18458118_3b7e96396c_z仕事において能力の成長を求める人は多い。

仕事ができるようになり稼ぎたい、という実利的なこともあるのだが、能力の向上はゲームと同じで、それそのものが楽しいと感じる人も多いだろう。

「今までできなかったことができるようになる」感覚は、たしかに魅力的だ。

しかし「どうしたら成長するか」については、我々はそれほど多くを知っているわけではない。

私は「新人がなかなか成長しない」との顧客からの相談をうけ、なにかヒントになることはないかと「成長はどうしたら起きるか」と某企業で人事をしている知人に相談したことがある。

 

「そうですね…いろいろな意見があると思いますが、うちでは、明確に傾向があります。」

「どういうことでしょう?」

「新人の成長の度合いとはっきりとした相関がある値があるんです。」

「面白いですね…」

「そうでしょう、何だと思いますか?」

「新人研修の成績ですか?」

「残念ながらちがいます。新人研修の成績と、その後の若手の成長とは何の関係もありませんでした。」

「うーむ。所属部門の業績ですか?」

「相関が存在するときもあるのですが、それについてはまだはっきりとした事は言えません。所属部門の業績が悪くても成長する新人はたくさんいます。」

「…全くわかりません。部門長の人柄とか、性格などでしょうか?」

かれは少し笑っていった。

「まあ、本質はそうなのかもしれませんが、部門長の人柄や性格は、数値ではなかなか表せないので、今の回答としては不適切ですね」

「そりゃそうですね。」私は慌てて訂正した。

私は悩んだ。

「もう降参ですか?答えを教えましょうか。」

「すいません、ギブアップです」

そして彼は言った。

「新人の成長の度合いと最も相関があった値は、「最初についた先輩との対話の時間量」ですよ。話の量が多ければ新人の成長率は高く、話の量が少ないほど新人の成長率は低かった。」

私は言った。「そんな単純なことなんですか。」

「我々は、なぜこのような現象が起きるのか、現場をあたってみました。そうすると、ほとんどの「対話量の多い先輩」は「対話量の少ない先輩」がやらないことをやっている。」

「それは何なのですか?」

「そうですね、どちらの先輩も後輩が何かをした時に評価は同じようにするんですね。後輩に対しこれは良い、これはダメ、と言った具合です。」

「普通ですね。」

「そうです、ところが対話量の多い先輩はもう少し先があります。彼らは、ある程度後輩を教えると、こんどは自分自身も後輩から自分の働きぶりについて感想をもらうんですね。」

「どういうことでしょう?」

「つまり、先輩も後輩から学んでいる、ということです。そのため、先輩が後輩と話をした時間が「対話量の多い、良い先輩」と「対話量の少ない、ダメな先輩」では圧倒的に違うんです。倍くらいは違うという結果だったと思います。」

「なるほど…。面白いですね。」

「もちろん先輩は後輩と単にたくさん話せば良い、という話ではありません。良い先輩の本質は彼ら自身が学ぶ姿勢も含め、後輩に教えている、ということです。」

「学ぶ姿勢を教える…。なかなかできることではないですね。」

「そうです。「先輩とよく話した」という新人からその中身を聞くと多くの人から「先輩のやり方に意見をもとめられた」というのです。これが、うちの会社だけの話なのか、それともあらゆる企業に一般的な話なのかはわかりませんが、とにかくウチではわかりやすい結果となりました。」

ここで、ひとつの疑問が浮かんだ。私は彼に聞いた。

「対話量が少ないのは、後輩が嫌なやつで、先輩が教えたくならないから、ということは無かったですか?」

彼は言った。

「数例だけありましたが、ほとんどの新人は素直だったという報告を先輩方からもらっています。」

 

 

キャリアの最初に良い先輩につけるかどうかは、重要な分水嶺だ。新人の配置には、くれぐれ用心しなければならない。

 

 

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(2024/3/26更新)

 

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