「オレは社員のことを第一に考えている」という経営者は少なくない。私はそのように言う経営者を何人も見てきた。
いや、経営者だけではない。役員や、管理職であってもそのように語る人はそれなりに多い。
本人がそう思っているならば、そういえば良い。誰も止めはしない。
しかし、上がそのように考えていても、得てして一般社員とは相当のギャップがある。もちろん例外もあるが、ストレートに言えば、多くの会社で
「どんなに上が社員のことを心配していても、社員は上のことを心配することはない。」
ということだ。
具体的に言おう。
社長は社員のことを心配し、きちんとスキルが身につくように精一杯良い仕事を与える。しかし、一般社員はそれに対して、「当然だ」と考えている。
部長は自分の時間を犠牲にして、社員が目標達成できるように貢献する。しかし、一般社員は「それが部長の仕事だ」と思っている。
そんな具合だ。
まだ人数も少ないスタートアップ企業では、お互いの信頼と尊敬、という理想の形が成り立っているかもしれない。
しかし、人数が増えるにつれ、そういった事は徐々に薄まり、純粋な思いや信頼は埋もれてしまう。それが、「会社が大きくなる」ということだ。
不幸なのは、これに耐えることが出来ない経営者や管理職がいることだ。
徐々に人が増えるにつれ
「オレがこんなに社員のことを考えているのに、なぜ社員は会社に尽くさないのか」
「なぜ私は部下のために尽くしているのに、尊敬されないのか」
という考えを持つようになる。
私個人として、人である以上は、上のようなことは自然な感情だろうと思う。
しかし、「企業」として健全に経営されるためには、そういった事を社員に期待することは間違っているばかりか、大きなデメリットがある。なぜならば、そういう会社においては、徐々に社長の周りにはYESマンがあつまり、お互いの関係の心地よさに酔うばかりとなるからだ。
「親の心、子知らず」という有名な諺がある。
立場を同じくして、初めてその人のことがわかる。経営者はこの言葉を噛み締めて、社員と接しなければならない。損な役回りなのだ。
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