売春は減らないのだろうか。

 

不思議に思っていたところへ、中村敦彦さんの新刊「歌舞伎町と貧困女子」の紹介記事が流れてきて、もっと深く内容を知りたくなったのだ。

本によれば、いま歌舞伎町に集まっているZ世代の女の子たちは「男に貢ぐ」ため、息を吸うように売春をしているそうだ。暴力団が衰退し、店舗型の風俗店や違法風俗店が一掃され、女の子たちは個人で客をとっている。

 

今の未成年は売春をすることでしかお金を作りようがなく、少女たちが体を売り、その稼ぎを同じ境遇の少年たちやホストに貢いでいるという。

 

いまさら日本の貧困化には驚かないが、売春相場の暴落率には衝撃を受けた。

激戦区の路上に立つ街娼とは言え、未成年の女の子たちの裸とセックスの値段が、たったの1万円だとは…。

 

デフレ化が止まらないのは、売りたい女の子の数が増えすぎて、供給過剰になっているかららしい。

私は、現代の少女たちの貞操観念やモラルを云々いうつもりはない。私が若かった頃にも、ブルセラショップや援助交際と呼ばれるものは既にあった。

 

けれど、当時は普通の女の子ならもちろんのこと、例え不良少女であっても風俗店で働くことや売春には高いハードルがあり、滅多なことでそのハードルを越えることはなかった。

 

そもそも体を売らずとも、女の子はただ若さを売りにするだけでお金を稼ぐことができていたため、よほどの事情がない限りそこまでする必要がなかったのだ。

もう30年近く前の話だが、私が東京で大学生をしていた頃に、二人の家出少女たちと一緒に遊んだことがある。

 

二人は15歳と17歳で、東京近郊にあるという実家にはほとんど帰らず、キャバクラで働いていると話していた。

18歳に満たない年齢の少女たちがキャバクラで働くことは当時でも違法だったが、あの頃はまだ取り締まりが緩かったのだ。

 

だからお金と行き場のない10代の少女たちは、とりあえず水商売で働き始めるのが一般的なコースだった。

特に決まった店に所属しなくても、1日体験入店で1万円の日給がもらえたので、あちこちのキャバクラで体験入店を繰り返すだけでも稼ぐことができていた。

 

今は取り締まりが厳しくなって、18歳未満の女の子たちがキャバクラやラウンジで働くことはできなくなった。

しかし、それゆえに収入を得る方法が売春しかなくなってしまったのだとしたら、風営法、労働基準法、児童福祉法は、一体少女たちの何を守っているのだろうか。

 

その二人の家出少女は、当時私が付き合っていた彼氏の先輩たちと交際していた。

その先輩方は浪人期間を経て大学生になっていたので、年齢はすでに20代半ばに近かったはずだ。

 

学生とはいえ大人である彼らが15歳や17歳の少女たちと交際するのは、今であれば厳しい目を向けられるだろう。けれど、やはり当時はおかしいと思わなかった。

 

高校生くらいの女の子が大学生や社会人と付き合うのはいたって普通のことであり、私が通った女子校では、車を持つ大人の彼氏が居ることはむしろステータスだったからだ。

 

同世代の男の子よりも大人と交際している女の子たちの方が、彼氏にお金をかけてもらえる分ゴージャスであった。

今思えば、当時は若い男の子たちにもちゃんとお金があったのだ。

 

キャバ嬢を彼女にしていた先輩方は、夏はサーフィン、冬はスノボ、夜はクラブ通いとキャバクラ遊びを趣味にしていたが、なぜ普通の大学生にお金のかかる遊びができたかといえば、当時の男の子たちは肉体労働でしっかり稼げたからである。

私の彼氏を含めて体力自慢だった彼らは、週末ごとに引っ越し業界でアルバイトをしており、1日につき3万円の日給を得ていた。

 

もっとまとまった額のお金が必要な時は、大学の長期休業中にリゾートバイトや宅配の仕事をすればよかった。

「短期間で100万円以上の金が欲しかったら、男は佐川へ行け」と言われていたし、ガテン系のアルバイトでも、1万円を超える日給に加えて、現場のおっちゃんたちからは食事と酒にタバコ、時には女まで奢ってもらたので楽しかったと聞いている。

 

現在のように労働基準法が守られておらず、長時間労働を前提としていた時代の話だが、当時の若い男たちは、体力さえあればいくらでも自力でお金を稼ぐことができたのだ。

 

だから水商売の女の子と付き合っているからといって、彼女たちのヒモになるようなことはしなかった。

自分よりも若年で立場の弱い女の子を搾取することは、男の風上にも置けない非道な行為だったからだ。それが、当時の一般的な男子の規範意識だったと思う。

 

けれど、今は事情が違えば意識も変わってしまったらしい。

若い女の子たちが体を売っても昔ほど稼げなくなってしまったように、近ごろは若い男の子たちが体力を売ってもお金にならなくなっている。

 

2018年からは空前のホストブームが来ているそうだが、今の若い男性にとっては体力勝負の仕事をするより、ホストになって若い女性たちからお金を巻き上げる方が、簡単で効率の良い「稼ぐ手段」になったのだろう。

 

それにしても、ごく普通の女の子を捕まえて自分に恋をさせ、心理的に支配して管理し、ホストクラブでお金を使わせるために売春するよう仕向けることをマニュアル化するなんて、30年前はヤクザでもそんな悪どいことはしていなかった。

 

フェミニストたちは萌え絵の規制を叫ぶよりも、こうしたタチの悪いホストクラブの規制強化を社会に訴え、政治に働きかけるべきなのではないのだろうか。

令和の歌舞伎町における食物連鎖のピラミッドでは、トップに君臨するのはホストクラブで、底辺に位置するのはモテない男や孤独な中年男性なのだそうだ。

 

ホストに狂った女の子たちは、無限のお金を必要としている。

売春の稼ぎでは追いつかず、お金を持った中年男性に狙いを定めて色恋を仕掛け、情にほだされたオジサンたちから財産を奪ってホストに貢ぐ。

ターゲットになるのは、女慣れしておらず、優しく、底なしの寂しさを抱えている40代〜50代の男たちだ。

 

彼女たちはそうしたカモを効率よく探す為に、自ら積極的に売春をする。

最近では、買春客のオジサンを罠に嵌めてお金を引き出す手法が情報商材化されており、コンサルティングをする女性まで居るというから開いた口が塞がらない。

 

そうした女の子たちにとって、自分にお金を出させる男は尊敬と恋愛の対象だが、自分にお金を支払う男は軽蔑の対象で、人間以下だとでも言うのだろうか。

嘘をついて恋愛状態にさせ、全財産を奪い取った相手が破滅しようが、彼女たちは全く心を痛めない。これではホストと同じ穴のムジナである。

 

もしかしたら、これまでイメージされてきた純粋な被害者である女性も、圧倒的な強者である男性も、もはや令和の繁華街には居ないのかもしれない。

 

少なくとも、これまでと同じ考え方や同じアプローチの仕方では、女の子たちが体を売って成り立っている食物連鎖のピラミッドは崩せないのではないだろうか。

果たしてColaboの炎上がいつまで長引くのか、仁藤夢乃さんと暇空茜さんとの対決がどう決着するのかは、今なお皆目見当がつかない。

 

けれど、今回の騒動をきっかけに、私たちは現場で起こっている現実を公正な目で捉え直し、問題を現実的に解決していく方法を、改めて社会全体で考えていかなければならないと思う。

 

 

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(2024/1/22更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

マダムユキ

最高月間PV40万のブログ「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。

Twitter:@CrimsonSepia

Photo by :Dick Thomas Johnson