人口減少が騒がれている。
が、客観的に見ると「日本人が減って何が悪いのか?」と疑問を持たざるをえない。
例えば、上智大学経済学部教授で歴史人口学者の鬼頭宏氏は以下のように述べている。
日本の人口は何人が最適か。そんな質問をよくされます。10億人でもいいかもしれないし、数千万人でいいかもしれない。私はそう答えています。たとえばこのまま人口が減っていくと、労働力が足りなくなると言われますが、それは人口問題ではなくて、経済問題。
人口を経済の規模にあわせるか、経済を人口の規模に合わせるかで、人口の上限は変わってきます。つまり人口というのは、絶対的に最適という数字はない。日本の歴史を見てみても、大きく見るとそのときどきの食料とエネルギーの生産量が、人口規模を決めてきたと言えますね。
つまり、悪いことは何もない。変化がある、ということだけだ。
厚生労働省は厚生労働白書の中で、「経済の縮小が、一人あたりの国民所得を低下させる恐れがある」としているが、エビデンスはとくに示されていない。
日本の経済全体の規模が縮小することはやむを得ないものであっ て、その中で国民一人当たり所得の維持を目指すべきとの見解もある。
しかし、この場合 であっても、人口減少がその過程において必然的に伴う高齢化の進行によって総人口の減 少を上回る働き手の減少が生じ、その結果、総人口の減少以上に経済規模を縮小させ、一 人当たりの国民所得を低下させるおそれがあると指摘されている。
(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/dl/1-00.pdf)
また、「労働人口の減少」というが、健康年齢から言うと、現在の日本人男性は約70歳までは「健康」であり、女性も73歳までは「健康」なのだから、単純に高齢者であっても働けば良い話ではないだろうか。
元MIT教授のレスター・C・サローは、その著書*1において、この状況に対し「金を持っている老人は働け、税金を払え。社会保障など必要ない」と述べる。
どんな社会でも、どうやりくりしようと、数が増える一方の人たちが遊んで暮らす期間を延ばしていくような状況は耐えられない。(中略)例えば65歳という一定年齢での引退はもう保証できない。
また、どのような福祉制度であれ、所得が平均以上の人たちを手厚く保護しなければならない理由はない。こうしたことを続けていれば、貧しい人たちが豊かな人たちを助けるために税金を払うという社会的な不条理が生まれる。
*1
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以前にも書いたが、現在の年金制度はすでに破綻している。
年金制度は大きく分けると2種類ある。
第一は、「世代間で所得を移転する制度」だ。これはドイツのビスマルクが作った制度である。
第二は「自分が積み立てたものを自分が受け取る制度」である。これは、シンガポールのリー・クアンユーが作ったものだ。
サローは、これに対し「後世の人はリー・クアンユーは正しく、ビスマルクは間違っていたと書くだろう」と述べる。
そして日本の制度はドイツのビスマルクが作ったものと同一である。
だが、ドイツのビスマルクが引退の年齢を65歳と定めた1891年には、ドイツ人の平均寿命45歳にも達していなかった。今日の平均寿命でいえば、年金の支給開始を95歳に設定したことになる。
つまり、現在の日本の年金も支給開始が95歳であれば制度として機能するだろう。
現在の60歳、70歳は一昔前の60歳、70歳よりも遥かに健康で、頭も働く。
・企業は定年を撤廃し、年齢差別をしてはならない。
・65歳で引退したいなら若いときから積立て、貯金する。
・もちろん健康を害して働けなくなった一部の人には国が社会保障をきちんと出す。
本当はこんなにシンプルな話だ。
「日本の人口が減って困る」という人は、「俺が65歳になったときにも働き続けなくちゃいけないじゃないか。困る」と言っているのだ。
いやいや、元気なら皆で一緒に働きましょうよ。で、働けなくなった人を支えましょう。
お願いです。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
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