皆さんこんにちは、しんざきです。最近はアーマードコア6にハマってまして、バルテウスに勝てる気配がまるでありません。楽しいですよねAC6。

さて、ちょっと面白いなーと思ったことがあったので記事にしてみます。

 

8月半ば、夏休みもぼちぼち中盤を過ぎた頃のことです。

 

リモートワークを終えて階下に降りてみますと、リビングの床をごろんごろんと、かなりの距離にわたって勢いよく転がりながら、次女が何やら悩んでいました。

困った時に周囲に分かりやすく発信してくれるのはしんざき家の子どもたちに共通の美点でして、親としては問題解決の為の声掛けがしやすくって助かっております。

 

いつも通り「何か困ってるの?」と聞いてみたら、「かせつ」という三文字が返ってきました。

ビルの足場でも作るのかなと思ったところ、よく聞いてみると「自由研究で、ちゃんとした仮説の作り方が分からない」というのです。

 

私「自由研究で仮説立てるの?」

次女「先生が、自由研究、調べただけで終わりって人が多いって」

私「ダメなの?」

次女「調べるだけだったらネットですぐ出来ちゃうから研究にならないって。ちゃんと仮説をつくって、確かめて、まとめまで

やりましょうって」

私「ちゃんとやりたいの?」

次女「ちゃんとやりたい」

なるほど。

 

他にも幾つか質問しまして、聞いたことを整理してみると、

 

・今年の自由研究は調べものだけなくて、ちゃんと「仮説」を作るように言われた

・仮説、確かめ、まとめの章立てで作れと言われているらしい

・テーマは「人の声」にしたい(声帯について興味があるらしい)

・やる順番も教わっていて、「まず仮説作り」と言われた

・でも仮説の作り方がよくわからない。ちゃんとした仮説が出来ない

 

ということでごろごろ悩んでいたと。

 

随分本格的だな、小学校でそんなことやるんかな、と思ってちょっと調べてみたところ、最近の小学校の自由研究って昔とかなり違っていて、ちゃんと「動機-仮説-検証-考察」の思考メソッドを教えてくれている学校もあるんですね。

もしかするとAI対策みたいなこともあるのかも知れないですが。

 

私が小学生の頃はこれより遥かにいい加減だったというか、光栄の「三國志」で火計燃やしまくりプレイ日記書いてても特に誰からも怒られなかったような記憶があります。

そこから考えると、最近の小学校、大変頑張ってて素晴らしいですね。

 

それはそうと、次女が何に悩んでいるのかは大体わかりました。

これについては、先生の説明が足りなかったのか、あるいは次女の理解が及んでいなかったのか分かりませんが、次女、どうも「ちゃんと仮説を作る」という言葉で引っかかっていたようです。

 

私「仮説って仮に立てる説だから、取り敢えずで作ってもいいんじゃない?」

次女「でも、ちゃんとって言われたし。間違ってたら書けない」

 

という言葉もありました。つまり、「研究」として正しいことを書かないといけないし、けれど何が正しいのかはちゃんと確かめてみないと分からない。

確かめる前にちゃんとした仮説を立てるってどういうこと、とぐるぐるしてしまっていたようなのです。一種のデッドロックですね。

 

以前この記事でも書いたんですが、次女、元々生真面目な性質なんで、「間違ったことを書きたくない」という意識がかなり強いんですよ。

元々、「間違っていてもいいものを作る」という機会にあまり慣れていないんですね。

次女が「クイック&ダーティ」を覚えた日

私はいつも「勉強は間違える為にやるんだよ」「間違えれば間違える程パワーアップ出来るから、間違えた方がお得だよ」と言ってるんですけど、次女って「間違える」「間違えたものを提出する」というのがどうも物凄く嫌みたいで、家庭内での自習プリントを採点してあげる際、私が×をつけそうになると「ああああああそこ直すから待ってーー!!」って無理やり横からインターセプトしたり、数問間違えたことで泣きべそになったり地団太を踏む、というようなことは昔からしばしばあったんです。

当たり前のことながら、仮説は思考の方向性を明確にするものでこそあれ、「間違っていてはいけない」ものではない。

「ちゃんと仮説を作る」というのは、ステップをきちんと踏むという意味であって、始めから正しい命題を導かないといけないという意味ではない。その辺は教えてあげたいと思いました。

 

そこで、

 

