前職、コンサルタントをやっていた時は、とにかく忙しかった。とても人におすすめできるような働き方ではないが、それでもひとつ得たものがある。
それは、「同時並行で仕事をいくつも進める技術」だ。「マルチタスク」と言ってもよい。
仕事を同時並行で行うことは難しい。一つの仕事だけでもこなすのが精一杯の時に、他の仕事も同様のクオリティで進めるのは至難の業だ。
そして、その難しさの本質は、「忘れる」「余計なことが気になる」「重要な仕事がわからなくなる」の3つだ。だから、これらをきちんと解決しないと「同時並行は効率が悪い」ということになる。
もちろんマルチタスクなどない方が良い。だが、現実にはそうも言っていられない。仕事は次々と割り込んでくるし、成果が出ていない仕事にはテコ入れをしなくてはならない。
部下や後輩からの相談は放っておけない上、場合によってはお客さんとの交渉に駆り出されたりする。
そこで、前職の時には自分を守るため幾つかのルールを設定し、それを厳格に守ることで複数の仕事を同時にこなしていた。誰かの参考になることもあるかと思い、ここに記すことにする。
ルール1 記憶を当てにせず、現在のすべての仕事をタスク化する。
とにかく記憶をしない。やらなければいけないことはどんな些細な事でも、例えばポストに手紙を投函するといった些細な事ですら、すべてメモを取る。
メモを見れば自分がやらなくてはならないすべての仕事がそこにある、そういう状態を作り出した。
ルール2 自分ではなく、人に頼んだ仕事も、全て「チェックする」とタスク化する。
人に依頼した仕事が遅れると、自分の仕事にも重大な影響が出る可能性が高い。したがって、「ツッコミ」が必要だが、それも全てタスク化する。
可能な限り定期的に、機械的に進捗を確認する。
これにより、メモを見れば「ああ、今日は◯◯さんに進捗を聞く日だ」ということがわかる。考えなくて良いので、逆に心配せずに任せられる。
ルール3 イベントや遠い将来にやってきそうな仕事、「急ぎじゃないけど」と言われた仕事、記念日、誕生日もプライベート予定もすべてタスク化する。
例えば、「英語力を上げなければ…」であったり、「この本を読まなければ…」といった、今すぐはやらないけれどいつか必ずやらなければいけない仕事もすべて、メモを取ってとりえず日付を入れる。
またプライベートの予定、例えば誰かの誕生日や記念日などもすべてメモしておく。とにかく頭のメモリを節約するため、憶えない。
ルール4 割り込みの仕事も、とりあえずその場でタスク化する。
最も心をかき乱されるのは、「これ、今日中にお願いできないかな」という依頼だ。大体において「今日中」というのは無茶ぶりなのではあるが、無下に断らず相手に配慮することも会社員には必要だ。
ルール5 タスクには必ず優先度をつける。
その日の朝イチのしごとは、タスクの優先度づけだ。
ポイントは当日まで順番を付けないこと。どうせその日までに更に仕事を詰め込まれるのだから、優先度の判断は当日で十分である。
優先度は次のように分類する。個数は私の能力に合わせてあるので、もっと増やしても出来る人はたくさんいるだろう。
Top⇒今日中に必ずやること。はじめに手を付ける仕事。2つまで。
High⇒今日中にやりたいこと。2つまで。
Med⇒今日中にやりたいが、割り込みの緊急仕事が入った場合は先送り可能な仕事。2つまで。
Low⇒時間が余ったらやる仕事。個数の制限なし。
タスク一覧を見れば、仕事の割り込みが可能な日かどうかひと目で分かるようになる。
例えば、「TopやHighが多い日は無理だな」とか、「今日はLowが多いので、割り込みに寛容だな」など。
ルール6 タスクをこなしている最中にメールやメッセンジャーは見ない。
メールを見ると新しいタスクが発生する可能性が高い。したがって、タスクをこなしている最中にメールを見ると著しく集中力を損なう。
メールを見るのは、タスクとタスクの合間に限定すると、効果的にタスクに集中できる。
ルール7 初めての仕事は、それに費やした時間を計測する。
ざっくりで良いので、初めてやる仕事はどの程度時間がかかったかを必ず計測する。仕事にかかる時間見積もりの精度をあげなければ、マルチタスクはいつまでたっても改善しない。
ルール8 タスクのフィールドは最低限、以下の5つとする。
ポイントは仕事の内容だけではなく、アウトプットや期待される成果も書くこと。成果を書くと具体的な仕事のイメージがつかみやすい。
例:
6月22日のタスク一覧
2015/6/25(期日)
Top(優先度)
◯◯さん(依頼主)
T部長とA課長にに意見を伺い、注文を提案書レベルで明確にする(具体的な仕事の内容と出すべき成果)
部長には予めヒアリング内容を知っておいてもらうため資料をメールで送っておく(備考)
ルール9 カレンダーとタスクを連動させる
TopおよびHighの仕事は、できるだけその時間帯への割り込みを防ぐため、カレンダーに作業予定時刻を予め書いておく。
それをすることで、例えば、「ちょっと時間もらえる?」といった誘いに対して、15:00からなら、と言った回答ができる。
ルール10 ペンとメモ(もしくはスマートフォンのメモアプリ)を常に持ち歩く
思いついたときに即時タスク化しないと、やるべきことは片端から忘れていく。そのためにはペンとメモを常に持ち歩くか、スマートフォンのアプリなどを活用する(私はToodledoと、Evernoteをつかっていた)
上司から「アレどうなった?」と言われがち、あるいは「目の前の仕事だけしかできていない」と思う人は、是非試してみていただければと思う。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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・農家の支援を始めました。農業にご興味あればぜひ!⇒【第一回】日本の農業の実態を知るため、高知県の農家の支援を始めます。
(Photo:Nikki Buitendijk)