あらゆる組織において、すべての管理職が共通してやるべきことは5つしかない。
逆に言えば、この5つをしっかりやることが前提となる。
4月から管理職になる方からご質問をいただいたので、ここで改めて紹介しておこうと思う。逆に部下にとっては「上司がしっかり仕事しているか?」のチェックリストにも良いだろう。
1.部下の目標設定を手伝う
部下の目標の設定を手伝う。注意すべきは2点。
1点目はあくまで「手伝い」という点である。目標はあくまで自発的なものでなければ、責任感の醸成と、真の意味での目標へのコミットは不可能である。上司は方向性や会社が考える成果のイメージは伝えつつ、目標を決定することはあくまで部下にやってもらわねばならない。
2点目は目標の達成までの期間である。中長期の目標と、短期の目標両方を設定する。会社の経営とは本質的に中長期の成果と短期の成果を両方バランスを取って追いかけることであるから、どちらかだけの設定では不足である。
2.意思決定と、責任の分担
意思決定は思い込みを防ぎ、より多くの選択肢から最適なものを選ぶため、多様な意見を聞いた上で行う。また、意思決定は実行に係る責任の分担があって初めて意味を持つ。
決定されたことについては、必ず責任と期限を決め、分担を行うこと。そうでなければ、「いつかやりたい」と言っているだけにすぎない。
3.動機付けとコミュニケーション
部下への動機付けは、コミュニケーションを通じて行う。と言っても、通常言われているような褒める叱る、と言うレベルのコミュニケーションは本質ではない。
本質的なコミュニケーションとは、上司は部下がどのように自分と違うことを考えているかを知り、部下が自分に何を欲しているかを聞き、そして、共に成果のために何ができるかを話すことである。
部下が成果を出すこと、これをコミュニケーションの目的とするべきである。人間関係を良くすることを目的にしてはいけない。
4.人材開発
組織は人材がいなければ何も出来ない。 故に、人材開発はもっとも重要な仕事の一つである。
人材開発においてやるべきことは3点ある。
1点目は採用。管理職は採用に積極的に関わらなくてはいけない。面接に参加するだけでは不十分である。むしろ事業に必要な人財の定義が重要であり、それができるのは、管理職である。
2点目は育成。人材育成の対象は、能力、スキル、ノウハウ伝承の3種類ある。
・能力向上は仕事への姿勢や、根本的な思考様式などが対象となり、長期的な育成計画によって育てる。
・スキルは論理的思考や営業力など、応用範囲の広い技能が対象となる。これは中期的な計画として実務で鍛える。
・そしてノウハウ伝承は仕事の手順や品質向上、ミスの低減など、プロセス改善やマニュアルの作成などにより、短期的な施策で伝承する。
3点目は配置。人材の配置はその人物の得意なこと、よくできること、好きなことを中心に据える。しかし、配置が失敗であった時は潔くそれを認め、元の配置に戻さなくてはいけない。
5.評価とフィードバック
目標、意思決定、コミュニケーション、そして人材開発はすべて、有効だったか、成果が上がったか評価測定が成されなければならない。 評価測定がなければ、自己満足があるだけである。
フィードバックが常になされる組織は常に学習する組織である。同じ間違いを繰り返さず、構成員の士気は高く保たれる。
だが、フィードバックがなされず、学習しない組織は生産性の概念も改善の概念もなく、場当たり的な施策を精神論で繰り返すだけとなる。
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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参考資料:ピーター・ドラッカー著 「マネジメント」
(Photo:James)