コンサルタント時代、私のクライアントの多くは、中小・零細企業でした。

数多くの会社に訪問しましたが、その時、一つ、気づいたことがありました。

 

それは「中小企業っぽさ」の原因です。

 

例えば「スタートアップ・ベンチャー」と「中小企業っぽい感じ」とは、何が違うのか。

「大企業」と「中小企業っぽい感じ」と何が違うのか。

 

もちろん、法律的には、中小企業庁のページには以下のような定義があります。

しかし、こういった定義はあくまでも形式的なものであり、「中小企業っぽさ」を出しているのは、他に原因がありました。

 

このように言うと、中小企業は「ワンマン経営」とか、「経営が不安定」あるいは、「古い」といったイメージがわく方もいるかもしれません。

 

しかし、規模が小さくても、いわゆる「中小企業っぽくない」会社は数多くありますし、大企業であってもワンマン経営の会社は数多くあります。

また、経営がとても安定していて、キャッシュをたくさん抱えている中小企業もたくさんありました。

さらに、最近できた会社でも「中小企業っぽさ」が醸し出されている会社はたくさんあります。

 

では、いわゆる「中小企業っぽさ」は、何から生まれるのでしょうか。

 

「中小企業っぽさ」とは何か

これは私見ですので、異論のある方もいると思いますが、あえて断定します。

「中小企業っぽさ」とは「すぐに目に見えて売り上げのあがること」にしかお金をかけない(かけられない)会社のカルチャーのことです。

 

規模や文化、ワンマン社長か否か、キャッシュリッチかどうか、そういった話とは全く関係がありません。

「で、それってすぐに儲かるの?」

というセリフが出る経営者のもとで育つカルチャーが、その本質です。

 

いくら社員が多く、こぎれいな会社であっても、「すぐにリターンを求める姿勢」が顕著だと、必然的にこういう会社からは、「小さくまとまって停滞している雰囲気」が醸し出されます。

 

なので、停滞している中小企業が、「オーナー企業に多い」というのは、特に否定しません。

ダメなオーナー企業は私財と会社のカネが区別されていないことも多いため、は自分の懐が痛む可能性のある「すぐにリターンが見えない話」にほとんど乗ってこないからです。

 

逆に、真のスタートアップは真逆のカルチャーです。

彼らは「いつ儲かるか全くわからない話」に、身を投じているわけですから、「すぐにリターンを求める」のとは全く姿勢が違います。

また、大企業でも保守的すぎるところは「実質は停滞している中小企業だなーこの会社」と思うことが多いです。

 

特に顕著なのは「人」への投資

特に、上でいうところの「中小企業っぽい会社」は、人への投資をほとんどしません。

直接のリターンが見えないですし、いつ将来に不安を抱いた社員が辞めるかわからないからです。

 

例えば社員への教育です。

私はかつて、コンサルティング会社で、企業向けの教育研修を売り歩いていたことがあります。

 

しかし、ご想像の通り「研修」という商材は、上でいう「中小企業っぽい会社」には売れません。

「研修」と「業績」の間には、直接の相関がないからです。

 

研修はあくまで「本を読む」のと同じく、社員へのインプットの一部を担うだけです。

ですから、「研修を受けると、業績が上がるの?」という質問ほど、くだらない質問はありません。

「常識的に考えて、いきなり業績があがるわけない」のです。

 

しかし、長期的にみるとどうでしょう。

社員へのインプットをはじめとした、能力強化を軽視した会社の末路は「停滞」です。

 

新しい事業をやろうにも、それを担う人がいないからです。

また、人へ投資しませんから、給料も一般的に低く、能力の高い人も集まりません。

 

だからたいてい、社長が手掛けている間に本業が忙しくなって中途半端になって終わるか、能力のない社員が掛け持ちでやって、立ち上がらない、という結果になります。

 

もちろん、会社が停滞しても、現在の安定事業が続いている限りは富はオーナーに集中します。

 

この「富ばかりがオーナーに蓄積し、社員は能力の低いまま、会社が停滞する。だから将来性がない」状態。

それこそが「中小企業っぽい会社」の正体です。

 

もし今勤めているところが、こういう会社なら、絶対に給料は上がりません。

すぐに転職することをお勧めします。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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Photo:Alex Kotliarskyi