いままでわたしは、「リーダー=頼りになる人」だと思っていた。

まわりが「ついていきたい」と思うような人格と能力を兼ね備え、みんなを引っ張っていってこそリーダーだ、と。

 

……でももしかしたら、リーダーって、頼りにならなくてもいいのかもしれない。

 

頼りにならないリーダーでもうまくいった

とあるゲームで、わたしはTAチームを結成した。

TAとはタイムアタックの略で、いかに早く攻略できるかを競う遊びだ。

 

条件が合うチームがないので自分で作ったのだが、チーム経験が豊富なメンバーに対し、わたしはチームに所属することも、ましてやリーダーをするのもはじめてという状態。

 

なにかを決める場面でも、

「みんなはどう思う?」

「どうしたらいいか迷うね」

「うーん、どうしよう……」

と、あたふたするばかり。

 

まったく頼りにならない、ダメなリーダーである。

こんなんで大丈夫だろうかと、最初は心配でしょうがなかった。

 

でも案外どうにかなるもので、だれかが「こうしませんか?」と提案すると、「いいんじゃない」「問題ないと思う」とそれぞれ意見を出してくれるので、「採用~」とすぐに決まる。

 

ミスが続けばだれかが「気分転換しますか」と言ってくれるので、「じゃあ休憩~」と言うだけ。

わたしが頼りにならないから、だれもわたしを頼ろうとせず自発的に動いてくれる。いや~、ありがたい!

 

ヒエラルキー型のリーダーに不満が溜まるように……

その後、活動期間が終わりチームを解散。とあるチームに誘われ、今度は別チームにメンバーとして加入することになった。

 

そのチームのは典型的なトップダウンで、決定権はすべてリーダーにある。

なにを聞いても、リーダーが「こうする」「〇〇さんはこうして」とすぐに判断。困ったらリーダーに聞けばいいし、リーダーの言うことをやればいい。

めっちゃ頼りになるなぁ、それに比べ自分は優柔不断で迷惑をかけていた……と反省した。

 

『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』という本では、ヒエラルキーの頂点に君臨するトップダウンのリーダーを、こう評している。

日本社会における組織の形は、これまではトップダウンによるヒエラルキー型が一般的でした。リーダーとは「長」という肩書を持つ人や、組織をまとめるポジションを意味することが多く、(……)リーダーたるもの、行き先や行き方を迷うことなく先頭で示し続け、人々はその背中に憧れ、尊敬しながらついていくーー。
出典:『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』

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まさにそのリーダーもこんな感じだった。俺についてこい系。

しかし最初は頼りになると思っていたが、だんだん、リーダーへの不満が溜まっていった。

 

だれかが意見を出しても、話し合うことなくリーダーが採用か却下かを決める。リーダーが決めるのだから、意見を出す必要がなくだれも自分で考えなくなる。

 

良くも悪くもリーダー次第なので、リーダーと合わなければ、すべてに納得がいかない。が、それを言ったところで話し合いにはならず、「リーダーに従うか否か」の二択。

こんなの、リーダーさえいればメンバーがだれでも同じじゃん。ただの駒って感じで、おもしろくない。

 

完全にやる気をなくしたわたしは、思ったのだ。

リーダーは別に、みんなを引っ張らなくてもいいんじゃないか、と。

 

ネットワーク型のリーダーのよさ

同書では、ヒエラルキー型に対し、ネットワーク型のリーダーなるものも紹介されている。

先頭に立って引っ張るというよりは、「どうすればいいと思う?」と、チームや相手の意見を聞きたがります。具体的なアクションについても、指示や命令ではなく、「私はこうしたい・こうしてほしい」といったニュアンスで伝えます。
また、自分が完璧でないことを理解しているので、相手にも完璧を求めないし、競争での勝ち負けや優劣をつけることに価値を置かず、常にフラット。
チームのメンバーは、「いつも頼りにしている」という意識はあまりないでしょう。むしろ「自分が支えている・フォローしている」くらいに思っているかもしれません。
でも、一緒にいるとなぜか物事が「うまくいく」のです。

そう、自分で言うのもアレだけど、わたしのチームがまさにこんな感じだった。

 

わたしに任せたらなんにも決まらない。だから、みんなが自発的に動く。

しぜんと役割分担ができて、得意な分野でそれぞれフォローしあう関係がうまれる。

 

