学校でもそうだったが、社会に出るととくに、「聞くちから」を要求されることが多い。

要は、聞き上手になれということだ。

 

でも、聞き上手ってどういうことをいうんだろう。

 

巷では「相槌のさしすせそ」「相手の目を見てリアクションを大きく」「質問力を上げて会話を盛り上げよう」なんてテクニックをよく耳にする。

 

とはいえそれらは「聞き上手になるには」の答えであって、「聞き上手とはなにか」の答えではない。

 

さて、では「聞き上手」とはなんなのか。

今日はディズニーランドですれ違う男女の例を挙げつつ、「聞き上手とは」について書いていきたい。

 

解決を求める男性と共感を求める女性、どうちがう?

さっそくではあるが、『人は聞き方が9割』という本の一文を紹介しよう。

「ねぇ、あなた、ちゃんと聞いてる?」
「うん、聞いてるよ」
「聞いてない! あなたはいつも私の話をちゃんと聞いてくれないじゃない」
「ちゃんと聞いてるだろ! 何が不満なんだよ?」

このやり取りは、古今東西、日本全国至るところで繰り広げられている、誰もが一度や二度は目にした、もしくは体験した光景でしょう。(……)
この会話例の男性のように「話を聞いてる」と言う人の多くは、本当に話を聞いています。
ただし、「聞く」ということの解釈に違いがあるのです。
「話を聞いてる」と言う人の多くは「言葉」を聞いています。つまり内容はしっかり把握できているのです。
しかし、「話を聞いてほしい」と言う人の多くは、その話の奥にある「感情」を聞いてほしいのです。

よく、「男性は解決したがり、女性は共感を求める」と言われる。

それがきっと、「言葉を聞く」と「感情を聞く」のちがいなのだろう。

 

「ちゃんと話を聞いているのに、なにが気に入らないのかさっぱりわからない」と首をかしげる男性は言葉をそのまま受け取っていて、「わたしの気持ちをわかってくれなくてムカつく」と腹を立てている女性は、言葉の奥の感情を汲んで肯定してほしいのだ。

 

解決したがる人と共感する人を比べたら、後者のほうが聞き上手に思える。

でも正直、ただひたすら「そうだねぇ」と同意し続ける人が聞き上手かと言われると……。いやまぁ、話を聞いてくれるだけでありがたいこともあるけど、ぶっちゃけ微妙だよね。

 

大きなミスをして落ち込んでいる友人の話、あなたならどう聞く?

たとえば友だちが、仕事で大きなミスをして落ち込んでいるとしよう。

 

言葉を聞いて解決したがる人は、「大きなミスをした友人」に対し、「次はこうすればいい」「起こってしまったことはしょうがない」とアドバイスする。

一方、感情を聞いて共感する人は、「落ち込んでいる友人」に対し、「大丈夫?」「気持ちわかるよ」と励ます。

 

そう、「大きなミス」か「落ち込んでいる」かのどちらかに比重が偏るのだ。

でも求められてないアドバイスをする人も、ひたすら同意するだけの人も、聞き上手とはいえない。

 

では、聞き上手ならどうするんだろう。

きっと言葉と感情を両方聞いて、「感情を共有」してくれるんじゃないかと思う。

 

「感情を共有するって共感するのと同じじゃない?」と思うかもしれないが、まったくちがう。

共感とは肯定することで、共有は一緒に所有することだ。

ほら、「過去に共感する」のと、「過去を共有する」のはまったくちがうじゃないですか。そんな感じ。

 

自分自身が共感するかは別として、「相手がどう思ったか」を理解し、そのまま受け止めて、そのときの感情を一緒に共有してくれるのが、聞き上手なんだと思う。

 

買い物中の男女の会話は、なぜこうもズレるのか

……なんだか象徴的な話になってしまったので、身近な例として、「男女カップルがディズニーランドに行ってすれ違うあるある」を挙げたい。

ちょっと長いが、『恋するディズニー 別れるディズニー』という本から引用させていただこう。

男性だって、グッズを見るのは楽しいです。お土産物を買うのだって楽しい。これを誰にあげよう、こっちは誰にあげようと選ぶのは楽しいです。
ただ、男性はあくまで「最終的に目的があって」グッズを見ています。(……)
でも、女性の場合、「見ているだけで楽しいから、ひたすら見る」ということが多いようです。(……)
女性は、30分以上いろいろ見てまわったあげくに「今日はいいや」と何も買わないでお店を出ていったりします。
男性は衝撃を受けます。言ってしまえば、裏切られた気持ちになります。
え? 買わなくていいんですか。欲しそうだったじゃないですか。
そう考えてしまいます。
「見るだけで満足しちゃった」と言われても、言葉の意味はわかりますが、その心情の細やかさまではわかりません。
また、女性は、男性がそういう”もやもや感”を抱きながら付き合っているということに、あまり気がつきません。
女性が女性同士で買い物にいくと、そういう買うんだか買わないんだかどっちともつかない行動が楽しくて、それだけで盛り上がるわけで、「女性同士ではとても楽しいことを、好きな彼氏ともやりたい」とおもって、彼氏を連れてきてくれるわけですね。(……)
「どっちがいいとおもう?」とショッピング中の女性に聞かれた場合の正しい答えは「きみはどっちがいいとおもってるんだい?」と聞き返すことである、なんて知恵を仕入れたのは、ずいぶん大人になってからです。
出典:『恋するディズニー 別れるディズニー』

