人は年齢を重ねればひとりでに一人前になるわけではない。様々な経験を経て、一人前と呼ばれるような状態に成長していくのである。
したがって、年齢は高くても大人になれていない人間は存在するし、逆に成年に達していなくてもすでに精神的には大人であるケースも存在する。
では、一人前とはどのような状態を指すか。
解釈は様々あろうが、概ね責任感や他人への思いやりなど、大人としての考え方や行動様式を身につけた状態、すなわち、「精神的な強さ」を身につけた状態を指していると言えるだろう。
家庭においても、組織においても、精神的に強いひとを育てるのは大切なミッションのひとつである。
シカゴ大学のケービン・ラサンドは、人が精神的な強さをどのように獲得するか、子供から大人への移行期間である思春期の学生を対象に研究を行った。
それによれば、親から特徴的な体験を経た学生は、その体験を経ていない学生に比べ、明らかに精神的に成熟しているという結果が出たという。
要は「より成熟した人をつくる」ための訓練方法が存在するということだ。
次の5つの体験がそれに当たる。
1.明快で、わかりやすい期待を与えられた
常に親の顔色を伺ったり、心を探らなくてはいけない状態は大きなストレスを人に与える。
それに対し明瞭な目標と、行動に対する評価が与えられた人は「何を期待されているか」を十分に理解することができ、精神的な安定を獲得する。
2.結果ではなく、プロセスへ関心を持ってもらった
良い大学に入ったか、良い職業についたかということよりも、どのような経験をしたか、どのようなことを考えたかといったことに関心を持ってもらうことが、人の自信につながる。
3.選択に自由が与えられた
規則を破ることも含めて、行動の選択に相当の自由度があると感じれば、人は、結果に責任を負う覚悟が持てる。
4.何かに精一杯打ち込める場が与えられた
人の目を気にせず、好きなことに対して精一杯打ち込める環境を提供された時、人は環境を与えてくれた人を信頼することができるようになる。
5.段階的な挑戦が与えられた
より困難で複雑な挑戦の機会を、段階的に少しずつ課していくことは、人の心を挑戦に向けさせ、強くする。
この実験はティーンエイジの子どもたちに対する検証であったが、組織において未熟な人間を訓練する方法となんら変わりはないと言える。
そう考えれば、「良い上司」とは、上の5つのような環境を提供する上司なのだろう。
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