みんな役割があるから、メンバー同士「この人がいてくれてよかった」と思うし、それがいい雰囲気をつくっていく。

個々ができることを積極的にした結果、想定よりもずっと早く目標タイムを達成したし、活動終了後も遊ぶくらいの間柄になれた。

 

そういう意味で、ヒエラルキー型のような「ついてこい系」じゃなくとも、案外リーダーって務まるんだなぁ~と思ったのだ。まぁ、まわりに甘えまくってるけど。

 

ネットワーク型リーダーがやるべきこと

もちろんこのやり方では、リーダーじゃない人が仕切り始めて軋轢が生まれたり、何も決まらずグダったりする可能性はある。

でもわたしのチームは、そうはならなかった。

 

手前みそで恐縮だが、それはわたしがダメなリーダーなりに、2つの仕事をしていたからだと思う。

 

まずひとつめは、メンバー選び。

このタイムを目標にする、そのためにこういう練習をする、こういうやり方は嫌いなので採用しない、こういう雰囲気でやりたい。

時間をかけて丁寧に説明し、それを理解して共感してくれる人だけを集めた。メンバー集めに関しては一切妥協はしていない。

 

みんなわたしの考え方に共感して入ってくれているから、「俺の言う通りにやれ!」とリーダーぶる人はいなかったし、「俺の意見を通してくれなきゃヤダ!」と駄々をこねる人もいなかった。

メンバーに頼る場面が多いぶん、人選びは慎重に。これが功を奏したのだと思う。

 

ふたつめは、ルールを守らせること。

いくら慎重に人を選んでも、実際に活動するなかで、考え方のズレが生まれることはある。とあるメンバーの仕事が忙しくなって予定通り活動できない、なんてこともあった。

 

そうなったとき、いくら頼りないリーダーだったとしても、方針やルールにそぐわない言動はしっかり注意しなきゃいけない。

それでも相手がわかってくれない、もしくは改善できる状態になければ、クビにする必要もある。

 

ここをあいまいにすると、みんなが無秩序に自分都合でいろんなことを要求してくるし、ルールを守っている人のモチベーションが下がる。

だから、ルールの徹底だけは、ルールを決めたリーダーがしなきゃいけないのだ。

 

そうすれば、メンバーも「いざというときはちゃんとリーダーがやってくれるんだな」と安心できるし、ルールどおりの運営をすることでチームの空中分解も防げる。

 

結果、わたしの方針に共感してくれる人が集まり、ルールが機能し、いい雰囲気でやっていけた。

もちろんまわりの協力ありきだけど、ここに関してだけは、リーダーとしていい仕事ができたと思っている。

 

リーダー=頼りになる人、じゃなくてもいい

最後に、ヒエラルキー型とネットワーク型のリーダーについてのくだりを引用したい。

僕はヒエラルキー型は「愛情と信頼で機能する」のに対し、ネットワーク型は「規律と秩序で機能する」と考えているのですが、よく「この説明って逆じゃないの?」と聞かれます。(……)
これは、ヒエラルキー型は人間関係がトップダウン&ボトムアップだからこそ、そこに愛情や信頼がなければ正常に機能しないということ。
逆に、個性の自由や自己判断が求められるネットワーク型では、規律や秩序があることで、安心して自らの強みを活かすことができます。
出典:『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』

わたしが入ったヒエラルキー型のチームでは、リーダーが引っ張っていたものの、そこには信頼関係がなかった。だからリーダーに不満が溜まったし、「自分なんていらないじゃん」と思ってしまった。

 

一方わたしのチームは、みんな役割分担してフラットな関係だったけど、ルールがしっかりしていたから成り立ったと思う。

……とまぁ自分のチームを自慢しまくっているが、そうしたくなるほどいいチームだったのだ。許してほしい。

 

とはいえこれは、上下関係のないゲームにおけるチームの話。

実際の仕事となれば、また状況は変わる。

 

また、わたしはヒエラルキー型のそのリーダーとは合わなかったけれど、「全部決めてくれてラクだわ~」という人だっているし、同じヒエラルキー型でも、信頼関係をもとにうまくやっているチームもある。

だから、どっちのほうが優れているという気はない。

 

ただ、「リーダーだからしっかりしなきゃいけないというわけでもないんだな」という話だ。

「この人についていけば安心」というリーダーはかっこいいが、「このリーダーを支えてやらないと!」とメンバーに支えてもらうリーダーも、案外うまくいくかもしれない。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

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