少し前訪問した、あるテクノロジー系企業が、少し変わった会社だった。社長、役員、フリーランス、そしてパートタイム労働者だけで事業を構成しているのだ。

つまり、「正社員」は一人もいない。

 

聞くと、「こういう会社は結構多い」とのこと。

どのように事業を運営しているか。具体的には次のようなものである。

 

1.経営戦略、企画、新規事業、研究開発、営業は社長と役員が成果主義で行う。

報酬は青天井。成果に応じて支払われる。役員は労基法の適用外とされており、労働時間に対しての対価はない。

社長の給与も会社全体の成果に連動しており、オーナーだからといって、お手盛りは許されていない。

 

2.実作業はフリーランスが行う。

こちらは契約によって成果が定義され、時間はどれだけかかろうがもちろん支払いは一定である。

だが、成果が定義されているので、一定の要件を満たすと割増の報酬があり、かなりの額を稼ぐことができる。安定して成果の出せる人は、役員よりも稼いでいる。

逆に、品質や納期など一定の要件を満たせないフリーランスは、契約を更新できない。できるフリーランスは安定してかなりの額を稼げるので、この会社の仕事をモチベーション高くやっている人も多い。

また、自分たちの仕事の質に関わる部分は経営陣に積極的に提案している。形態はフリーランスだが、事実上正社員のような役割を担っている。

ただし、会社員ではないのでフリーランスなのでその会社以外で稼いでいる人も数多くいるのと、全く拘束されないという点が異なる。

 

3.だれでもできる雑用。事務処理や手続き関係などは、パートタイム労働者が担う。

こちらは作業定義とマニュアル化が極めて高度に進んでおり、労働者単位で生産性が測定されている。フリーランスと同様、一定の生産性が出せない労働者は契約が更新されない。

逆にフリーランス同様、一定以上の生産性が出せる労働者にはボーナスが支給される。できる主婦などがかなり稼いでいるようだ。

 

 

この会社のポイントは、「作業定義」と「成果の定義」にある。

会社の頭脳たる経営者と役員は、ある事業を行うとき、「純粋な頭脳労働」と、「頭脳労働と単純労働のミックス」と「単純労働」の3種になすべきことを定義し、設計する。

 

・マニュアル化できるものは単純労働として設計

・半分程度までしかマニュアル化できないものは頭脳労働と単純労働のミックスとして設計

・マニュアル化できないものは頭脳労働として設計

 

また、役割が固定化されているかといえば、そうでもない。フリーランスの中には役員に昇格したものもいるし、その逆もある。そして、概ね皆モチベーション高く働いている。「管理されず、自由裁量の中で動いている」ということが、ストレスの軽減に役だっているようである。

また、職務設計が極めてよくできているため、「管理職」が不要なのだ。そのため、人は最小限に抑えられている。

 

 

実際、この会社の経営は非常にうまくいっている。利益率は非常に高く、フリーランスとパートタイム労働者の平均給与も高い。

また、ある事業を捨てることに全くためらいがない。利害関係者が成果でつながっているので、成果が出ない事業にしがみつく人間がいないのだ。

したがって、「利益の出る」事業のみが残り、報酬を高く設定できる。また、新卒は採用しない。

 

経営者の一言。

「皆、普通よりもよっぽど良い報酬をもらって、自由に働いています。なにせ、有能な人は貴重な資源です。安く買い叩くなど、とんでもありません。安くしたら、我社からすぐに離れていってしまいますよ。」

 

正社員がいなくとも、会社は問題なく経営できるのだ、と強く感じる会社だった。

 

 

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(2024/1/22更新)

 

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