ぶち大変でした。

 

しんざきが住んでいるマンションでは、住人持ち回りで管理組合の役員が回ってきます。

実は先日まで、しんざきは管理組合の理事長でした。

それ自体は順番なのでしょうがないんですが、運が悪いことにたまたま大規模修繕実施の年であり、しんざきは色々な調整やら手配やらをすることになりました。

 

マンションの大規模修繕というのは、十年くらいに一度、壁の塗り直しやら傷んだ建物の修繕やらをやる作業です。

数百万から数千万くらいの結構な費用がかかる話で、日ごろ住民が納めている管理費用の中から、大規模修繕費用というものを積み立てています。

大きなお金が動く話ですので、色々な人が色々な希望を持ちますし、業者との折衝もしなくてはいけないですし、家庭によって熱意は違いますし、納得いかない人には納得いかない点も出てきますし、出来が満足かどうかは人によって変わります。

 

最終的に、大規模修繕はなんとか期日通りに終わったのですが、ここは上手くいったなあと思った点もあれば、まずかったなあと反省する点もありました。

ただその中で、連絡やらタスク共有やらをスムーズに動かそうと頑張っていたら、なんかいつの間にか業者さんの業務改善までやってるような感じになってちょっと自分でも面白かったので、経緯を書いておきたくなりました。

 

詳細はところどころボカしますが、すいません結構な長文です。お暇な時にどうぞ。

 

1.大規模修繕黙示録・業者選定編

今回の大規模修繕は、業者さんを選定するところから始まりました。

大きなマンションだともう決まった業者があるところが多い(らしい)のですが、うちは小規模な上に比較的新しいタウンマンションでして、そもそも大規模修繕自体今回が初めてでした。

 

管理組合は合議制になっていまして、理事長の決定で何もかも決めるというわけにはいかず、ちゃんと多数決で合意をとって、その証跡を残しておかなくてはいけません。

で、大規模修繕についても、管理会社さん経由で何社かの業者さんにプレゼンをしてもらって、その中から話し合いで決めました。

 

プレゼンがあった中で、他の数社よりも若干安いということで、大手さんではなく小さめの業者さんが選ばれました。

若干といっても、元の金額がでかいので絶対的には結構な金額です。差額でいい車が買えちゃうレベルです。

 

ここでは仮に、この業者さんのことをA社さんと呼びます。

管理会社さんの話では、A社さんは小回りも効くし職人さんの腕もいいけれど、普段は下請けが専らで、顧客と直接やり取りしつつ案件全体の取り回しをするという経験はあまりない筈だ、ということでした。

不安もないではなかったんですが、まあゆーても壁の塗り直しとか、中庭のタイルの敷き直しとかするだけやろ?という感じで、若干の油断があったことは否めません。

 

何はともあれ、日程やら計画やらを出してもらうことになりました。

 

2.大規模修繕黙示録・進捗不安編

しんざきはIT関係の仕事をしておりまして、デスマーチの経験も何回かあります。

 

「そういう者にだけ働く勘がある」「その勘が言っている」というヤツなんですが、嫌な予感というか、焦げ臭い匂いには割と早い内に感づく方だと自負しています。

 今回それは、業者さんの最初の計画設定を見た時に感じました。Wordで作ったと思われるA4の用紙が数枚の、簡単な資料でした。

 

・そもそも「お願いして終わり」というわけではなく、管理組合側で細かく決めて、A社さんと調整しなくてはいけない項目が実はたくさんあった

・それに伴って、「この件が決まらないと次のこの工程が始められない筈だよな」みたいな関連もたくさんあった

・だが、計画時点では、工程と調整事項の関連がすごくざっくりしか提示されておらず、案件と案件の関連がよく分からなかった

・管理組合側とのコミュニケーション計画が丸々抜けている。聞いてみると「細かく伺いにまいりますので。急ぎならメールとか電話とか」という感じだった

・リスク管理の視点が抜けている。「こういうことが起こるとこういう影響が考えられます」「なのでこういう風に対処します」みたいなやつ。

・進捗状況共有の手段が決められていない

 

