元電通のコピーライターの梅田さんから新刊をいただいた。

タイトルは「言葉を武器にする経営」。

この本は「正確な言葉」「響く言葉」「真実を語る言葉」を使うように、繰り返し求めている。

 

これを読みながら、Xで見た話題をふと思いだした。

「言葉」を使うのは、強い自制が必要なのだなあ、と。改めて思ったのだ。

 

その話題とは、「国語ができる人には意味不明だけど、馬鹿には読める文章」というもの。

どういうことだ?

と思って、具体例を見てみた。どうやら下のような文章らしい。

見ると、犬の画像をアップした人物に対して、「また一つ謎を解き明かした」というコメントが付いている。

 

確かに元の投稿を見ても、さっぱり何を言っているのかわからない。文脈を知っていればわかるのだろうか。

おそらく、私の知識不足なのだろう。

 

ただ、これを見て、どこかでこのような言説を見たなと思った。

 

一部界隈における「チャート分析」や「相場」の話題。

例えば下のようなイメージだ。

現状、日足で見ると直近高値圏でのもみ合いが続いていて、25日線をサポートに上値を試す形です。出来高も上昇局面で素直に増えていて、需給自体は悪くない。

ただ、RSIが70近辺まで来ていて、ここで短期的な過熱を警戒できるかどうかなんですよね。この水準で『まだ上がる』と飛びつくか、『そろそろ一回入るな』と引けるかで、正直かなり差が出ます。まあ、大半の人は前者なんですけど。

私には何を言っているのかさっぱりわからない。

 

もちろんこれは「馬鹿には読める」という文章ではない。

が、どこか似た部分があると思った。

というのも、「チャート分析」は、根拠がまったく分からないからだ。

(出典:橘玲 臆病者のための株入門)

最近でも、テクニカルの手法を実際に検証した方が、「効果なし」としている。

それでもテクニカル投資を信じる人は数多く存在する。

 

私だけが知っている

このようなことを言うと、チャート分析の手法を推奨している方からは、「あなたが無知だからだ」という批判があるだろう。

たしかに、そうかも知れない。

もしかしたら本当に成功する法則があるのかもしれない。

 

しかし、勘違いしていただきたくないのは、私はチャート分析そのもの是非についてはどうでもよいと思っている。

信じたい人は信じればよい。

 

そうではなく、私が疑問視しているのは、こうした解説によく、

「賢い私(たち)だけは、これを知って成功しましょう」

「私たちだけがこの価値を理解できる」

などの、読み手の優越感をくすぐる言説が、頻繁に用いられている点だ。

 

そして実は、「国語ができる人には意味不明だけど、馬鹿には読める文章」の正体がここにある。

 

「馬鹿には読める文章」というのは、実は文章の難易度とは関係ない。馬鹿とも関係ない。

では本質は何かというと

「私だけが理解できる」という優越感を喚起し、「自分を「賢い」と思わせてくれる文章」

のことを指す。

 

例えば。

陰謀論の「点と点をつなぐ」投稿。

「9割の人は気づいていない」「知っている人だけが得をする」という広告。

「あなたはレアな性格タイプで、頭が良いのです」という根拠不明の分析。

IQ200の人が解ける問題。

意味深に見えるほのめかし・示唆。

 

こうした言説の目的は、実は「読み手」をおだてることに主眼がある。

「世の中はバカばかりですけど、これを理解できるあなたは賢いですよね?素晴らしい!」と。

 

だから、下のように「馬鹿には読める文章」を中身のない文章、というように定義している投稿もあるが、私はちょっと違う見方をしている。

 

大した根拠もなく、「頭が良い人ですね」とほめてくれる人は詐欺師です

なぜならば、読者諸兄はご存じだと思うが、こうした発言に長けているのは「詐欺師」だからだ。

・現状に不満ですよね?

・あなただけにいい話を教えます

・あなたのような賢い人だけがこれを理解できるのです

というのは、詐欺師の常とう手段だ。

 

「国語ができる人」は、基本的に

「文中にないことを読みとらないように」

「根拠を探しながら」

「先入観を持たず」

「自分は無知である」

という前提で、文章を読む。

いや、こうしないと正確に読めない。

「そんなこと書いてないですよ」と言われないためにも。

 

それに対して、上でいう「馬鹿には読める文章」は全く異なる。

それは

「読み手に都合の良い解釈」

「書いてあること以上のこと」

「自分にとってうれしい真実」

を勝手に想像してよいことになっている。いや、あえて想像させるように仕向けている。

「正確に読め」とは真逆だ。

 

だから、「馬鹿には読める文章」は

ここまで言えば、後はわかるな?

これくらい当然わかってますよね?

と、読者にほのめかす。

 

国語ができる人は、

「いや、わかんねーよ。書いてないことは」

と思うのに対して、

「馬鹿には読める文章」で喜んでしまう人は

「言わなくても、当然わかりますよ。何せ私は賢いですから。」

と(勝手に)思うので、だましやすい。

 

結局のところ、人をおだてて、そして、人を操作しようとして書かれたのが

「馬鹿には読める文章」なのである。

 

コピーライティングの世界にも、間違いなく、そういうものが存在する。

梅田さんの本は、それを強く、警告している。

 

そう感じる本だった。

 

 

 

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(2026/9/1更新)

 

 

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」95万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

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◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書

〇まぐまぐ:実務で使える、生成AI導入の教科書

Photo:Iva Rajović