様々な会社で、「目標必達」という言葉が使われている。従業員に発破をかけるために用いられていると思うが、ひとつの疑問が常にあった。
常に「目標達成している」人物を、信用していいのだろうか?
という疑問だ。
確かに経営者からすれば毎度のように目標を達成してくれる人物はありがたい存在である。給料を上げたり、ボーナスを気前よく振る舞ったりもしたくなるだろう。
が、
一方でこのような話もある。
常に目標を達成できる、ということは、「目標が低く設定されていたからだ」ということではないか?
ピーター・ドラッカーは著作「マネジメント」の中でこのように述べている。
”成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。
それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。
そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。
優れているほど新しいことを試みる。 ”
もちろん、目標達成は、本人の努力の証であることは疑う余地はない。しかし、毎回のように目標達成をしている人間がいたら、上の話を疑ってみるべきだ。
「失敗できない」という状況ほど、人間を保守的たらしめることはない。
クレイトン・クリステンセンが指摘するように、大企業の中からイノベーションが起きにくい理由は、まさに「失敗を避ける」からであり、サラリーマンが受ける人事評価にとって失敗が致命的であるからなのだ。
すなわち、無難に目標達成をしていたほうが評価が良いから、イノベーションが起きにくい、と言い換えることもできる。
「成果は打率であり、長期のものである」というドラッカーの言葉を、経営者はもう一度よく考えて見る必要がある。
そうすれば、一年単位で目標必達を強制することが如何に意味のないことかがよく分かるだろう。
(2024/4/21更新)
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