私「次女ちゃんアルゴ(限られた情報から、相手の数字を推理していくカードゲーム)好きだよね」

次女「好き!」

私「アルゴで当てる時、相手の数字分かんないけど、これとこれが分かればはっきり分かるな、みたいに考えて推理するよね」

次女「する」

私「間違えてたらリトライするよね?」

次女「うん」

私「それとおんなじ。仮説を作る時は、「その仮説は正しいか」は考えなくていい。まず、「その仮説は確かめられるか」だけ考えるといい。「良い仮説」っていうのは、「ちゃんと確かめられる、確かめるやり方が明確な仮説」のこと」

 

と教えてみました。

これを読んでいる皆さんには釈迦に説法かと思うのですが、科学的思考においては

 

・動機/目的を明確にする

・検証可能な仮説を作り、分析の方向性を明確にする

・データを収集し、分析・検証する

・仮説がデータに合致しているか考察し、結論を導く

 

というステップが非常に重要になります。

 

で、その際考えなきゃいけないことは色々あるんですが、重要なのは「仮説の妥当性」ではないんですよね。

もちろん仮説が正しいことが証明出来るのは非常に嬉しいんですが、科学的思考の上では「検証可能性」こそ重要。仮説は、「何をすればその仮説が確かめられるか」が明確で、実験やデータ集めに具体的な方向性を与えてくれるものでないといけない。

 

もちろん仮説を評価する際は他にも色んな尺度があって、例えば具体性とか、仮説が立証されることによる意義とか、論理的一貫性なんかも重要なんですが、それ以前に「研究の方向性を定める」ものでないと仮説の意味がない。

 

そんな話をしてみると、なんとなく方向性が定まったのか、「じゃあ、声の出し方と聴こえ方で確かめられるか考えてみる!」と言いました。頭が切り替わったようです。

 

その後は、私に「あーーって声出して!」と言いに来て、いきなり私の首を締め始めたりして大変だったんですが、何はともあれ自由研究は無事に完成したようで、夏の一番の強敵を無事倒せたことは喜ばしいなーと考える次第です。

 

ちなみに、長女は長女で、先生に言われたことなど全シカトして「お気に入りオリジナル料理レシピ集」みたいなものを嬉々として作っていました。

やりたいことが明確なのは大変良いことですが、一応体裁は最低限整えさせまして、料理文化の継承がどうとかいう理由をでっちあげていました。まあ、「まず作る」が出来ているのは偉いですよね。

 

夏休みの自由研究を長女次女が片付ける過程という、ほんのちょっとしたことでした。

 

***

 

話は変わりますが、しんざきは基本DB屋でして、DBを設計したり実装したり保守したり、という仕事もするんですが、データ分析支援やデータ利活用の支援をすることもあります。むしろ最近はそっちの方が多いです。

 

で、色んな組織の方と一緒にデータをいじっているとよくわかるんですが、「仮説-検証」の重要さ、みたいなものは皆さん理解してらっしゃるんですよね。

仮説を証明する為にデータの裏付けが重要、なんてこと、分かっていない人殆どいない。

 

ただ、

「仮説に反するデータが出た時、きちんと仮説を見直せる/放棄出来る」

という人がものすっっっごく少ない。「このデータから考えるとこの仮説は間違いということが証明出来ましたね」「じゃあ「間違っていた」という結論を出しましょう/別の仮説を考えましょう」が出来る人が、なかなかいない。

 

本来「仮説が間違っていた」というのは立派な結果であって、検証出来たということ自体が重要なんですが、その結果を認められず、「このデータは無視して、仮説に合致したデータを探しましょう」なんてやらかしてしまう人、全然珍しくないんですよ。

じゃあ仮説検証は何のためにあるんだ、という話なんですが。

 

もちろん、仕事の上で、「正しい結果」が求められる場合が多いこと、時間も工数も限られていることは分かります。よくわかります。仮説の見直しなんてしてる暇あるか、って場合もあるでしょう。

 

でも、それは「仮説検証」の場で考えるべきことではない。反証を認めないならば、最初から検証自体やらない方が遥かにいい。

 

思うに、「間違ったものを作っても構わない」「間違いが確認出来て、再検証出来ること自体が重要」という思考って、当たり前のようで案外みんな馴染んでいなくって、いざそういう機会に立った時どうすればいいか分からなくなる人も多いんじゃないかなあ、と思います。

そういう経験を積むことが出来るから高等教育って重要なんだ、という話でもありますし、もっと早い内から科学的思考に馴染んでおけるなら更に良いのでしょう。

 

なので、今回長女次女が夏休みの宿題で「動機 – 仮説 – 検証 – 考察」の機会に立てたことは非常に良いことだし、学校も頑張ってくれていてありがたいなあ、と。親として、今後もこういう機会を作ってあげたいなあと。

そんな風に思った次第なのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Jessica Lewis