「みんな、自己アピールを勘違いしているよね」と、某外資系企業でHR部門の長を務める彼は言った。
彼は続ける。
「自己アピールを、「自分の能力をアピールすること」と勘違いしている。端的にいうと、「私、すごいでしょ」っていうのが、自己アピールだと思っている。」
「それは正しそうだけど…」
「違う。」
彼はいつも全く遠慮がない。
「それは、自己アピールじゃなくて、ただの自慢だ。自慢と、自己アピールは全く異なる。」
「ちがいを教えてもらえないかな。」
「そうだな、広告は好きかい?」
「好きとか、嫌いとかあまり感じないけど。まあ邪魔なときはある。」
「宣伝を鬱陶しいと感じたり、コマーシャルをあまり信じられない、という人は多いよね。ヘタな自己アピールも同じ。自分の宣伝広告のようなことをしていると考えていい。」
私は頷いた。
「じゃ、上手な自己アピールはどうすればいい?」
「長年人事をやってきて思ったのは、上手な人の自己アピールは、「おれ、役に立つよ」だね。あなたのこの悩みに対して、役に立つよ、会社のこの課題に対して、役に立つよ、そういう訴えが、自己アピール。」
「面白いな」
「面接で、自己アピールして下さい、と応募者にお願いすると、自慢ばかりする輩が結構いる。こんな経験をしました、こんな成果を挙げました。別に悪いことじゃないんだけど、外していると思うよ。多分採用側はうんざりしてる。」
「そうかもね」
私も確かに思い当たるフシがある。
「そして、一方でうまい自己アピールをする応募者がいる。あなたの会社に、私の経験がこう役に立つ、とか私が成し遂げたこの業績は、あなたの会社でも貢献につながる、とかね。上手な自己アピールは、この人に依頼したくなる。」
彼の話を聞きながら、自己アピールのやり方なんて、学校でもどこでも教えてくれなかったからな、と思う。
「もちろん自己アピールが全てじゃない。自己アピールだけがうまくて、中身の無い人物もいるが、少なくとも相手が自分の発言でどう思うかを想像できない人物が、仕事ができるとは思えないな。」
(2024/3/26更新)
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