こんにちは。ソリマチ株式会社「会計王」の開発責任者、横山と申します。
思い起こすと、ソリマチに入社したのは1997年、当時私は大学院の博士課程にて、農業工学の分野で線形計画法による収量のシミュレーションを行っていました。
「圃場からの収量が最大になる資源の投下量はどの程度か?」
「どの圃場を活かし、どの圃場を休ませるか?」
そういった研究をしていたのです。
ソリマチとは、その研究室で出会いました。たまたま在籍していた研究室との共同研究を行っていたのです。
そのままなんとなく…ソリマチに入社して、現在まで開発一筋、という具合で現在19年目を迎えています。
さて、個人的な話はさておき、今日は弊社で日常的に行っている「ソフトウェアの機能追加」について書いてみたいと思います。
「会計王」というソフトは、Windows95という伝説のOSと同年、1995年の発売以来バージョンアップを重ね、現在はバージョン17まで発売されています。
また、11月にはバージョン18も発売される予定になっており、20年近く機能追加と利便性の向上を追求し続けているソフトです。
……といえば聞こえはいいのですが、バージョン18まで来ると、かなりの多機能、高機能なソフトウェアとなっており、初期のシンプルな会計ソフトとは圧倒的に異なる開発管理のレベルが求められ、非常に難易度の高い機能追加の判断が求められます。
例えば利用中のお客様からの要望だけでも毎年、数百に登る数の意見が集まります。
その中で、「どのような要望を実装し、どのような要望は選択しないのか」は非常に重要です。なにしろ人員数も時間も有限です。一つ一つ対応していたのではとても間に合いません。
これは余談で、ソフトウェア開発に限る話ではないとは思いますが「お客様の声をどこまで吸い上げるか?」を決めるのは非常に難しいものです。
おそらく巷のwebサービスなどでも、全く同じ現象が起きているのではないでしょうか。
お客様の要望は常に、我々で有しているリソースを上回ります。様々な判断基準があるとは思いますが、うまく判断できている組織は少ないはずです。
さて、では「やる、やらない」の判断を弊社ではどのように行っているのか。
まずは大量に寄せられ、以下のようにDBに格納された要望を「お客様にあわせて、要望を分類すること」から始まります。
様々な属性が要望に付与されていますが、本質的には会計王への要望は大別すれば、2種類しかありません。
1つは、一般のお客様からのもの。
そしてもう1つはプロフェッショナルユーザー、すなわち会計事務所のお客様からのものです。
この「お客様による要望の分類」は極めて重要です。なぜならば、「利用しているシーン」によって、対応しなければならない要望が全く変わってくるからです。
例えば会計王の一つの機能に、「銀行やカード会社から、入出金履歴を直接取り込む」というアカウントアグリゲーションがあります。
で、このアカウントアグリゲーション機能ですが、一般のお客様からの要望と、会計事務所のお客様からの声は全く異なります。
例えば一般のお客様は、「できるだけ仕訳を見たくない」といいます。ですから、明細をダウンロードしたら、そのまま勝手に帳簿に取り込まれることを望まれます。
でも、会計事務所のお客様は、ちがいます。彼らは会計のプロですから、「本当に意図通りの仕訳が行われているか」が一番のポイントになります。
これだけでも全く対応の方法がちがいます。したがって、追加されるべき機能を判定する時、もっとも重要なのは
「だれのための機能なのか?」
です。
一般的に技術サイドはマーケティングに疎いことも多いです。
しかしながら「どの要望を機能として追加するか」は、本質的にはマーケティングに属する活動であり、この視点を無くして技術的な検討をすることはできません。
優れた技術者は、優れたマーケティングアナリストでもあるのです。
次に我々は一つ一つの要望を実装……は、まだこの段階では致しません。まだやるべきことが残されています。
それは、「なぜお客様はこの要望を出したのだろう?」と推測することです。下のように皆でディスカッションするのですが、実は、この「推測すること」が機能追加の判断の鍵となります。
なぜならば、要望の源流まで遡って推測することで例えば
「100個あった要望が、実はたった5個の機能で実現できる」と言ったことが可能になるからです。
要望のそもそもの出自を分析することで、要望を集約し、かつ些末な機能ではなく本質的な機能追加により、少なく、シンプルな機能で解決できることも多いのです。
例えば、「こういう帳票が欲しい」といった要望は数多くあります。
でも、その声に一つ一つ応えて帳票を増やしていけば、帳票の数は収集がつかないくらい大きくなってしまうでしょう。
その場合、「なぜ、お客様はこの帳票がほしいと思ったのか」に焦点を当てれば、「既存の帳票に1列加えればOK」ということがわかったり、チュートリアルを工夫するだけで解決できたりします。
これら「だれのための機能か?」と「何故この要望が上がってきたのか?」を分析することで、我々は効率的に機能追加について判断をしています。
お客様の声は宝です。
しかしながら、それをどう扱うか、こそプロダクトマネジャーの腕の見せ所、最も手腕が発揮される領域ではないでしょうか。
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