生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性……..。
・これからは、生産性が低い組織や個人は生き残れません
・人手不足なのだから、労働者一人あたりの生産性を高めるのが急務です
・AIを活用して、生産性を爆上げしよう
・生産性向上のための補助金を交付いたします
あぁ、生産性、生産性、生産性、生産性、生産性…..。
近頃は「生産性」という言葉が毎日のように目に入り、耳に入る。ネットの広告、メールでのセミナー案内、商工会議所から送られてくるチラシに、自治体からの補助金の案内まで。
視界に溢れすぎていて、もう「生産性」がゲシュタルト崩壊を起こしてる。
「ヤメテクレ」と悲鳴を上げながらも、多すぎるタスクをこなすためにAIの種類やプロンプトの出し方を必死に学び、作業の自動化や簡略化を進めて
「よしっ! もっと生産性あげてこ!」
なんて言ってる私。身体中に生産性の棘が刺さる。
私自身が傷だらけになりながら、私もまた生産性という言葉で誰かを追い詰めている。
例えば、こんな風な会話で。
「え? まだExcelに手打ちしたり、手書きで仕事してんの? そんなのAIにやらせれば一瞬やのに」
「えー、そうなんですか?」
「ほれ、見てみ」
「あ、ホンマですね。一瞬でできた。すごーい」
「ね! 簡単やろ?」
「やだ、簡単! びっくり! でも、うちの会社の社長がこれに気づいたら、もう私の仕事がなくなっちゃう…。
作業に勤しんで、忙しいフリして給料をもらってるのに…」
「あなた自身やあなたが担ってる仕事に価値がなくなったんじゃなくて、単にあなたがやってた作業に意味がなくなっただけやん。
作業することや作業にかける時間じゃなくて、業務全体をしっかり把握して、ちゃんと現場を回してる知識と経験と技能に報酬が発生してるんやろ?」
「そうですけど、うちの社長は古いから、作業をさせるために社員を雇ってると思ってますもん。まあ、年寄りですからAIのことなんて何も分からんと思うし、これからも仕事のやり方が変わったりすることないと思いますけど」
「社内ではあなたの仕事がなくならなくても、社会からはなくなるんじゃない?
いつまでも社員に生産性の悪い働き方をさせてたら、生産性を上げていってる競合他社に負けて、そのうち会社そのものがなくなってしまいそうやけど…」
「確かに! 数年後には会社が潰れて、失業してそう! リスキリングせんとヤバイですね」
つい先日も、時代の変化と会社の先行きに危機感を募らせた友人と一緒に、中小企業向けのAI活用セミナーに参加した。
私はすでにビジネス文章の作成やアイデア出しに生成AIを使い倒しているが、初めてChatGPTに触った友人は、
「めっちゃ簡単! これはすごい!」
と、その便利さに感激していた。
けれど、すぐに声のトーンを落とし、
「でも、これってアホやと使えんですね…」
と、思いを巡らせていた。
そうなのだ。今のところ、AIは曖昧な指示からこちらの思いを汲みとってくれない。
だから、自分が何をしているのか、何をしようとしているのか。思考をちゃんと整理した上で、言語化し、背景や前提となる情報も与えてあげないと、AIも何をすれば正解なのかが分からず、頓珍漢な出力ばかりしてしまうことになる。
何の背景も教えられず、何を意図しているのかさっぱり分からない指示を上司から出されたら、右往左往してしまうのは人間だって同じだ。
「業務をちゃんと分かってる人間が、的確な指示を出して、やっとAIは役に立つってことでしょ?」
「そうやね」
「田舎の中小とか零細企業の経営者や社員に、それが出来る人ってあんまり居らんと思いますけど」
残念ながら、同意である。
田舎に限らず、ろくな説明も資料もないまま「やっといて」と業務を丸投げしてくるボスや、「何となく、こんな感じで」と、曖昧な指示を出す上司は、世の中にけっこう多いのではないだろうか。
自分が言葉を尽くして説明するのではなく、「そんなことくらい、言われなくても分かれよ!」と、コストを部下に押し付けて仕事をしてきた人たちは、AIを使いこなせない。
彼らは、仮に生成AIを試しても思うような成果を上げられないため、
「AIは役に立たない。これなら人間の部下にやらせた方が良い」
という結論を出して、もはや無意味となった作業を人間にやらせようとし続けるのだろう。
「AIをちゃんと使える能力のある人とない人とで、これから余計に格差が広がりますね」
「そうやね。AIは能力がある人の生産性を無限に上げる一方で、能力がない人はいつまで経っても今のままだから、差は広がる一方になるよね。
けど、私たち世代は能力によって差がつくけど、若い子たちは、何も教わらなくても自然にAI使ってない?」
「そうそう! うちの息子たちも、生成AIめちゃめちゃ使いこなしてますよー。お勉強はできんのに、AIを使うのだけは上手いんですから。学校の課題や宿題なんか、それでちゃちゃっと片付けて、遊んでばっかりいますもん」
「そうよね。やっぱり若い子って、便利なツールが出てきたら、それを取り入れるのも馴染むのも、すごく早いよね。それを考えると、これからは世代間の格差もますます広がるんやろうね」
「そうですねー。子供らの世代って、私らとはもう別人種ですからね」
「地方の中小とか零細企業で、まだ団塊の世代が社長や会長に居座って、経営を指示してるところって、もう完全に時代遅れよね。
ただでさえDXもできず時代に取り残されてるのに、AIによる業務効率化もできず、従来通りの働き方で仕事を続けるとするやんか。
高齢化した地方の中小企業がもたもたしてる間にも、若い社員の多い都会の会社や外国の企業は、AIありきで仕事を進めるようになって、どんどん生産性が上がっていく。そうすると…」
「あー、もう、いかん! ヤバイ! うちの勤め先は、きっと5年後は潰れてます!」
「どこも同じよ。ここから5年保つかどうかも分からんよね」
「どうしよー」
「会社を頼らず、自分自身がスキルアップして、いざという時に転職市場で価値のある人間になるしかないんじゃない?」
「この年齢で挑戦し続けないといけないなんて、辛っ… 。氷河期世代って、ずっと報われませんよね」
そうなのだ。私たち氷河期世代は、かつて「自己責任」に苦しめられ、ようやく自己責任論がなりをひそめてきたと思ったら、今度は「生産性」に苦しめられている。
自己責任も残酷な言葉だったけれど、生産性も同じくらい、残酷な響きを含んで私たちに迫ってくる。
「生産性を上げていけ。じゃないと、お前の居場所はないんだぞ」と。
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【著者プロフィール】
マダムユキ
ブロガー&ライター。
「Flat 9 〜マダムユキの部屋」管理人。最近noteに引っ越しました。
Twitter:@flat9_yuki
Photo by :Jose Fontano