これも冒頭の夫婦のやり取りと同じく、男性は言葉を聞いて、女性は感情を聞いてほしいと思ってすれ違っているパターンだ。

男性は目的をもって買い物することが多いから、彼女が「買い物したい」というと、言葉通り「なにか買うんだろうな」と思う。

 

でも彼女は、30分以上もウロウロしたくせに、なにも買わない。

え、じゃあなんだったの? ウィンドウショッピングなら「どっちがいい?」なんて聞いてくる必要ないじゃん、と不思議に思う。

 

一方の女性は、友だち同士で「どっちがいいかなぁ」「あれもこれもいいなぁ」とキャッキャウフフするのが楽しいから、大好きな彼氏ともそういう素敵な時間を過ごしたい。

それなのに彼氏は「結局買わないの?」とか「どっちも変わらないじゃん」なんて言ってくるから、全然楽しくなくてムッとする。

 

あるあるだよね……。

 

もちろんこれは、例として「男性(彼氏)」「女性(彼女)」と表現しただけで、逆の場合もあるし、同性同士でも起こりうる。あくまでひとつの例だ。

 

コミュニケーションでは相手の感情を共有することが大事

このディズニーの話でおもしろいのが、「最適解は『きみはどっちがいいとおもっているか』を聞くこと」で締めくくられているところ。

そう、それこそがわたしが思う聞き上手の本質、「感情の共有」なのだ。

 

彼女の言葉だけを聞いて、「なにを買うのか決めたいんだな」と思い、どっちを買うべきかという答えを提示するのは得策じゃない。

彼女は彼氏とキャッキャウフフしたいのであって、相手に選んでほしいわけじゃないのだから。

 

逆に、男性が「どっちもかわいいね」「迷っちゃうね」と完全肯定すると、女性は「いっしょに悩んでくれてない! どうでもいいの!?」と物足りなくなる。

そういえばわたしがウェディングドレスを選ぶとき、夫が「どれもいいんじゃない、どれもかわいいよ」と投げやりだったので、「興味ないの!?」と言ったら、「ドレスのちがいなんてわかるか!」と言われ、大げんかしたっけな……。

 

だから最適解は、「きみはどう思う?」なのだ。

 

コミュニケーションには、解決も共感も必須じゃない

ディズニーでたとえるなら、こんな会話だろうか。

 

「うーん、どっちにしようかなぁ」
「なにで迷ってるの?」

「これはかわいいけど、ちょっと高いよね。でもこっちは持って帰るのが大変そうだなって」
「ある程度予算あるんじゃなかったっけ」

「でもこの後も友だちにもいろいろお土産買いたいから……」
「ああ、いつも一緒にいるAちゃんとかBちゃん? 何を買うの?」

「キーホルダーと、缶がかわいいクッキー頼まれてる」
「缶がかわいいってどういうこと(笑)」

「えー、ほら、こういうやつ。これなら食べた後もなにかに使えるでしょ?」
「今まで缶なんて気にしたこともなかったな。なにに使うの?」

「たとえばこれなら、小さい缶だからアクセサリーとか入れられるし……」
「そういえば机の上に、似たような缶のペン入れがあったね」

「そうそう、それは前にAちゃんとディズニー行ったときに買ったの」

 

このやり取りでは、聞き役は相手に一切共感していない。

彼役の人は、彼女役の「お土産を買いたい」「どっちもかわいい」という気持ちに、まったく共感していないのだ。

 

でも、だからといって、値段や大きさを踏まえて「こっちを買ったほうがいい」と解決策を提示しているわけではない。ただ相手に、どう思ってるか聞いているだけ。

 

それだけなのに、なんだかすごく楽しそうに買い物しているように見えないだろうか。共同作業している感というか。

それは彼役の人が、相手がなにを、なぜほしくて、なにに迷っているかという気持ちを理解しようとしているからだ。

 

聞き上手になれば人間関係がうまくいきやすくなる

とはいえ、興味のない買い物に付き合うのはだるいし、相手に気を遣って会話するのは面倒くさい。自分で決めろよ、ちゃちゃっと買えよ、と思うこともある。

 

もしかして聞き上手は、相手に合わせ続けて損をするんじゃないだろうか。

そんな考えが一瞬頭をよぎったけど、たぶんそうじゃないのだ。

 

すれ違いや誤解があっても、相手の感情を理解する姿勢があれば、相手がなにに怒っているか、悲しんでいるかを知ることはできる。

その姿勢が相手に伝われば、きっと相手も、こっちのことを理解しようとしてくれるだろう。

自分のことを理解しようとしてくれる人をあえて傷つける人は、あんまりいないからね。

 

そうすれば人間関係はうまくいきやすくなるし、それによってトラブルやストレスもきっと減るはず。

聞き上手というのは、相手をいい気持ちにするための奉仕テクニックのように思えるが、その実、自分にとってのメリットが大きいのだ。コミュニケーションを円滑にするという意味で。

 

まぁ、どうやっても話にならない人はいるけど、それはしょうがない。

相槌だのリアクションだの質問力だのは、あくまで「感情を共有している」ことをどう示すかのテクニックであって、聞き上手の本質は、相手の感情を理解する姿勢があるかどうか。

 

つまり聞き上手の第一歩は、「あなたはどう思う?」と相手の意見をたずねてみることなのだ。基本中の基本ではあるが、結局基本が一番大事ということである。

 

 

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【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

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