会社に入りたての時、「社会人なんだから、もう大人として振る舞え」と何度も聞かされた。大人にならなければ、社会で生きていくのは難しい、そういうアドバイスをする人は多い。
一方、「大人になる」ということを拒否する人々もいる。社会にでることをできるだけ先送りし、「モラトリアム」を求める。
学生など社会に出て一人前の人間となる事を猶予されている状態を指す。心理学者エリク・H・エリクソンによって心理学に導入された概念で、本来は、大人になるために必要で、社会的にも認められた猶予期間を指す。
日本では、小此木啓吾の『モラトリアム人間の時代』(1978年(昭和53年))等の影響で、社会的に認められた期間を徒過したにもかかわらず猶予を求める状態を指して否定的意味で用いられることが多い。(Wikipedia)
少し前に、「ゆるい就職」というサービスが報じられていた。慶応大学の助教の方が立ち上げたようである。
プロジェクトを率いる宇佐美啓氏は「若者にとって、人生や職業を模索するためのモラトリアム期間の延長となる。企業側も多様な就労モデルの検討を進めている」と背景を説明する。(日経BP)
このページをみると、キャッチフレーズは、「サクッと稼いで、たっぷり遊ぶ」とのことだ。ターゲットは新卒から25歳位までの若者である。
「大人となり、働くこと」に対して、決意をすることができない若者を吸収しよう、という意図のようだが、「モラトリアム」を必要としている人が増えている事の一つの現れなのかもしれない。
だが一体彼らはなぜ、「大人」となることを拒否するのだろうか。そして、「大人」と「子供」のちがいは一体何にあるのだろうか。
もちろんこの答は一つではない。
リクルートの調べによれば、「おとなになったと思う瞬間」の一位は「お酒が飲めるようになった」である。以下、お金を稼いだ、選挙権が与えられた、と続く。(R25)
1位 お酒が飲めるようになった(67.0%)
2位 自分で働いてお金を稼いだ(57.0%)
3位 選挙権が与えられた(44.7%)
4位 自分で稼いだお金で好きなモノを買った(41.0%)
5位 クルマの運転免許を取った(40.3%)
6位 一人暮らしを始めた(29.0%)
7位 誕生日が喜べなくなった(24.0%)
8位 欲しいモノを“大人買い”した(23.3%)
9位 親孝行を考えるようになった(22.0%)
10位 年下のアイドルがデビューした(19.0%)
しかし、私が出会ってきた「大人」の方々は、この定義であらわされる人々は異なる。
私が見てきた「大人」とは、「可能性を絞り込んでいる人」だ。
子供の頃、我々は「何にでもなれる」と思っていた。
「努力すればなんでも叶う」
「可能性は無限大」
「末は博士か大臣か」
しかし、世の中は広い、上には上がおり、自分の可能性は年を経るにつれ、小さくなる。人生は無限の分岐点があるわけではなく、その都度、いくつかの選択肢の中から選ばなければならない、と知る。
しかし、「大人」はそのことに絶望したりはしない。可能性、というのは絞り込めば絞り込むほどむしろ、現実的になるということ知っている。
だから、「自分が今できることの中で、精一杯やろう」と言えるのが、大人なのだ。
モラトリアムにとどまる人々は、「決めなければならない」「自ら、可能性を絞らなくてはならない」ということに抵抗する人々だ。
「やればできるんだ」
「まだ本気を出していない」
それは、可能性を留保し、現実を放棄する一言である。
いうならば、「大人」と「子供」の境界線は、「あきらめ」を受け入れているかどうかにある。
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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2025/7/14(月) 16:30-18:00
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(2025/6/2更新)