会社においても、ウェブ上においても、「正義の怒りに満ちた人」というのが一定数存在する。

例えば、

常に正論で人を責める人
弱者やこころの弱い人を、「だらしない」と許さない人
webで他者を裁く人

そう言った人々を、私は「正義の怒りに満ちた人」と呼ぶ。

 

怒りに満ちた人は、普通の人よりも正義感が強く、義理堅い。いわゆる「まっとうな人物」であることも多い。

だが、その反面自分と異なる考え方の人を許さない。「まあ、それもいいじゃないか」「私には判断できない」といわない。彼らにとって正義は一つであり、妥協は許されない。

 

ある大企業の課長は、自分と反対の意見をもつ若手を徹底して教育(と本人は言っていた)していた。

ある中小企業の社長は、反対意見にあからさまに嫌な顔をした。場合によっては、皆の前で大声で「お前は許せん」と糾弾した。

ある外資系企業の人事は、採用面接の時に少しでも学生が気に障る意見を言うと、相手を責めるような質問を投げかけた。

 

世の中には様々な人がいるが、彼らは「自分の側にある正義」を信じている。そして、もちろんそれは常に正しい。だから、彼らは正義の側にない人々、だらしない人々を説得することが彼らの使命、仕事であると信じている。

「私は正しいことを言っているのだから、間違っている彼らを批判するのがあたりまえだ。教育するのが当たり前だ。怒られて当然だ。」

 

 

人類の歴史には常にそのような人々が存在した。

 

例えば11世紀から12世紀にかけてのキリスト教徒は、イスラム教徒に対して正義の名のもとに侵略を繰り返した。
21世紀にようやく教皇ヨハネ・パウロ二世はこれを過ちと認めたが、長らく侵略行為は「正義に基づく英雄的な行為」とみなされていた。
「悪の手からエルサレムを取り戻すのは聖戦である」と、侵略は正当化された。

 

そう言った人々に対し、フリードリヒ・ニーチェは「正義を唱える人物を信用するな」と言った。

自分は正義だと言いすぎる人間を、絶対に信用するな!じっさい、連中の魂に欠けているのは、蜂蜜だけではない。連中が自分から「善良で正しい人間」だと名乗るとき、忘れてはならない。

連中がパリサイ人となるために欠けているものは、ただひとつ──権力だ!

と言った。「正義」や「道徳」、「常識」は取り扱いに極めて注意を要する。

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実際、「正義の怒りに満ちた人」とつきあうのはとても大変だ。

では、職場の人間や知人、あるいは親がそうであった場合、どう対処すればよいのだろうか。

 

おそらく、たった一言、「そうですね」と、言うだけでよい。対立することは、彼らの信念をますます強めるだけだ。そして、彼らはそれ故に議論を望む。

 

正義の本質は信仰である。信仰の相容れない人と付き合うすべは、ただ深入りしないことのみ。対立せず、議論せず、ただそこにいる人、として礼儀を持って接することが適切なようだ。

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


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(2025/6/2更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58

 (Photo:ポコポコさん