「仕事ができる人になりたい」と思ったとき、何をなすべきか。
スキルをつける、という人もいれば、資格をとる、という人もいるかもしれない。タスク管理ツールをつかったり、スケジューリングに工夫をしたり、そういったテクニックに手を付ける人もいるかもしれない。
だが、もっとも重要なのはおそらく「習慣や考え方」だろう。
スキルや資格、ツールの使い方などは陳腐化しやすいが、習慣や考え方はそれほど簡単には陳腐化しない。そういったことはすべてのスキルやテクニックの礎だからだ。
企業で言えば、経営戦略や理念に当たる部分、それが「習慣や考え方」であるといえる。
企業の商品、社内のシステム、オペレーションマニュアルなどはすぐに陳腐化するが、良い戦略や理念はそれほど簡単に陳腐化することはない。
では、「仕事ができる人」はどのような習慣や考え方に則って行動しているのだろう。船井総研の創業者であり、中小企業向けコンサルティングの大家である船井幸雄氏は、仕事ができる人の考え方を、「素直」「勉強好き」「プラス思考」と言ったという。
だが、私の出会った方々は、上の3つだけではなかったように感じる。それは、次のようなものに集約される。
1.インスタントなノウハウに飛びつかない
これは仕事だけではなく、「ダイエット」など、継続的な努力を要求されるもの全般に言える。
例えば昔、「リンゴダイエット」というものがあった。りんごを食べ続けて痩せる、というものだが、チャレンジした人の多くはリバウンドしているだろう。
理由は簡単で、ダイエットとは本質的には運動して、食べる量を減らし、そして生活習慣そのものを変えることだからだ。「習慣を変えることなく、体型を変えることはできない」と、まともなトレーナーならば必ず言うはずである。
インスタントなノウハウに手を出し、挫折を繰り返す人は、仕事においても人間の根本が変えられないため、結局「できる人」にはなれない。
2.人に興味を持つ
「人に興味が無い」という人は、仕事ができるようにならない。なぜならば、人に興味が無い人はチームで働くことができないからだ。チームで働けなければその人の仕事は自己完結した、狭い小さい範囲にとどまる。
もちろん、人と関わらなくても、割り当てられた作業をこなすことはできるかもしれない。一つ一つの細かい依頼事項はこなせるかもしれない。
だが、現代のように知識を使った分業が全盛の時代には、大きな仕事を為すことはできない。人の行動や思考、欲望やそういったものを読み切るために、人に興味を持つ必要がある。
3.誠実な人間でいる
紀元前から同じことが言われていると思うが、人に信用されるとは、そういうことである。人のことを尊重する、騙さない、謙虚でいる、そういったごく単純なことである。
単純に言えば、「自分がしてもらいたいことを、人にせよ」という黄金律のことだ。
仕事は短期的なものではなく、30年、40年続く営みである。そして30年、40年という単位で見たとき、誠実であることが、究極に重要なのである。
4.本を数多く読む
多くの方が知るように、仕事は経験を積むほど有利になる事が多い。だが、人の使える時間や地理的な条件の制約により、一人の人が体験できる仕事の量は限られている。
では、どのように経験に差がつくのか、といえば読書である。仕事の出来る人はほぼ例外なく、大変な読書家であった。
極端な例かもしれないが、読書の量が民族の興亡を分けた例もある。
米国の進化生物学者であるジャレド・ダイアモンドは、著書「銃・病原菌・鉄」の中で、スペインのフランシスコ・ピサロがインカ帝国のアタワルパを征服できた原因の一つを、次のように述べる。
要するに、読み書きのできたスペイン側は、人間の行動や歴史について膨大な知識を継承していた。それとは対照的に、読み書きの出来なかったアタワルパ側は、スペイン人自体に関する知識を持ち合わせていなかったし、海外からの侵略者についての経験も持ち合わせていなかった。
それまでの人類の歴史で、どこかの民族がどこかの土地で同じような脅威にさらされたことについて聞いたこともなければ読んだこともなかった。この経験の差が、ピサロに罠を仕掛けさせ、アタワルパをそこへはまり込ませたのである。
本を読む人は、他者の経験を通じ、歴史全体を味方につけることができるのである。
5.発信する
よく言われる話であるが、仕事において、「知識があって、誠実である」は最低条件であり、そうあるだけでは仕事はできるようにならない。
では何が足りないのか。それは「発信すること」である。あなたがどんな偉業をなしたとしても、それに対価を払ったり、それを広めてくれる人が周りに居なければ、仕事は行われていないも同然である。
周りに実績を知ってもらう努力をすること。そしてそのために「情報発信」の中心となることを、「仕事ができる人」は常に心がけている。
6.実行する
仕事は、礼儀やスポーツと同じく、ノウハウを読むだけでは上達しない。理解していても、成果は出ない。そういう性質のものである。
重要なのは理解したら、実践することである。実践のみがあなたにデータをもたらし、ノウハウをもたらし、成果をもたらす。
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第1章では、「今日からできること」。
「決意すること」について。
第2章では、「1週間程度でできること」。
「わかりやすく話をするための方法」や「初対面の人との接し方」などについて。
第3章では、「1か月間以上しっかり取り組むべきこと」。
「組織のなかで信頼を得る方法」や「良いコミュニケーションの方法」について。
第4章では、「1年程度かけてじっくり取り組むこと」。
「努力を成果に結びつけるための知識」や「成果を出す能力の訓練方法」について。
第5章では、「実行に3年くらいかかる大きなテーマ」。
「リーダーシップの発揮」と「部下や同僚、あるいは上司のマネジメント」について。
第6章では、「一生かけてやる価値のあること」。
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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)