面接のときに志望動機を聞かれて、「ウザすぎ」というツイートを見た。

 

そうだなあ、と思う。

ちょっと言葉が強いけれども、ほぼ同意だ。

 

ぶっちゃけ、私の場合で考えても、新卒の時にコンサルティング会社に応募した理由は、「(奨学金返すために)給料が良かったから。」「頭使う仕事がいいかも」くらいだった。

 

おそらく、面接では志望動機を聞かれたと思うが、何を答えたのかは全く覚えていない。

適当に作り上げた理由を、覚えているわけがないのだ。いま覚えているのは結局「金」と「雰囲気」で入りたいと思っただけ。

 

ただ、このように言うと、「本音ではなく、建前を言える人が欲しいのだ」と言う意見もある。

 

まあ、建前が言えるのは重要な能力で、仕事では役に立つ。

 

ただし、建前を言えない人が長期就業が不可能なのか、と言えば、そんな統計もないし、経験的にも「正直さ」が評価される場面も多いと思う。

 

そんなことよりむしろ、「テンプレ」に従った志望動機を聞くために、面接の貴重な時間を充てるのが「本当に必要?」と思う。

 

「意欲」やら「建前」やらはどうでもいい

はっきり言うと、「意欲」とか「建前」とかは、ほんとうにどうでもいい、と思う。

簡単にウソがつけるし、それを確かめるすべもないからだ。

 

「やる気に満ちています」

「御社が第一志望です」

「あこがれの職業でした」

 

そんなことを言いながら、半年もたたずに辞めていった人は数えきれないほどいる。

実際、そんな繕いの理由よりも、

 

「これができます」

「こんな経験をしてきました」

「こんなチームで働きました」

 

という「できること」「やってきたこと」「研究したこととその成果」などの、事実ベースの情報のほうが入社してからはるかに役立つし、採用してからの配属も決めやすい。

 

だから、私が面接官をやっていた時は、聞きたいのは「意欲」や「建前」ではなく、「事実」と条件面の「要求」だった。

そのほうが情報として圧倒的に役に立つのだ。

 

なんで企業は「志望動機」が好きなのか?

じゃあなんで、こんなに「志望動機」を聞く会社があるのか?

 

それはたぶん、シンプルな理由

「面接官がスッキリしたいから」

だけだと思う。

 

カリフォルニア大学のフィリップ・テトロック教授によれば、人間は「つじつま合わせ」をよく行うという。

誰かがある事実についてかなり自信があると主張する場合も、その人物が頭の中で辻褄が合うストーリーを組み立てたというだけであり、必ずしもそれが真実とは限らない

つまり、面接官は「志望動機を聞く」ことで、応募者の話の「つじつま合わせ」がやりやすくなる

 

「今の回答は、志望動機と一致する」

「やりたい仕事がマーケティングなのは、志望動機と合致するな」

「第一印象通り、志望動機もしっかりしているな」

 

だが、この「つじつま合わせ」には欠点もある。

テトロックによれば、「情報が少なければ少ないほど、自分の決定に確信を持ててしまう」がゆえに、客観的な判断ができなくなる。

 

面接官は、次第に志望動機が真実かどうか、あるいはその後の回答が真実かどうかなど、どうでもよくなり、「志望動機などの、話のつじつまが合っているかどうか」だけを気にするようになる。

 

著名な学者が指摘するように、その内容の真偽はさておき、である。

カーネマンとクラインも指摘しているように、直観を助けるような有効な手がかりが十分あるか否かを見きわめるのは通常難しいのだ。

そうなった時、ほんとうに「面接」に意味はあるのだろうか?

 

私は、面接官が貴重な面接の時間を使って、「話のつじつま合わせ」ばかりをやっているシーンを数多く見てきた。

 

だから、繰り返しになるが、テンプレ通りの「志望動機」を聞くのに本当に意味があるのかといえば、私は明確に「ない」と思う。

 

 

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(2025/5/12更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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