採用がほんとうに難しいです、という嘆きを経営者や人事の方から聞く。
「いい人を採るために何をしていますか?」
と伺うと「広告を増やしました」「イベントに参加しました」「SNSを活用しました」などと回答がある。単なるアピール不足で人が採れていないケースでは、これらの手段は有効である。
だが、ある経営者の話を聞き、私は大事なことを忘れていたと認識した。
私は、その経営者に世間話をしようと採用の話を何気なくもちかけた。
「いま、多くの会社で人が採れない、という悩みを抱えていますよね」
「そうなんですか?うちは人が採用できない、という悩みを持ったことはないですよ。」
「…本当ですか?」
「本当です。」
「…秘訣を教えて欲しいのですが…」
「真理は一つです。いい人が採れないのは、ダメな会社だからです。逆に言えば、良い会社であれば良い人が採れます。それだけの話です。」
「…もう少し具体的に教えていただけないでしょうか」
「いいですよ、良い会社というのは、こういう会社です。
一つ、給料が高い
二つ、そこに勤めている人の能力が高い
三つ、チャンスがたくさんある
四つ、労働環境が良い
五つ、経営者が信頼できる
これであれば、きちんとアピールするだけでいい人が採れます。」
「それはそうですが…」
「欲しい人って、やる気があって、頭が良くて、実行力があって、努力できて、素直。そんな人ですよね?でも、そんな人は「良い会社」にしか行かないですよ。」
「普通の会社はどうすればいいのでしょう?」
「社長の知り合いから採用するのが一番です。知り合いすら入社しない会社に、誰が来てくれますか?そして、儲けましょう。儲けて人に投資し良い会社になります。並みの会社には人は来ません。」
「…」
「普通の会社は、採用せず、まずは儲けろと、そういうことでしょうか?」
「そうですね。とりあえず人を増やして売上を増やす、ではすぐに行き詰まると思います。肝心なのはいかに人を増やさず利益を伸ばすかです。採用は最終手段ですよ。人が必要なら、社外の有能な人を使えばいいのです。無理やり人を採用するよりも、結果的にコストも低いですから。」
「なるほど…。たしかに最近は社内外の混成プロジェクトが増えた気がします。」
「気のせいではないです。知識が重要な社会では、その都度専門家を集めたほうが良いのです。日本では、ダメな人をクビにできないですから。
クビにできない、ということはダメな事業から撤退するのがむずかしい、ということでもあります。これは致命的なことです。」
人に投資できる会社だけが良い人を採用できる、という当たり前の事実を、私は忘れていたのだ。
(2024/1/22更新)
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