ざっと言うとこれくらいの点には最初の時点で気づきました。いわゆる死亡フラグです。

いや、そもそも私含め、管理組合側の案件に対する認識が甘かったことがそもそも問題なんですが、そこは皆初めての経験だったということで勘弁してください。

壁の塗り直しとかタイルの敷きなおしくらいだったら、色決めてタイルの柄決めて終わりやん?くらいにしか認識していませんでした。

多分、大手業者さんにお願いすれば本当にそんな感じなんだろうと思うんですが。

 

が、そこにあった調整事項のヤバさは、「お願いして終わり」どころの騒ぎではありませんでした。

 

一例として、「壁の塗り直しをしている間は駐車場から車の出し入れが出来なくなる」

「だから××日までに駐車場の手配をしておかなくてはいけない」

「誰がどこにどう車を退避させるか、みたいなヤツは〇〇日までに決めないと間に合わない」

「これが遅れると全工程に響く」

みたいな重要な顧客側のタスクが、極めてぼやーっとしか提示されていないのです。

工期自体はかなり余裕をもって設定されているとはいえ、そんなもん調整に手間取っていれば一瞬でブッ飛ぶことは経験上分かります。ヤバさマックスコーヒーです。

 

一個一個の工程や工数の妥当性は、当然我々にはよくわかりませんので業者さんを信頼するしかないのですが、そもそもこの作業って俺たちの方でこれ決めてないと出来ない筈だよな、そこの調整とか必要な情報の展開とかどうすればいいの?みたいなところは最初の段階で決めておかなくてはいけません。それが全く見えません。

 

「案件全体の取り回しをするという経験はあまりない筈だ」という、管理会社さんの言葉が頭をよぎりました。あ、これ炎上するヤツだ。

 

この時点で、これは顧客側とはいえそこそこ介入しないと、金だけかかってダダ遅れで終わり的なことになりかねんな、と認識しました。

 

3.大規模修繕黙示録・環境準備編

まず何よりも、「これは管理組合側の意思決定のスピードを上げないとどーにもならん」と思いました。

すべてはタスク管理とコミュニケーションの問題に収束します。

いちいち日程調整して住民集めて多数決とって、なんて方法ではとても話はまとまらない、ということだけは確実でした。

 

私の勝機は、住人の人数の少なさ(戸数は二桁にギリギリ届く程度の数です)と、ITリテラシーの高さにありました。

皆さん、別にIT関係の仕事をしているわけではないんですが、どの家庭もお若く、IT技術を取り入れることに抵抗がないのです。

管理会社に「合意の証跡さえ残っていれば後からでも追認出来るから、管理組合の合意は電子的な方法でも問題ない」ということだけ確認をとって、私は管理組合とA社さんがコミュニケーション出来る環境の準備を始めました。

 

要は、

・意思決定が短いスパンで行えて、かつその証跡が残るチャットツール

・タスクが複数名に可視化出来るタスク管理ツール

・それを利用することでコミュニケーションのスピード感を早める、という合意

・合意の上で、全体で忘れていることがないかちょくちょくメンションを入れる取り回し役

があれば取り回しは出来るだろうと。

 

宗教的な事情でLINEが使えないので、チャットツールは皆大好きslackにすることにしまして、タスク管理ツールはプライベートでも使っているTodoistにしました。

slackと連携すると、基本的な操作は全部slack側で出来てしまうことが強みです。

slackのコマンド一つでタスクが追加出来るのマジ便利。

参照:SlackからTodoistにタスクが追加できるようになったので早速試してみた

 

住民側皆さんに状況と課題、あとメリットを説明して、slackを各々導入してもらうところまでは割と簡単に行きましたが、問題はA社さん側でした。

どうせslackを入れるなら、関係者は全て情報の流れを一見出来るのが理想ですし、タスクの進捗状況も皆で見てもらわないと意味がありません。

更に、業者から見て、決定の内容が妥当かどうか、話のピントが外れていないか、といった点をチェックしてもらうことも必要です。

 

