N112_sorededou500私が会社員だった時代、もっともお世話になった方は人を育てるのがうまかった。

彼は事実上の会社のトップであったが、彼に師事した当時の私の先輩や同僚、部下たちを見ているとそれを強く思う。

彼に師事した人々は起業家となったり、他会社の役員・幹部となったりと、かなりの割合で皆活躍している。私自身も「起業」など思いもよらなかったが、その方のお陰で小さいながらも会社を起こし、事業を創り出すことができるようになった。

 

なぜ上司はこのように人を育成することができたのだろうか。

様々な意見があると思うが、一つの大きな要因は、「彼の、部下から質問された時の対応」にあるのではないかと個人的には思っている。

具体的には、上司に質問をした時はほとんど、下のようなやりとりになった。

 

私 「すいません、◯◯さん、今お時間を頂いてよろしいですか?」

「いいよ。」

私 「今日訪問した会社ですが、社長、部長全てにインタビューを行い、現在の状況についてコメントを貰いました。」

「うん。」

私 「ただ、インタビューの内容を見ると、社長と部長の間で意見が食い違っています。この場合、どちらの言うことを信じれば良いのでしょうか?」

「なるほど、面白いねー。」

私 「どちらの言うことにも一理あるのですが…私では見当がつかなくて。」

「ちょっと見せてみ」

私 「はい。」

(3分後)

「で、安達さんはどう思ったの?」

私 「うーん、ちょっと見当もつかないですが…どっちの言うことも正しいように見えます。でも、部長はあいまいなことしか言っていないので…」

「結論からどうぞ」

私 「すいません、社長のいうことを信じたほうが良いと思います」

「ほう、なんで?」

私 「部長のほうが自信がなそうで、曖昧な物言いでしたから。」

「なるほど、ちょっと待ってな」(図を書き出す)

私 「何を書いてるんですか?」

「ちょっと整理しよう。少し待って。」

私 「はい。」

(2分後)

「これを見て欲しいんだけど、図にするとこうでしょ。社長はこう言っている。部長はこう言っている。これ見て、なにか気づかない?

私 「???」

「安達さんなら、5分以内にわかると思うよ。」

私 「…ちょっと待って下さい。」

「いいよ。いくらでも考えて。」

私 「…気づくこと……部長の言っていることがこの前と矛盾している、っていうことですか?」

「うん、それもあるけど矛盾なんてよくある話だよね。もっと重要な事だよ。」

私 「…」

「安達さん、多分答え知ってるよ。これ。」

私 「………うーん……」

「部長は、なんでこう言っていると思う?目の前に誰がいた?」

私 「……あ…もしかして、部下の前で本当のことが言えなかったと…?」

「だから?」

私 「そうだったら…◯◯社の事例と一緒ですね!なるほど!そうか、社長の言うことを信じていれば大丈夫ですね!」

「そうそう、当たり。」

私 「ありがとうございます!わかりました!」

「でも、注意点として、××だけは気をつけてな。」

私 「え?なんでですか?」

「なんでだと思う?」

(以下同文)

 

 

この話を人にすると、「コーチングでしょ?」と言われることがあるが、なんというか、「コーチング」ではないような気がする。

上司は我々とのやりとりを、クイズ番組のように楽しみ、複雑な課題を交通整理することで我々の理解を導いてくれた。それはとても忍耐のいる仕事であり、答えをさっさと教えればその10分の1の時間で自分の仕事に戻ることもできたのに、上司はそうしなかった。

 

ジョージ・ワシントン大学の人材開発学教授である、マイケル・J・マーカートは、こう述べる。

「上司が部下に『君の案を聞かせてくれないか』と言うとき、その上司は『君の案はすばらしい、たぶん自分の案よりいいだろう』と暗に伝えていることになる。その部下は自信を得て、もっと有能になる」

プレジデント・オンライン

多分、成長のために上司があたえてくれたのは「知識」ではない。彼とのやりとりを通じて得られた、「自分で問題を解決した」という「自信」なのだ。

そう思っている。

 

【Books&Appsからのお知らせ】

今年最後のティネクト主催ウェビナーです。

ウェビナーバナー

お申し込みはこちら(ティネクト公式サイト)


<2025年11月13日(木)実施予定>

その外注費、クソコンテンツに消えてませんか?

AIで“成果につながる記事”を、低コスト・高品質に実現する方法 —

【セミナー内容】

第1部:外注費の重さと、企業が抱える「記事制作の現実」
登壇者:倉増 京平(ティネクト 営業・マーケティング責任者)
・プロダクション・代理店が直面するコスト構造とリスク
・外注依存が招く“品質と費用”のジレンマ

第2部:いいライターが見つからない理由
登壇者:桃野 泰徳(ティネクト 編集責任者/取締役CFO)
・「書ける人」は全体の0.2%。採用・外注の限界とは
・品質管理を難しくしている構造的課題

第3部:AIで書ける時代へ
登壇者:安達 裕哉(ティネクト 代表取締役)
・生成AIで“成果につながる記事”を内製化する方法と成功事例
・AI×編集で再現性を高めるワークフロー構築


日時:
2025年11月13日(木)15:00〜16:00

参加費:無料(事前登録制)
配信形式:Zoomウェビナー


お申込み・詳細はこちらのティネクト公式ページよりご確認ください。

(2025/10/27更新)

 

筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)