今年の6月に、2018年卒向けの採用活動が解禁された。
真夏の就職活動なんて考えるだけでもゾっとするが、マイナビによると7月末で内定率は8割弱とのことだから、大半の学生はすでに内定を手にしているようだ。
わたしはつい3年半前までは大学生だったのだが、就活の際、いまだに書類を手書きすることが推奨されているのには驚いた。
ほぼすべての企業でパソコンが普及し、学生もレポートをパソコンで書いている世の中なのにも関わらず、だ。
就職講座では、「丁寧に書くべし」「修正液はNG」「まずは下書きしましょう」というありがたいアドバイスをもらった。
もう一度書いておくが、これは1990年代のコンピューター黎明期の話ではなく、2010年代の話である。
この「手書きは心象が良い」という根性論のおかげで、ずいぶん無駄な手間を取らされた。いい加減なんとかならないものか。
いまだにエントリーシートが手書きなんて信じられない
2012年夏。大学3年生だったわたしは、インターンシップに申し込むため数社のエントリーシートのフォーマットとにらめっこしていて、さらにうんざりしていた。
すべての企業が、フォーマットを印刷→手書きで記入→郵送というレトロな手法を前提にしていたため、とにかく時間と労力がかかるのだ。
何通も履歴書を書いていると、途中で頭がぼーっとしてきて、もはや無我の境地に達する。ただの苦痛な作業でしかなかった。
仕事上のやり取りも大半はパソコンを通じてなのだから、文字をわざわざ見る必要性もないだろう。
社内コミュニケーションツールが手紙であればわからなくはないが……。
わたしはその後1年間ドイツに留学したので日本で本格的に就活をしたわけではないが、友人たちが就活のエントリーシートをひたすら手書きするという苦行を成し遂げたのだと思うと、尊敬の念を禁じえない。
IT企業ではPCで入力したものでもOKなところが多いようだが、わたしの実感としては、3・4年前はまだまだ手書きが主流だった。
就活の時期になると、大学の講義中にエントリーシートを書いている学生も少なくなかった。
まずパソコンで内容を全部書き出して、それを丸写ししている人もいた。
そうでもしなければ、この「作業」は終わらないのである。
企業が定めるエントリーシートはフォーマットがバラバラだから文字数や文字間を調節しなくてはいけないし、まちがえたらイチからやり直し。
これほどまでに無駄で非効率な作業は、なかなかないと思う。もはや資源の無駄遣いだ。
そう愚痴りたくなるくらい、「手書き」のエントリーシートは学生にとって負担で、面倒で、時代遅れなのだ。
文字を見ただけで真剣度を推し量ることは可能?
就活講座などでは、「字は人をあらわすから丁寧に書きましょう」だとか、「手書きの方が真剣度が伝わり心証が良くなる」と教わった。
ちゃんちゃらおかしい。
科学的に筆跡を分析して人柄を解析するのならまだわかる。
だが、文字から人柄や真剣度を「推し量る」なんていうのは、精神論に属する。
よく「字が下手でも丁寧に書いた字はわかる」「字がきれいでも雑な字はバレる」などと言われるが、本当にそうだろうか?
「丁寧に書いても汚い字は読みづらいし、雑に書いてもきれいな字は読みやすい」という方が、正直言って事実なのではないだろうか?
また、「真剣度が伝わる」論を振りかざすのなら、企業も「絶対ほしい」と思った学生に大しては、手書きの通知を送るくらいの真剣度を見せなければおかしいだろう。
なぜ、学生だけが誠意を見せなければならないのだ。
とにかくわたしは、「エントリーシートを手書きする」文化はまったく理解できないでいる。
「パソコンを使うとコピー&ペーストで楽をする学生が現れる!」という懸念をしている人もいるが、作業を効率化してなにが悪いのだろうか。
明らかに手抜きをしているのであれば落とせばいいし、手書きかパソコンかのちがいはあるにせよ、手抜きする人間は文章をネットから手書きで丸写しして手抜きをするから、あまり変わらない。
正直、人事がパソコンを使えないからいまだに手書きを推奨している、もしくは、これまでの伝統を変える労力が手間だから「慣例」という名の放置を行っているような気がしてならない。
インターネットネイティブ世代に合わせた就活を
就活は学生・企業にとって一大イベントで、かなりの時間と労力を費やすことになる。
それに際し、精神論で無駄な手間を増やすのはいかがなものだろうか。
就活の時期、学生はとにかく忙しいのだ。1文字まちがえただけですべて書き直しという手書きエントリーシートなんて、正直やっていられない。
企業は学生に印字した使いまわしの通知を送るのだから、学生だってパソコンを使って効率化したっていいじゃないか。
それを許さないのなら、企業だって手書きで丁寧な心のこもった採用通知を送らなくては理不尽である。
インターネットネイティブ世代が就活する社会になったのだから、それにあわせて就活のあり方だって変わっていって当然だ。
むしろいまの時代、いまだに手書きを前提としている時代錯誤な企業は、学生から「切られる」可能性だってある。
無意味な精神論で効率化を良しとせず、なんの疑問も持たずに学生に「手書き」を押し付け続けるのは、そろそろ終わりにしようではないか。
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。

<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
- 0. オープニング(5分)
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」 - 1. 事業再生の現場から(20分)
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例 - 2. 地方創生と事業再生(10分)
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む - 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説 - 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論 - 5. 経営企画の三原則(5分)
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する - 6. まとめ(5分)
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)
【プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
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