1本の木を植えるとそのまわりの気温がどれだけ下がるのか?誰が知りたいのかそんな疑問。いや、それをどうしても知りたいヤツがここにいる。
石丸智貴(Tomoki Ishimaru)くんです。
彼は現在、東京工業大学総合理工研究科2年修士コースに通っている大学院生です。彼の正式な研究テーマは「樹木の夜間冷気生成による都市熱環境緩和効果の分析」
彼がこの研究をしようと思ったきっかけは、ヒートアイランド現象。
現在、都市化は不可逆的にすすむことは確実で、その際に必ず郊外よりも都市の中心部の気温が高くなる現象が起こります。
そのヒートアイランド現象を和らげる効果のあるものとして、「都市緑化」という手法があり、近年の環境問題の高まりもあり、その手法に興味を持ったのが彼です。
例えば、行政が「都市緑化」をやりたいと思っても、その効果がを数値化できないと予算を付けられない。そういう時に、園芸師のように勘と経験で行うのではなく、研究者の持つ実証データが意味を持ちます。
彼が詳しく絵と式を使って説明してくれました。
都市に木を植えると涼しくなる理由は主に3つあって
1.日射遮断
2.潜熱拡散
3.比較的小さい超波長放射・顕熱拡散
わかりやすく噛み砕くとこういうことです。
1.木が太陽からの光を遮る。
2.その木が水分を蒸散させることで打ち水効果のようなことが起こる。
3.木(特に葉の部分)はコンクリートのように熱をため込まないため、周辺の気温を上昇させにくい。
特に2とは3は、植物が持つ固有の現象です。そのことが都市緑化が気温の低下をもたらす大きな要因となっています。
森の中に入ると冷んやりするのはこのためなんですね。日陰の効果だけではないんですね。
石丸君は、潜熱拡散と顕熱拡散についての実証データをとりながら、じゃあ木一本辺り具体的にどれくらい気温を下げる効果があるのか、もっと言えば木がどの程度都市を涼しくするか、ということを調べています。
公園全体のデータを調べた人は過去にいますが(新宿御苑や皇居)、公園に植えられているような6〜7mくらいの大きな木一本のデータを調べた研究はなく、おそらく彼の研究室が世界ではじめてなのではないかとのことです。
ただし、研究は大変です。
何が大変かと言えば、木には様々な形があり、葉の形状も異なり、近傍の建物の有無でも条件が異なる、要するに条件が多様すぎるのです。
じゃあ、なんでそんな面倒な研究選んだんだ?
彼は、
「だって、知りたくないすか?誰もやってないですし」。
と言いました。
こうやってひとりひとりの好奇心が人間の知を推し進めています。目には見えない無形の進化の足跡、人類知。
石丸君の研究に興味を持った方は ishimaru.t.aa(at)m.titech.ac.jp へお問い合わせください。
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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