A社さんは小規模な会社で、社員も昔ながらの職人気質の方が多いらしく、どうもExcelWord(あと多分CAD)以外のIT技術に殆ど馴染みがなかったようです。

仕方ないので、先方の責任者の助手的な若い方にターゲットを絞って、「これこんなに便利ですよ!」と洗脳、いや説得していくことにしました。

住民側の取りまとめは私がやるとして、A社さん側のslack上の取りまとめを、若くてオープン技術に抵抗がなさそうな助手さんにやってもらおうと思ったのです。

 

4.大規模修繕黙示録・業者導入編

導入してもらう時は、この辺に気を付けました。

 

・簡単な手順書と使い方のガイドライン(こういう時はタスク追加してくださいね、みたいな)を作る

・こちらが顧客とはいえ押しつけがましくならないように、こっちが便利なので使ってもらえるとありがたいんですがーという感じで勧める

・連絡窓口はslackに統一して、別経路での連絡口を作らないことで、使わざるを得ない状況にさり気なく追い込む(重要)

・実際に資料の提供やら調整やらをslackでやって、便利さを体感してもらう

・タスクにはすべて前提タスクを入れてもらって、タスク同士の関連が分かるようにしてもらう

・リスクを最初に洗い出してもらって、リスクの共有もslackで行ってもらう

 

で、マンションにきてもらった時、私が自分でslackをセットアップして、実際に使ってもらいました。

最初の調整はその場で行って、実際にslackに投稿しつつ、事前に打ち合わせしていた他住民の人からもメンションしてもらいました。滑り出し重要。

 

最初の内こそ、「余計な仕事増えた」感もあり、ノートPCに入れてはみたんだけど放置しがち、みたいなことになりかけたんですが、狙いは徐々に図に当たり、「あ、お客さん達と直接調整出来るの結構便利だわ」となってもらえたようで、助手的な方は業者住民共通チャンネルでどんどん発言してもらえるようになりましたし、最終的には責任者の人も直接参加してくれるようになりました。

 

こうなればこっちのもので、調整はslackですべて解決できるようになりましたし、後から参照するのも容易、連絡漏れというのも基本発生しません。

勿論これ以外にも、住人間の利害調整やら出来上がりイメージの相違やら、色々面倒な問題は山ほどあったんですが、当初危惧していた「調整関連ダダ遅れ」ということはなんとか防ぐことが出来まして、工期内に一通りの作業は終わってもらうことが出来ました。

曲りなりにもプロジェクト成功です。

 

後から聞いてみると、「あれすごい便利で、今社内でも普通に使ってるんですよー」と話してくれていて、どうも社内でチャンネル作って意思共有している他、A社さん側からお客に勧めて使えそうなら導入して、みたいなことも普通にやっているみたいです。Excelで作った工程表を紙で配ってた頃から大進化。

 

いやー良かった良かった。業務改善したならマージン寄越せ、と一瞬思いましたが、まあ相当安くやってもらったのでケチなことは言わないでおきます。

ただあの手順書そのまま使いまわしてないですよねA社さん?

 

5.大規模修繕黙示録・まとめ

最大の成功要因は、 

連絡窓口はslackに統一して、別経路での連絡口を作らないことで、使わざるを得ない状況にさり気なく追い込む

 これだったと思います。

 

メールみたいな普段使ってる窓口があると、ついついそっち使ってしまって結局slackは放置、私が全部のハブをやる羽目に、みたいなことになりかねないので。チャンネル絞るの重要です。

今回はマンションの戸数が少なかったので出来たことだっていうのも事実ですが、小回りが利く環境なら大体応用出来る話のような気もします。

クラウドの強力さを改めて実感。次はAWSRedmine導入に挑戦だ!(妄言)

 

ということで、大規模修繕みたいな住民調整の時にもslack便利ですね、というだけのお話でした。長くてすいません。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Froschmann