6376352121_0b33b76b92_z一昔前、管理職研修などで「人は期待されるとやる気が出るので、上司は部下に期待しましょう」という話を聞いた。

なるほど、と思った。期待されれば、人は頑張るようになるとその時は私も思った。

 

だが、人間はそんなに単純ではなかったようだ。

 

その話を知人の経営者にしたところ、かれは「そんなにうまくいくかなあ」と懐疑的であった。

私はその理由を聞いた。

「人って、期待されると2通りの反応があると思うよ」

と彼は言った。

 

 

「自分は、以前はいつも部下に期待をしていた。一生懸命やってくれるんじゃないか、成果をあげるまできっちり仕事をしてくれるんじゃないかとね。」

私は頷いた。

「でも、現場の反応ははっきりと「期待されて嬉しい」という人たちと「そんなに期待しないで下さい、重いです」という人たちに分かれた。」

 

確かに言われてみれば、私も時と場合により、期待が重いと感じるときもあった。私は彼に

「確かに、過剰な期待はむしろ怖い。」と言った。

 

「そうだろう、特に、2、3人の部下は、期待されても絶対に「頑張ります」と言わないんだ。せいぜい良くて「まあ、やってみます」程度だったよ。私は反応が薄いので「お前はやる気が無いのか」と怒ってしまった時もあった」

「ふーん。」

「彼らは、自分たちへの期待を一生懸命下げようとするんだ。「あまり期待しないで下さい」とか「当てにしないで下さい」とかね。」

ありそうな話だ、と私は思った。

 

「で、彼らは期待通りにやってくれた?」

「いや、人による、としか言いようがない。やる人はきちんとやるし、やらない人はやらない。」

「まあ、そうだろう」

彼は、笑みを浮かべて言った。

「でも、「頑張ります」と言った連中も、同じだった。結局期待しようが、そうでなかろうが、やる人はやる、やらない人はやらない。」

「そんなもんかね」

「結局わたしは、部下に「期待していた」というきれいな言葉を使っていたけれど、内心は不安でしょうがなかった。だから、部下から「頑張ります」という一言が欲しかっただけなんだよ。それがわかって、もう部下に期待するのは、やめた。」

「ずいぶん冷たいように聞こえるが」

「期待、っていうのはこっちの気持ちだろう。それを中心にしちゃダメだ。そうではなくて、任せる、というほうが幾分マシだ。任せる、というのは相手が中心だからね。」

「あまり違わないようにも思うけど」

「そうかな、期待してる、って言うよりも、任せる、と言ったほうが、皆の反応は格段に良かった。まあ、言葉遊びなのかもしれないが。」

 

 

確かに、過剰な期待が部下にプレッシャーを与えすぎてしまう、という話もちらほら聞く。しかし振り返ると、単にそれは自分の不安の裏返しである、といえるのかもしれない。

「期待している」という気持ちは、そういった不安を内包している。それを見透かした部下が「重いですよ」と言うのかもしれない。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
ご視聴登録は こちらのリンク からお願いします。

(2025/7/14更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)

・農家の支援を始めました。農業にご興味あればぜひ!⇒【第一回】日本の農業の実態を知るため、高知県の農家の支援を始めます。

 

 

 

(Photo:Karen Blakeman