みんなお金の話ばかりしている
最近、同僚と話していると、すぐにお金の話になる。
あるいは、電車でひどく熱心にスマホをのぞきこんでいる中年男性の画面がちらっと目に入る。
スマホの画面では、YouTuberが、YouTubeを使ったお金の稼ぎ方について説明している。
そして、中吊り広告では「かしこくポイントを貯めましょう」と何かのキャラクターがしゃべっている。
家の中でも、給料が少ない、学費がかかる、電気代が上がっている、食費が高すぎる、そんな話ばかりだ。
最近の大人は、お金の話ばかりしているような気がする。
「最近の」と言ったけれど、それはいつと比べてなのか。
まあ、ぼくの場合は、自分の新入社員だった2000年代前半と比べている。
当時は就職氷河期で、多くの人が仕事に困り、お金に困っていた。
もちろん、みんな日々の売上や収益に追われていた。仕事では数字の話ばかりしていた。
なのに、当時、先輩たちに飲みに連れていってもらったり、同僚と仕事の愚痴を言いあったりしていても、お金の話ばかりしていたような記憶がないのだ。
それよりも、夢について語り合っていた。
クリエイターとして有名になりたいとか、あのタレントと仕事をしてみたいとか。
その延長線で、独立して金持ちになるんだという話はしている人もいたけど、それは夢としての話だ。
いや、もちろんその時から「財テクはちゃんとやっておけよ」と言っている先輩もいたし、実際にそれで大儲けして会社を辞めた人もいた。
いたけど、それもある種の「夢」の話の範疇だった。
今はとにかく、金がない、金が欲しい、どうやったら金が増えるのか、ひたすらそういう話ばかり、大人がしている気がする。
どでかいブーメランだった
なんて言うと、時代錯誤だとか、現実が認識できていないとか言われそうだ。
まあ、実際にそうなのかもしれない。
たぶん、ぼくはさみしいだけなのだ。
若い頃のように、歳を取っても、「夢」や「好きなこと」について語り合っていたい。
実際に、ぼくの周りにはそういうことについて語り合える人たちがそれなりにいると思う。
でも、昔はもっとたくさんいたような気がするのだ。
面白いこと、ワクワクすることを仕掛けている大人たちが。
KPIとか根拠とかロジックとかリスクとか、まあそれはそれとして、それでも一つでも爪痕を残そうとする、大人げない大人たちが。
さて、ここまで書けばもう十分だろう。
そう、これは特大のブーメランだ。
今、現役世代で一番ボリュームが多いはずの、ぼくたちの世代がつまんない大人になってしまっているからだ。
いや、違う。
ぼくが、つまんない大人になっているから。
お金のことばかり心配していて、やりたいことを見失ってしまうから。
それに尽きる。
アホな大人であり続けたい
じゃあ、どうしたらいいのか。
お金のことなど気にせずに、チャレンジばかりすればいいのか。
もちろん、そういうわけにはいかない。
だけど、ここは歯を食いしばって、めっちゃ楽しそうに生きたい。
周りがうらやましがるくらい、楽しい大人でいたい。
そう思う。
これは、戦いである。
金がなくて、歳を取って、能力も低下し続けるばかりで、どうにもならない現状。
それでも、夢を見て、想いを語り、変なことを企て、実際にやらかす。そうやって、アホなことをやり続けようと思う。
やればやるほど、色んな人にボロクソに言われるだろう。言われたからなんだというのだ。
もう他人のことを批評してばかりの生活はごめんだ。
あいつはバカだ、こいつは下手くそだ、そういつは悪手だ、そうやって批評してばかりの大人でい続けるよりも、ぼくは批評されるほうの大人でいたい。
人生は一度きり。
踊れるまで、踊り続けたいと思う。
本当につまらないのはぼく自身
ところで、ぼくは、なんでそんなことを急に言い出したのか。
色々と理由はあると思うけど、結局、踊り続けるためにはお金が必要だと思うからだろう。
お金の話ばかりしている大人のことが気になるのは、自分がお金のことを気にしているからだ。
そして、おもろいことをやるには、お金も必要なのである。
もっと言えば、最近は、ぼくは金策に走り回ってばかりいる。
資金やら協賛金やら寄附金やら、あちこちに出向いて、お金を集めてばかりいる。
お金のことばかり考えていて、企画をする余裕がない。
手段にばかりとらわれていて、本当にやりたいことに十分に力を入れることができていない。本末転倒になっている。
「お金がないと大きい企画ができないから」「お金がないと持続可能にならないから」と言い訳をしている。
そう、お金のことばかり考えている自分を、やりたいことに正面からチャレンジしない理由にしている気がする。
わ、つまんない企画だな、と思われるのが怖い。
お金を集めて、誰か別の人に企画をしてもらって、うまくいかなくてもその人のせいにすればいいとすら考えている可能性もある。
つまりは、勝負することを恐れているのである。
ああ、つまらない大人になってしまったな…と思う。
常に飢えたまま生きる
そこでふと思い出したのだが、若い頃、『海の上のピアニスト』のDVDをレンタルしたつもりで、間違えて『戦場のピアニスト』を借りてしまったことがある。
ナチス・ドイツに占領されたポーランドが舞台で、主人公のピアニストはボロボロになりながら、とにかく逃げ続ける。
あれ、こんな話だったっけと思って、すぐに間違いに気づいたのだが、まあいいやと最後まで観た。
それで、ひどく印象に残っているのが、とにかくピアニストは常に飢えていることである。
基本的に、考えているのは、食べ物のことばかり。
どうやって食べ物を手に入れるかについて、文字通り必死になっている。
ピアノを弾くシーンなんてほとんどない。なんだこの映画は、と思った。
だけど今、自分の状況を省みると、構造はあまり変わらない。
お金を集めるので必死で、やりたいことをする余裕なんてない。
いつも頭の中で、お金、お金と唱えている。
こんなことで、本当に自分らしく生きていると言えるのか。
いや、むしろ、それが「自分らしく生きる」ということなのかもしれない、とふと思う。
ひょっとしたら、このまま、やりたいことを十分にできないまま人生を終えてしまうかもしれない。
お金、お金、と唱えながら、ついに道の途中で力尽きてしまうかもしれない。
それでも、その人生を選んだという一点だけで、ぼくは「自分らしく生きた」と言えるのではないだろうか。
そんな日を迎える時までは、歯を食いしばって、しかし、めっちゃ楽しそうに生きたいなと思うのである。
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(2026/6/18更新)
【著者プロフィール】
著者:いぬじん
プロフィールを書こうとして手が止まった。
元コピーライター、関西在住、サラリーマンをしながら、法人の運営や経営者の顧問をしたり…などと書こうと思ったのだが、そういうことにとらわれずに自由に生きるというのが、今ぼくが一番大事にしたいことなのかもしれない。
だけど「自由人」とか書くと、かなり違うような気もして。
プロフィールって、むずかしい。
ブログ:犬だって言いたいことがあるのだ。
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